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2020.04.16

大手IT企業を辞めて農業ビジネスを立ち上げ。20代で独立した女性社長が考える転職・起業の極意

大手IT企業を辞めて農業ビジネスを立ち上げ。20代で独立した女性社長が考える転職・起業の極意

転職や起業にはある程度のキャリアが求められるのでは......?と慎重になりがちですが、むしろ20代のうちから身軽に行動することで得られることもあるのだそう。大手IT企業を退職して農業で起業した秋元里奈さんに、「20代の転職」の極意についてお聞きしました。

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大手IT企業を辞めて、農業で起業するまで

大手IT企業を辞めて、農業で起業するまで

株式会社ビビッドガーデン代表の秋元里奈さんは現在29歳。大学時代は金融工学を学び、新卒採用で大手IT企業に入社。紆余曲折を経て農業で起業するまでの道のりは、どのようなものだったのでしょう。

「私の実家は農家だったのですが、10代の頃からずっと『公務員か銀行員のような安定した職に就け』と母から言われていたんですね。どちらかで選ぶなら金融系の方がまだ興味が持てるかなという理由と、得意科目が理数系だったことから、理系でかつ金融系という金融工学部を進路に選択しました」(秋元里奈さん)

就職活動中は金融機関を第一志望にしていた秋元さん。ところが、友人に誘われて参加した大手IT企業の説明会に参加したことがきっかけでカルチャーショックを受けてしまったそうです。

「まず女性創業者の方のお話が刺激的でした。新入社員にもガンガンに仕事を振っていく挑戦的な社風であること、成功率が50%でも挑戦してOK、なぜならチャレンジしないと人は成功しないから……など。社員の方々もすごく活き活きしていて、この会社で働きたいなと思ったんです。その頃は起業なんてまったく考えていなかったし、自分が何をやりたいのかまだわからなかったんですね。でもいつか『やりたいこと』が見つけられたときに、それを自力でできるようになっていたかったのと、それまでになるべく成長できる環境に身を置けたら、という思いから、そのIT企業に就職を決めました。母には反対されましたけど(笑)」(秋元里奈さん)

入社後はwebサービスのディレクションから、営業、宣伝、新規事業の立ち上げまで、さまざまな経験を積んだ秋元さん。「もうずっとこの会社にいようかな」と考えていた矢先、久しぶりに帰った実家でショックを受ける光景に遭遇します。

「実家の農業が廃業して、農地が荒れ果てた状態になっていたんです。そのとき初めて『農業ってやばいんだ』という危機感と悲しさを覚えました。と同時に、『私、農業になら一生を賭けてもいいかもしれない』という思いが湧いてきて、それまで私は自分の内側からやりたいことが湧いてこないことがコンプレックスだったんです。でも幼い頃から大好きだった畑が荒れ果てている風景を見て、初めて本当にやりたいと思えることに出会えました。そこから『農業で稼げる仕組みをつくるにはどうすればいいだろう?』と色々考えていくうちに、起業が一番いい選択だと感じたので、入社3年で会社を辞めました」(秋元里奈さん)

25歳で起業するも農家に相手にされず……

25歳で起業するも農家に相手にされず……

(撮影:白石智宏)

新卒入社した大手IT企業を3年で辞め、農業ビジネスに本腰を入れて挑戦することを決めた秋元さん。とはいえ、その時点では具体的なビジョンはまだ見えていなかったそうです。

「空き農地のマッチングみたいな事業をふわっと考えていたんですけど、調べてみたらいろんなハードルが高くて実現できないと判断しました。でもそこから、そもそもなんで空き農地ができているのか?なぜ生産者さんの所得が上がらないのか?と日本の農業が抱えるさまざまな問題点と、それに対するアプローチが見えてきました。さらに、前職の知識や経験が一番活かせるものを、と模索し生まれたのが今のサービス 『食べチョク』なんです。農業は初心者だけど、ネットでモノを売るサービスなら知見を活かせるはずだと思いました」(秋元里奈さん)

「食べチョク」は、農家の生産者がこだわって育てたオーガニック野菜や果物に自ら価格を決めて出品ができ、利用者は全国700軒以上の農家から選択できる直売サイトです。そんなコンセプトのもと、秋元さんが前職のEC事業部で培った経験を活かして、2017年に誕生しました。とはいえ、スタート当初は苦労の連続だったそう。

「最初はどの農家さんもまったく話を聞いてくれなくて……。資料を持参して、北から南までたくさんの農家を訪ねてまわりました。マルシェやイベントに出店している生産者さんと名刺交換をしてつながりをつくったり、とにかく足を動かしました。農家を10軒当たってようやく1軒取れる感じでした。でもそれ以上に大変だったのは、仲間集めでしたね。『この人となら』とお願いした知人には片っ端から断られました。副業で手伝ってくれる人はいましたが、サービスをリリースした後も本業として一緒にやってくれる人は誰もいなかったんです」(秋元里奈さん)

苦労があったけれども、色々な施策をして少しずつ人数を増やし、現在は社員数十名までに増加。そして、大企業の正社員という安定したポジションを捨てたからこそ、これからの時代に必要とされるスキルも見えてきたと秋元さんは言います。

転職・起業を考えている人に必要なスキルとは?

転職・起業を考えている人に必要なスキルとは?

夢を追って新たな業界に飛び込んだ秋元さんでしたが、いざ自分で会社を立ち上げてみると、それまでとはまったく違う知識や経験が求められる場面の連続だったそうです。では、今、転職や起業を考えている人が磨いておくべきスキルとは何でしょう?秋元さんの考えをお聞きしました。

「自分で課題をつくっていく力、課題設定能力だと思います。前職が『崖から突き落とす』みたいな社風だったので、会社員だったときに死にもの狂いで身につけましたね。自分で天井を決めず、高い目標を自分で設定して、それを乗り越えていくこと。成長していく上では欠かせないことだと思います。スキルというより、マインドの問題かもしれません」(秋元里奈さん)

会社に与えられてから考えるのではなく、自ら進んで考える力。課題にコミットしていく姿勢。会社の代表として人事採用を行う際にも、その点を重視しているそうです。

「私たちの場合ベンチャー企業ですから、採用を行う際は年齢に関係なく、自分で課題設定できる力がある人が望ましいです。もちろん経理関係のように起業には必須で、持っているとベターというジャンルの知識もあります。ただ、そういうスキルは必要であれば後からでも学べる。それよりは、若いうちに『小さな成功体験』を積み重ねて自信をつけた人の方が、やっぱり後で伸びる気はします」(秋元里奈さん)

『小さな成功体験』が積み重なれば自信になり、自信がつくとより高い目標を設定できるようになる。秋元さんはそう考えます。では、具体的にどうすれば『小さな成功体験』を得られるのでしょうか。

「まずは身近な目標を設定すること。興味のある分野を決めて、資格を取るための勉強を始めることも成功体験を得る一つの選択肢だと思います。たとえば、今後の自分のキャリアに経理の知識が役立ちそうだなと思ったら、その資格を取るために突き詰めて勉強してみるとか。その結果、見事に合格できたら、そのプロセスが必ず自信につながります」(秋元里奈さん)

次のステップを見据え、目標を設定して、そこに向かって学び続ける。資格取得というアクションは、小さな成功体験を手にするための絶好の機会ともいえるかもしれません。

キャリアプランを迷っている20代の皆さんへ

最後に、転職や起業、仕事上の意識を変えていくことを考えている20代の方々へ、秋元さんからメッセージをいただきました。

「自分が何をやりたいのか見つからない、という人が多いと思うんです。私自身もそうでした。でもだからといって、今の会社や環境で閉じてしまわないでほしいです。社外のコミュニティにどんどん参加する、異業種の人と話す機会を増やす、ちょっとでも興味が引かれるものがあれば挑戦してみる、フットワーク軽く動く……。20代のうちから身軽に動いて人生の幅を広げていくと、やりたいこともきっと見つけやすくなるはずです」(秋元里奈さん)

「20代の起業はまったく早すぎなかった」と振り返る秋元さん。興味が湧いたら行動に結びつけ、新しい世界の扉を開く。それは起業や転職に限らず、趣味や遊びにも共通する『人生を充実させるコツ』かもしれません。

プロフィール
秋元里奈さん
秋元里奈さん
株式会社ビビッドガーデン代表。1991年生まれ。慶應義塾大学理工学部を卒業した後、株式会社ディー・エヌ・エーへ入社。webサービスのディレクター、営業チームリーダー、新規事業の立ち上げを経験した後、スマートフォンアプリの宣伝プロデューサーに就任。退職後、2016年、ビビッドガーデン創業。オーガニック農家が集うオンライン・マルシェ『食べチョク』を運営する。
 

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