パーソナルカラーとは、その人が生まれつき持っている髪、肌、瞳の色と調和する色のこと。人それぞれ個性があるように、「似合う色」にもそれぞれ違いがあるものです。パーソナルカラーは大きく「イエローアンダートーン」と「ブルーアンダートーン」の2つに分けられ、さらにイエローアンダートーンは「スプリング」と「オータム」、ブルーアンダートーンは「サマー」と「ウインター」に、全部で4つのタイプに分けられます。
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メイクやファッションに活用されているイメージが強いですが、普段の生活やビジネスシーンでも、パーソナルカラーを意識する人が増えてきています。そこで、個人や企業のカラーコンサルティングを行うパーソナルカラリストの鷹柳越子さんに、パーソナルカラーを知ることのメリットについてお聞きしました。
「似合う色を身につけると、自分がどう素敵に映るのか、自分自身の魅力がどこにあるのかが分かってきます。カッコよくシャープなイメージ、やわらかく上品で優しい雰囲気など、人によって『素敵』の種類は違うものです。『外から見た自分の魅力』を知ることができると自信を持てるようになり、積極性も出てきます。美しく健康的で自分らしく見せてくれるパーソナルカラーを知っていれば、いつでも明るい気持ちになりますし、そんな生き生きとしたあなたに会う人もハッピーな気持ちになれる。そこが一番のメリットですね」(鷹柳越子さん)
パーソナルカラーの効果には企業も注目していて、最近では複数の化粧品会社がパーソナルカラーの診断サービスを導入し、その人のパーソナルカラーのコスメをレコメンドするサービスを提供しています。鷹柳さんの会社にも多くの企業から、研修の依頼があるそうです。また私たちの生活の中にも、色が効果を発揮しているシーンが多数ある、と鷹柳さんは言います。
「色は身のまわりのすべてのものについています。きっとあなたのお部屋もカーテンやソファ、植物、インテリア小物などに、あらゆる色が溢れているでしょう。色は常に私たちに働きかけていて、心を動かす力を持っています」(鷹柳越子さん)
「例えば、暖色と寒色では受ける印象がまったく違いますよね。寒色はクールな雰囲気、暖色は温かみがあり、体感温度も2~3度変わると言われるくらい『感じ方』が違うもの。インテリアの世界では、カーテンやソファカバーなどの色を季節によって変えることを提案していますが、それは理にかなったことなのです。そのほか気分をすっきりさせたい時には鎮静効果のある青系の色を入れてみたり、冷静にお仕事をしたい時はニュートラル系や寒色系の小物をデスクまわりに置いてみたりと、色によって気分を変えることができます。そんな色が持つそれぞれの効果も踏まえて、パーソナルカラーを普段の生活にも取り入れてみてほしいですね」(鷹柳越子さん)
ビジネスシーンで、パーソナルカラーを上手に活用するポイントはどんなところにあるのでしょうか?
「まず、ビジネスでの色の活用ポイントは3つ。1つは色の心理作用を活用すること。力強いパワーを感じる情熱的な赤、コミュニケーションが活発になるオレンジなど、シーンによって心理作用を考えた色選びをするといいでしょう。2つ目は色の機能性。使う色によって見やすく、分かりやすくすることができるので、商品パッケージを考える時や資料を作成する時などに有効です。加えて、どういう人に使ってもらいたいのか、どう思ってもらいたいのかといったイメージも踏まえて色を選ぶと、商品の打ち出しがより明確になります。3つ目は人に関わる時。そこで役に立つのがパーソナルカラーです」(鷹柳越子さん)
ビジネスでは初めて会う人も多いため「第一印象が大事」と鷹柳さん。第一印象は会って3~7秒で決まると言いますが、その時間内に人が受け取れる情報は視覚が7割。さらにその視覚情報の中でも、色が8割を占めると言われています。
「それだけ『色の情報は第一印象に大きく影響している』ということですね。色により好感度も変わるので、その後の話の受け取り方も変わりますし、距離感も変わります」(鷹柳越子さん)
では印象を良くするためには、どこにパーソナルカラーを取り入れるのが良いのでしょうか?
「対面時に目がいく顔まわりに取り入れるのがおすすめです。メイクやヘアのカラー、ジャケット、そして意外と重要なのがインナーの色。ビジネスの場合はスーツが基本なので、黒、グレー、ベージュ、ネイビーなどのベーシックカラーが多くなりますよね。ジャケットがパーソナルカラーではない色の場合は、インナーで調整するのが有効です。インナーにパーソナルカラーを用いれば表情が生き生きとしますし、デコルテの肌の色もきれいに見えますよ」(鷹柳越子さん)
ひと言でビジネスといってもシーンは様々です。ここからはビジネスでよくあるシーンごとに、パーソナルカラーの有効な取り入れ方を鷹柳さんに教えていただきます。
■面接
「面接は、初めて会った方に自分をアピールしなければならない場ですから、第一印象が良くなるパーソナルカラーを取り入れると効果的です。スーツの色味としてはブルーアンダートーンの方は青やネイビー系、イエローアンダートーンの方はベージュブラウン、グレーがおすすめです。さらにインナー、メイク、ヘアカラーなどにご自身のパーソナルカラーを取り入れることで自分らしさを出すことができます。パーソナルカラーが分からない場合は、清潔感や誠実さを感じさせる青系統の色を選ぶといいでしょう。ただしイエローアンダートーンの方は、色味によって顔色が悪く寂しげに見える場合があります。合わせてみて顔色がくすんで見えるようであれば、スーツをネイビーにしてインナーに温かみのある明るい色を入れるといいですよ」(鷹柳越子さん)
■プレゼンテーション
「プレゼンテーションでは、思い入れに関連するパーソナルカラーを取り入れてみてください。例えば、情熱や力を前面に押し出したい時は赤、清廉さや誠実さを打ち出したい時は青、女性にアピールするなら優しい雰囲気のピンクなど、色の効果を踏まえたパーソナルカラーを取り入れるのがおすすめです」(鷹柳越子さん)
このように、どこにアピールしたいのか、何を打ち出したいのかという思い入れを色に乗せて使っていく、ということですね。
「プレゼンテーションの場合は、服装やメイクだけでなく、相手に説明するための企画書に取り入れるのもいいと思います。また、色の使い方のひとつとして他社と競合するプレゼンテーションの場合は、コーポレートカラーを取り入れるのもいいかもしれません。自社のコーポレートカラーを使えばクライアントに自分の会社を印象付けることができますし、クライアントのコーポレートカラーを使えば相手に対するリスペクトを表現でき、選考の際のポイントにもなり得ます」(鷹柳越子さん)
■商談
「相手に対して積極的に臨むのか、親しみを感じていただき、話を引き出す必要があるのか、商談の目的によって選ぶ色は変わってきます。こちらが押したい商談の場合はパワーを感じる色。具体的には黒、ネイビーなどしっかりした色を選んでください。穏やかな雰囲気を作りたい場合は柔らかいカラー。親近感を持っていただき話を引き出したい場合はピンクやオレンジも選択肢に入ってきます。ピンクは警戒心を取り払う色ですので、男性が女性のお客様に会う場合は、服装のどこかにピンクを入れると相手も優しい気持ちになり、話しやすくなるものです。オレンジはカジュアルで親しみやすい雰囲気になりますので、コミュニケーションが円滑になり会話が弾みます。難しい商談では、ぜひパーソナルカラーを上手に使ってほしいところです」(鷹柳越子さん)
この色は避けた方がいいという、NGカラーのあるシーンはあるのでしょうか。
「お詫びを目的として人に会う場合、赤、ピンク、オレンジ系はNGです。基本的に相手は怒っているわけですから、赤い色を見ると感情がヒートアップしてしまいます。ピンクは甘い雰囲気になるため、『なめているのか』と思われがち。以前、お詫び会見でピンクのネクタイをしていた方がいたのですが、大ひんしゅくを買っていました。ネクタイの色ひとつで相手に与えるイメージはかなり変わるものです。やはりお詫びをするなら、責任感を前面に打ち出しながらも心の鎮静効果があるネイビーのスーツに、誠実さを感じさせる白のインナーがベターです」(鷹柳越子さん)
パーソナルカラーはファッションやメイクで個々の魅力を引き立てるだけでなく、ビジネスでパフォーマンスを高めることにも役立ちます。「色は自分の魅力を知るための道具になってくれますし、魅力を上手に引き出す味方になってくれるもの」と鷹柳さん。ぜひビジネスシーンにもパーソナルカラーを活用していきましょう。