アロマは直訳すると「香り」。そしてアロマテラピーとは、植物の香りの力を使って心と体の調子を整える自然療法を言います。植物の花・葉・根・果皮などから抽出した精油(エッセンシャルオイル)を利用することで、さまざまなアロマ効果を得ることができます。
「そもそも私がアロマテラピーに興味を持ったのは、肌の弱い娘を心配したことがきっかけなんです」(中谷順子さん・アロマテラピーインストラクター)
中谷さんは、ちょっとした虫刺されでも大きく腫れてしまう娘さんのお肌に市販の虫よけスプレーを使うことをためらい、肌に優しい素材を調べていったことで、アロマの力を知ることになったと言います。
「レモングラス・シトロネラ・ゼラニウムなど、虫を遠ざける作用を持つアロマの存在を知り、さっそく精油を使ったところ虫に刺される数がぐっと減ったのです。すごい!と思って、そこから本格的に勉強を始めました」(中谷さん)
アロマと聞いて非日常や高級感、使い方の難しさをイメージする方もいらっしゃるかもしれませんが、実はアロマは、日常生活のさまざまな場面に活用できる“より良い生活の味方”というわけです。
2020年、私たちはコロナ禍を体験し、新しい生活様式をどう築き、暮らしていくかが課題となりました。家にいる時間が増えたことで、家事に費やす時間も増えたのではないでしょうか。
「生活にメリハリをつけるためにもアロマは有効です。例えば今日は在宅ワークの日、家事を頑張りたい日だとしたら、朝に交感神経を優位にし、気分をシャキッとさせてくれるアロマを使います。そして頑張った一日の締めくくりをゆったりと過ごすために、夜には副交感神経を優位にし、リラックス効果のあるアロマを使うのです」(中谷さん)
ティッシュペーパーに2、3滴精油をたらし、そのまま香りを楽しめばよいそうで、使い方もとても簡単ですね。気分をシャキッとさせる香りとしてはレモン、ローズマリー、ペパーミント、ユーカリ。そしてリラックス効果のある香りとしてはラベンダー、オレンジ、ゼラニウム、ローズなどがおすすめだと言います。
また、家にいる時間が長くて食欲がわかないという時にはジンジャーやシナモンの香り、逆に食欲を抑えたい時にはグレープフルーツの香りがおすすめだとか。さっそく試してみたくなりますね!
自宅にいる時間が増えたことで、食事作りや後片付け、掃除などの家事が増えたことでしょう。同時に、家の中をより過ごしやすい空間にしたいと思った方も多いのではないでしょうか。
「食器洗いを気持ち良く行いながら、さらに汚れ落ちの効果も狙うアロマの活用法もあります。例えば、無香料の液体洗剤にオレンジの精油を数滴混ぜるだけ。オレンジの皮にはリモネンという成分が含まれていて油汚れを落とす効果があります。いつものお皿洗いが楽しくラクになりますよ。
セスキ水にオレンジの精油を混ぜれば、ガスコンロや換気扇の油汚れをより簡単に落とすこともできます。スプレー容器に入れておけばすぐに使えて便利ですし、日常使いがかないます(*1)」(中谷さん)
セスキ水のスプレーのほか、リビングの窓や床の拭き掃除をする際に、バケツの水に好きな香りの精油を数滴たらしても、気分と実利の両面に効果が期待できるそうです。また、香りの液体スプレーを作ってみるのもおすすめだとか。
「カーテンやソファ、ベッドなど、お洗濯するのが難しいものに直接香りの液体をスプレーすることで、料理などのにおいの吸着を防ぐこともできます。さらに、部屋干しする洗濯物にスプレーして、抗菌効果を持たせることもできます(*2)」(中谷さん)
「もちろん、コートや帽子などの洗いにくいアイテムにも利用できますし、布団やソファのダニ予防といった観点でも活用できます。シミができないよう葉っぱ系の香り(シトロネラ、ペパーミント、ユーカリなど)を染み込ませた布を挟むといった方法で、ダニを寄せ付けないようにもできます」(中谷さん)
こうした香りの力を応用した商品はすでに市販されているものもありますが、自分の好きな香りをチョイスし、手作りするところから楽しめるのが大きな魅力です。自分自身の知識が増えていくことで、生活も人生もちょっと豊かになりますね。
1:スプレー用セスキ水の作り方
≪作り方≫
(1)スプレー容器に、無水エタノールと精油を入れよく混ぜる。
(2)(1)に精製水とセスキ炭酸ソーダを入れて、さらによく混ぜたら完成。
※変色したりシミになる可能性があるので、本革・無垢材・畳・アルミ・銅などには使わないように気を付ける。
2:液体スプレーの作り方
≪作り方≫
スプレー容器に精油とエタノールを入れよく混ぜ、精製水を加えて薄めたら完成。
種類豊富なアロマですが、前述したようにその活用法には、「やる気を出したい時にはこの香り」「リラックスしたい時にはこの香り」などといった原則(使用している原料の特長による効果)があります。しかし中谷さんによると、こんな事例もあるそうです。
「ホルモンバランスを整えるとされるクラリセージなどの香りは、例えば生理前のイライラしている時に嗅ぐと、とても心地よく心も落ち着きます。ですが、それとまったく関係ない時期に嗅ぐと、ただただ不快に感じるだけなんです」(中谷さん) 不思議ですよね。実際にこうした現象が起こり、その時の体調や気分によって好きな香りが変わるというのです。
そして、人間には五感があり、その中でも嗅覚は本能的な感覚で、香りの好みというのは人によって異なります。ですので、原則にこだわり過ぎず、その時の直感で、今の自分の“好き”を大切にして選べばよいとのことです。
さて、日々の暮らしにアロマを上手に取り入れる方法はまだまだあります。
「日本の乾燥する冬にアロマハンドクリームはいかがですか?蜜ろうと植物性オイル(オリーブオイルなど)をレンジでチンして溶かし、そこに好みの精油を数滴たらし、冷えて固まれば完成です。好きな香り、好きな柔らかさに仕上げることができますし、ヘアクリームとして使うこともできますよ」(中谷さん)
作る楽しさがあり、体に使うものとしての安心感がある点でもおすすめです!
「一つ注意していただきたいのは、精油は純度の高い濃縮された液体ですから、絶対にそのまま肌に付けてはいけないということ。必ず、適切な濃度に希釈してから肌付けをしてください。また衣服等に色の濃い精油を使う時はシミにならないよう、まずはコートの裏側など見えないところにスプレーをして試してみるなどの配慮も大切になってきます」(中谷さん)
ということで、アロマ初心者の第一歩として、こんな方法を教えていただきました。
「空き瓶に重曹をたっぷりと入れ、そこに好きな香りの精油を数滴。そのまま靴箱に入れれば、香りの効果はもちろんのこと、余分な水分を吸収してくれ靴や靴箱を良い状態に保ってくれます。瓶に布やリボンを巻いてインテリアとして飾るのもおすすめです。また、重曹は最後にお掃除にも使えるため無駄がありません。
さらにもっと手軽に、トイレットペーパーの芯に精油を数滴染み込ませる方法があります。ホルダーからカラカラとペーパーを回し取るたびに、良い香りが広がるといった具合です」(中谷さん)
そして睡眠前のリラックスタイムに、一日使った喉のケアを教えていただきました。
「紙コップにお湯とローズマリーやティーツリーの精油を2~3滴投入し、湯気で喉のケアをする方法。これも準備が簡単ですし、ダイレクトに体に触れないので、アロマ初心者の方にぜひおすすめしたい活用術です」(中谷さん)
毎日のさまざまなシーンにアロマを取り入れることで、これまでと一味違ったリラックスした時間が増えそうですね。おうち時間が増えた方は、ぜひアロマを家事や生活に取り入れて、気持ちをリフレッシュしながら実用面の効果も実感してみてください。