もともとライターとして仕事をしていた小山さんが、介護専門のジャーナリストとして歩むようになったきっかけは、ご自身の介護経験にありました。
「約20年前に祖母がくも膜下出血で倒れ、介護が必要な状態になったのですが、病院の対応がひどくてショックを受けました。当時は手をしばったりして体の自由を奪うことが平気で行われていたのです。祖母によりよいケアをしたいとの思いから、母とふたりで在宅介護を行うことを決断しました。それから約2年、仕事を中断し介護に専念したのです。その後、介護ジャーナリストとして現場を取材するようになり、病院での苦い経験や、介護保険のサービスを利用し、試行錯誤で始めた在宅介護について、一冊の本にまとめました。それが私のデビュー作『朝子の介護奮戦記』です」(小山さん)
小山さんはより専門的な知識を身に付けるため、「介護福祉士」の資格も取得されています。
「ヘルパー2級(現在の介護職員初任者研修)の資格は持っていましたが、高い技術と知識が身に付く介護福祉士の資格が必要だと思いました。介護は百人百様で、とくに在宅介護の場合は、資格がなくても、うまくまわっているケースもあるでしょう。ただ私は、医療や介護の仕事に就いている人はもちろん、一般の方々に情報を発信する立場の場合も、基準となる知識を持っておくことは必要だと感じたのです。資格を取得するためには、高齢者の体と心の変化、食事や入浴などの生活支援方法やコミュニケーション技術……といったことを学びます。こういった知識があると、介護を様々な角度からとらえることができます。ちなみに、介護福祉士になるには、現在実務経験ルート(実務経験3年以上+研修+筆記試験)や養成施設ルートなどがあります。多くの人に取っていただきたい資格です」(小山さん)
さらに、資格があると手当がもらえ、転職に有利という面も。
「介護福祉士を一定数以上配置すると、事業所に与えられる報酬が加算されるという背景があり、転職する際も資格があるほうが有利です。介護福祉士の資格手当がある事業所もありますし、なにより、資格をとることで自信をもって働くことができます。さらに、資格を持っているとリーダー的な役割が求められるので、仕事へのモチベーションもアップするでしょう」(小山さん)
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「介護の仕事に就いている人の姿は輝いてみえることがある」という小山さん。では、どういった点にやりがいを感じている人が多いのでしょうか。
「困っている人を援助して感謝されるというのは、もちろん大きな喜びでしょう。しかし、一筋縄ではいかないことも多いのが介護の仕事です。ごはんを食べてくれない人がいた場合、なぜ食べないのか、体の調子が悪いのか心の問題なのか、そういったことを考えて、相手を理解していく努力が求められます。流れ作業でできる仕事ではありません。自分で考え、成長していけるのもこの仕事の醍醐味なのです。また、いろいろな人生経験をした方のほうが、相手の言葉に心から相槌を打てて、心が通うこともあります。男女問わず、年齢を重ねても続けられる点も介護の仕事の魅力です」(小山さん)
介護の仕事にはさまざまな職種があり、専門分野で活躍する人も少なくありません。
「その方の生活を支えるヘルパーや介護福祉士、介護が必要な人やその家族の相談に応じるほか、介護保険のサービスのプランを立てたり、調整などを行う介護支援専門員(ケアマネジャー)、おもに体の機能の回復をサポートする理学療法士や、ことばによるコミュニケーションに問題がある方などを支援する言語療法士、日常生活の基本的な動作を改善させるサポートを行う作業療法士などさまざまです」(小山さん)
それぞれの専門分野にはどういった人が向いているのでしょうか?
「ヘルパーや介護福祉士は、相手の話に根気よく耳をかたむけ、他者を理解する力がある人が向いていると思います。利用者がいつも思い通りに行動してくれるわけではないので、自分の感情のコントロールも必要です。
一般に『ケアマネジャー』と言われる介護支援専門員は、『手マメ』『足マメ』『口マメ』な人が向いているでしょう。理学療法士、言語療法士、作業療法士は、根気よく問題解決に向き合える人が適していると言えそうです。どんな仕事もそうですが、仕事を始めて1~3年程度はわからなかったり、失敗したり、戸惑うことも多いと思います。でもその山を乗り越えれば、仕事の楽しさ・やりがいを感じることも増えてくるでしょう」(小山さん)
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時代の移り変わりとともに、介護の世界での働き方も変化していくのでしょうか。
「最近では、高齢者を笑顔にするレクリエーションを企画し、提供するレクリエーション介護士という資格も登場。介護職の経験を生かして、ITを活用した新たなビジネスを立ち上げる人も出てきていますし、福祉用具や介護ロボットの開発も進んでいます。日中の一定時間通う『通所介護(デイサービス)』の内容も、リハビリマシーンを使ったトレーニングに特化したり、檜風呂での入浴やご当地のお菓子が提供されるなど、利用する方のニーズに沿って充実してきました。
単身世帯が増え続ける中、もはや家族だけに介護を任せる時代ではありません。これからは、ニーズやサービスも多様化し、どこで誰に介護をしてほしいのかを自ら積極的に選ぶ人も増えるでしょう。介護職では、資格とスキルと経験のある人がますます求められるのではないでしょうか。キャリアアップを目指して突き進めば、大きな可能性が広がっている世界だと思います」(小山さん)
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