ひと目でそれと分かる、独特のタッチが魅力のまき田さん。4年半ほど前、まだ大学生だった時に、コツコツ描いていたイラストをTwitterでアップしたところ、みるみるうちに人気を集め、そのフォロワー数は今や15万人以上に。今年は初の画集を出版し、個展やコラボカフェも開催!夢を次々と実現している、今、注目のイラストレーターです。
小さい頃から絵を描くことがとても好きだったというまき田さんですが、実はそうなったのには、当時の環境が大きく影響しているといいます。
「小さい頃、親が転勤族だったんです。私が人見知りだったこともあって、なかなか周りに馴染めなくて、ずっと一人で絵を描いているような子でした。『紙と鉛筆が友達』みたいな(笑)。でもそのうち、『何を描いてるの?』『上手だね』と声をかけてもらって、絵をきっかけに友達ができるようになったんです。
小学生の頃はマンガ雑誌を愛読していて、すっかりマンガに夢中でした。好きな作家さんの絵をマネしたり、ノートにマンガを描いたりと、よく友達と見せ合いっこしましたね」(まき田さん)
中学から高校生の頃は、マンガからは少し離れ、女の子のイラストなどをメインに描くように。
「当時は、学校のプリントの裏に描いたり、スケッチブックに描いて色付けしたり。今のような水彩ではなく、漫画家さんがよく使う『コピック』というカラーマーカーを、お年玉でコツコツ買い集めて使っていました。
友達の誕生日には、イラストを描いてプレゼントしていましたね。それから年賀状は毎年、一枚一枚手書きのイラストで。友達が毎年楽しみにしてくれていて、そんな風に誰かが喜んでくれると、さらに絵を描くのが楽しくなりますよね」(まき田さん)
高校生になって進路を考えた時、一度は美大を目指してデッサンの教室へも通ったそうですが、「与えられたテーマで絵を描くのではなく、自分の好きなものを自由に描きたい」と、普通の四年制大学へ進学することを決意します。そして、大学入学を控えた少し長めの春休みに、まき田さんは暇つぶしにと、翌年のオリジナルカレンダーを手描きで作り始めます。
「そのカレンダーを『せっかくだから』という親のすすめで印刷することにしたんです。そこで何を思ったか300部も刷っちゃったんですよね(笑)。友達や親戚に配っても、さすがにさばききれなくて持て余していたら、大学で入ったサークルの先輩が『大学祭のフリーマーケットで売ったら?』って言ってくれたんです。この時初めて、自分の描いたものを買ってもらうという経験をしました。今思えば、これが私の記念すべき初グッズですね」(まき田さん)
この時、イラストを描くだけでなく、それを生かしたアイテム作りの楽しさに目覚めたまき田さん。その後もアマチュア作家の即売イベントに出店するなどして、様々なグッズを販売したそうです。そして、もっとたくさんの人に自分のイラストを見てもらいたいと思って始めたのがTwitterでした。
「最初はすごく不思議な感覚でした。会ったこともない人が、私のイラストを見て『かわいい』と言ってくれたので。友達だと、お世辞でもかわいいって言ってくれるじゃないですか。でもそうじゃなくて、純粋に絵を見てそれを褒めてもらえるのは、すごく自信になりました。そのうち『有料でイラストを描いてほしい』という依頼が増えてきて、気付いたら『私ってイラストレーターなのかも!?』という感じになっていました(笑)」(まき田さん)
その後も、在学中にLINEスタンプをリリースするなど、積極的に活動していたまき田さんですが、いよいよ大学卒業が近づいてきた頃、ある決断をします。
「もともと、大学を卒業したら普通に就職しようと思っていました。でも、そのタイミングでコラボ商品の企画や出版のお話をいただいたんです。親にはすごく反対されたんですが、これを逃したらこんなチャンスはもうないかもしれないと思って、絵の道1本でやっていこうと決めました。仕事をしながらという選択肢もありましたが、せっかくもらったお話を片手間で中途半端にやりたくないと思ったんです」(まき田さん)
このように、まき田さんは自分の好きなイラストをTwitterで発信し続けたことで大きなチャンスを掴み、本格的なプロのイラストレーターとしてのキャリアがスタートしました。
現在はフリーのイラストレーターとして主に自宅で仕事をしているまき田さん。フリーなだけに、仕事には波があり、生活は少し不規則になりがちですが、充実した日々を過ごしているそう。最近はパソコンを使いデジタルイラストを描くイラストレーターさんも多い中、まき田さんのイラストは、下絵から色付けまですべて手描きです。
「私の場合、特にどこかで勉強したわけではないので描き方はかなり我流です。まず簡単な下描きをコピー用紙などにします。それをトレース台にのせて、本番の紙に写しながらペン入れをしていきます。
普通は1枚の紙に下描きし、そのままペン入れする人が多いですが、私は下絵を消す消しゴムかけが苦手なんです。そこで、どうにか消しゴムかけをしないでいい方法を考えた結果、編み出したのがこのオリジナルのやり方です(笑)。主線を描く時は、やわらかい雰囲気が出るので茶色のペンを使っています」(まき田さん)
そしてここからいよいよ、まき田さんの絵の最大の特徴でもある色付けです。
「今のタッチが出来上がってから、ずっと使い続けているのが透明水彩絵の具です。コンパクトで使いやすく、色が濁らないので私のタッチに合っているのかなと思っています。色使いは作品によって違いますが、特にグッズ用のイラストの時は、持ってくださる方をイメージして工夫するようにしています。
最近は『Twitterを彼女といっしょに見ています』という男性の声も多いので、男性でも抵抗なく持てるような色使いにすることも増えてきました」(まき田さん)
最後にスキャナーでイラストを取り込み、画像編集ソフトのフォトショップを使って色味を調整すれば完成です。これだけ一枚一枚、丁寧に心を込めて描かれていることを知ると、あらためてまき田さんの絵が多くの人の心を掴むことにも納得です!
当初は女の子のイラストをメインに描いていたまき田さんですが、カップルのイラストやその二人の何気ない日常を描いた物語シリーズを描くようになってから、そのイラストにも微妙な変化があったようです。
「私のこのタッチは、表情を付けるのがすごく難しいんです。だから最初の頃は結構練習しました。でも物語シリーズを描くようになってからは、登場人物の喜怒哀楽を描かないといけないので、その流れの中で自然と練習ができているというか、いろいろな表情が表現できるようになってきたと思います。昔、マンガを描いていた経験も生きているのかもしれませんね。最近はカップルで見てくださっている人も増えているので、こんな風に人物の表情が付けられるようになったことで、より自分たちを重ねあわせて見てもらえるようになったのかなと思います」(まき田さん)
多くのファンの方をはじめ、いっしょにお仕事をする企業の方など、たくさんの人と繋がることができたのは、大好きなイラストを描き続けてきたおかげだという、まき田さん。
「私は本当にラッキーだったなと思います。今度は私の絵で、誰かと誰かの会話や出会いのきっかけを作っていけたら嬉しいですね。今も『まき田さんのグッズをプレゼントしたら彼女が喜んでくれました』とか『持っていたグッズがきっかけで、同じまき田さんファンの友達ができました』というメッセージをいただくんですが、それがイラストを描いていて一番よかったなと思う瞬間です」(まき田さん)
すでに、イラストレーターとしてやってみたかったことをいくつも叶えてきたまき田さんですが、今後はどんなことをやってみたいか、伺ってみました。
「いつか絵本を描いてみたいです。友達や自分の子どもができたら読み聞かせができるような、そんな絵本が描けるといいですね。そのためには、私自身もっと経験を積まないといけないと思っています。
よく『どうやったら、絵が上手になりますか?』って聞かれるんですけど、私が聞きたいくらいです(笑)。でも、自分がかわいいと思うものがあったら、それをマネしてみますね。私は、マネすることが上達への近道だと思うので。ただマネするのではなく、そのどこを自分がいいと思うのかを考えながらマネして描くようにすると、上達しやすいのかなと思いますよ」(まき田さん)
小さい頃から大好きな絵を描き続けたことで、夢を叶え、応援してくれるたくさんの人に出会えたというまき田さん。ただ描いて楽しむだけではなく、自分を表現したり、人とのコミュニケーションを円滑にしてくれたり、イラストは毎日の生活をもっと豊かにしてくれるエッセンスなのかもしれませんね。絵が好きな人も、あまり自信がないという人も、イラストを気軽に生活に取り入れてみてはいかがでしょうか?
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