猫のようで猫ではない、ちょっぴり下品だけど憎めない「にゃっちーず」。LINEスタンプやオリジナルグッズなどを展開し、今絶大な人気を誇っているキャラクターです。生みの親であるイラストレーターのかわベーコンさんは、6歳と2歳という小さなお子さんを育てる二児の母。昼間は子育てに専念し、夜に制作活動をするというペースで、家庭と仕事を両立させています。プロとして活動するようになったのは、なんとお子さんを育てるようになってからのこと。忙しい毎日の中で、一体どのようにしてチャンスを掴んだのでしょうか。まずはご自身とイラストとの関わりについて聞いてみました。
「小さい頃から絵を描くのが好きで、暇さえあればチラシの裏に何かを描いているような子どもでした。はじめは漫画家になりたかったんですが、高校生の時、1枚絵で完結するイラストを描くのも面白いなあと興味がわき、専門学校に進学してイラストやデザインの勉強をしたんです。実は病気になってしまい専門学校は中退してしまったのですが、イラストを描くこと自体は変わらず好きだったので、ずっと続けていました」(かわベーコンさん)
そんな、ひたすら描き続けている中で「にゃっちーず」は誕生しました。
「18、19歳くらいの時だったから、もうかれこれ約10年前ですね。何か自分にしか描けないキャラクターを作りたいって、ずっと思っていたんです。『にゃっちーず』は未確認生物なので猫ではないんですが、最初から猫っぽいものにしようというのは決めていました。
最初に描いたものは、今よりもっと表情が豊かだったんです。でも、なんだかしっくりこなくて。何回か描いているうちに、今のような豆粒みたいな目でずっと笑っているキャラクターに落ち着いていきました。あ、なんかコレいいな、コレだなって、ピンときたんです」(かわベーコンさん)
当時「にゃっちーず」は、主に友達の前で描くだけの存在でしたが、その後自身のホームページで発表したところ思いのほか評判に。そこでシールを作って販売することにしたそうです。
「その頃の『にゃっちーず』は、今よりもっとスリムだったんです。だから、そのシールを持っている人はかなり貴重ですよ(笑)!1枚50円、完売はしなかったけど、買ってくれる人がいてうれしかったですね」(かわベーコンさん)
自分のキャラクターグッズが売れたことで、小さな達成感を味わったかわベーコンさん。ただ一方で、どうしたらプロになれるのだろうと思い悩んでいた時期でもありました。
「絵を描く仕事をしたいとずっと思っていたのですが、どうやったらそうなれるのかわからなかったんです。会社があるわけでもないし、ましてや誰もプロになる方法を教えてくれないですもんね。専門学校の先生にも、さんざん狭き門だと言われていましたし。だから、やっぱり難しいんだろうなと……」(かわベーコンさん)
その後、かわベーコンさんは結婚。妊娠中に何気なく始めたTwitterに「にゃっちーず」を載せたところ、ある投稿を機に一気にアクセス数が伸びる事態に!
「ちょうど、長女が生まれた頃だったかな。ストッキングをはく時、がに股になるじゃないですか。その変な動きを『にゃっちーず』で3コマ漫画にしたんです。そしたらバーンと広がって、たちまち『にゃっちーず』の存在が有名になったんです。
その後、ずっとやってみたかったLINEスタンプを作ってリリースすることにしました。Twitterで知らせたら、深夜にも関わらず発売直後からものすごく多くの方が購入してくださって。信じられない状況を目の前にして『どうしよう!寝られない!!』って、あわあわしていました(笑)」(かわベーコンさん)
「にゃっちーず」のLINEスタンプが大ヒットを記録したことで、瞬く間に注目を浴びることになったかわベーコンさん。これがキッカケで、単行本の出版やオリジナルグッズの販売など徐々に活躍の場を広げ、とうとう立派なプロとして活動するようになりました。
「今、夢が叶ったなって思いますね。子育てと両立しているので、もちろん時間に追われる時もあります。それこそ、締め切り前は寝られなくてしんどいし、人と比べてしまって落ち込むこともあります。でも、好きなことを仕事にするのってやっぱり達成感があるんですよね。
『にゃっちーず』がプライズ商品としてぬいぐるみになったり、アプリゲームになった時、『ああ、ここまできたんだな』と実感しました。諦めずにずっと描いていてよかったと、心の底から思いましたね」(かわベーコンさん)
好きなことを仕事にする難しさと楽しさを両方語ってくれたかわベーコンさん。夢を叶えた先輩としてアドバイスをお願いすると、まさに今の時代を反映した答えが返ってきました。
「やりたいな、と思ったらすぐにやることですね。これが終わったらやろうかな、じゃなくて、できる時にやったほうがいいです。
例えばイラストや文章だと、昔はまず原稿用紙を買ってきて、かいて、出版社に送って、ひたすら結果を待つ、ということをやっていたと思います。だけど今はそうじゃない。自分が描いたものをすぐに世の中に発表できるSNSというツールがあるから、なんでもネットでできてしまうんです。リアルタイムにフォロワーさんから反応をもらえて、さらにそこからお仕事につながることもある。そういう意味では、どんどん手軽にできるようになったと思います。
もちろん、新しい人もモノもどんどん出てくるから焦ることもありますけど、だからなおさら早いほうがいいんです。私は子どもを産んでから体力が落ちたこともあり(笑)、始めるならできるだけ早いほうがいいと実感しました。時間がないって言い訳にしないで、できるだけ早くやったほうがいいですよ。ホントに!」(かわベーコンさん)
時間をかけて仕上げる作品もたくさんありますが、5分くらいで描いたものをTwitterへ投稿することもあるそうです。
「誰かに見せたいなと思ったら、もう載せちゃっていいと思っています。返ってくるのが、うれしい言葉でも、嫌な言葉でも、それが今の自分。そこから勉強していけばいいんだから」(かわベーコンさん)
どんなことがあっても1日1回は必ず描くように心がけている、と強い意志を語ってくれたかわベーコンさん。夢を叶えた充実感を噛み締めつつ、プロとしての自覚をしっかりと持つ姿が、とても印象的でした。
ボールペンで描くかわいいプチイラスト講座へのリンク
デジタルイラスト講座へのリンク