マスク着用頻度が上がり、以前に比べてなんとなく肌の調子が悪い。なんてことはありませんか?それは、マスク着用が原因で起こる肌荒れかもしれません。都内で内科と美容皮膚科に勤務しながら、最近では美容系ユーチューバーとしても活躍中の友利新(ともりあらた)先生は「マスクによる肌荒れをそのままにしていると、いずれシミになることがあります」と話します。なぜ、マスクをしていると肌荒れが起こり、やがてそれがシミになるのでしょうか?
「マスクによる肌荒れの原因は、大きく分けて2つあります。1つは、マスクが触れている部分に起こる摩擦です。摩擦を受けた肌は『炎症性サイトカイン』という物質が発生し、炎症を起こす信号が送られます。これは、紫外線が当たった肌と同じ状況です。擦れている自覚が無くても、マスクをしている時は常に肌への摩擦があって、炎症が起きやすい状態にあると思ってください。原因のもう1つは、乾燥です。マスクをしていると吐く息で蒸れ、肌がふやけた状態になります。肌は通常、角質層という細胞の重なりがあり、その隙間を『細胞間脂質』というものがセメントのように埋めて、バリア機能を果たしているのですが、肌がふやけると『細胞間脂質』が緩み、角質層から流れ出てしまいます。すると、バリア機能で守られていたはずの水分が逃げ出し、肌の乾燥が起こります。バリア機能の低下は、肌の内側にあった水分を逃すだけでなく、原因の1つ目に挙げた、摩擦などの外部刺激も受けやすくしてしまいます」(友利新先生)
「先ほどお話ししたように、マスクで摩擦を受けている肌は、紫外線が当たった時と同じように炎症を起こしています。夏の紫外線のダメージが蓄積されて秋にシミが増えるように、摩擦による炎症が続いてダメージが肌に蓄積されると、後々シミになって現れてくるのです」(友利新先生)
実際に、マスクによる肌荒れで受診される方は増えていますか?
「ご自身ではマスクによる肌荒れだと気づいてない方が多いのですが、肌の調子を詳しく伺ってみると、マスクが原因で肌荒れが起きている方は多くいらっしゃいます」(友利新先生)
マスクによる肌荒れには、どのような症状があるのでしょうか?
「代表的な症状は、カサつきなどの乾燥、赤み、かゆみ、ニキビです。乾燥は先にお話ししたように、蒸れから起こります。赤みとかゆみは、肌の炎症が原因と考えられます。そして、実はニキビも肌の乾燥が関係しているのです。蒸れによって『細胞間脂質』が流出すると、肌は乾燥を防ぐために油膜を張ろうとして皮脂分泌が増加します。ですが、肌の水分は蒸発しているので、油分だけが増え、テカリや毛穴詰まりが起きて、ニキビができやすい状態になってしまうのです」(友利新先生)
季節によって、症状の変化はありますか?
「気温が高い時期は、皮脂分泌が増えるのでニキビ。空気が乾燥する秋冬は、さらに肌の乾燥を感じやすくなると思います。また、長期的にマスクを着用していた影響がくすみやシミとして現れる方も、今後は増えるのではないかと思います」(友利新先生)
マスクの着用は、肌荒れしやすくなるだけでなく、くすみやシミの原因になることが分かりました。
マスクで肌が荒れないためには、普段どのようなことに気をつけたらよいのでしょうか?スキンケア方法と、体の内側からのケアについて教えていただきました。
■炎症を抑える成分が配合された化粧品でスキンケアをしましょう
「肌は日々炎症が起きている状態なので、スキンケアをする時には抗炎症作用のある成分が入っている物を選ぶのがおすすめです。代表的な成分としては、トラネキサム酸、グリチルリチン酸、ビタミンCです。これらは美白化粧品に配合されていることが多いため、普段から「美白」と書かれた化粧品でスキンケアをするといいと思います」(友利新先生)
■肌のタイプを見極めながら、しっかりと保湿をしましょう
「保湿には、水分を与えるものと、油分を与えるものがあります。スキンケアをする際には、自身の肌はどちらを必要としているか見極めることが、肌荒れしにくい肌を作るうえで大切です。ニキビやテカリ・ベタつきが気になる方は、肌の水分が不足していると考えられるため、化粧水でたっぷりと水分を与えるスキンケアを意識しましょう。カサつきや乾燥を感じる方は、水分も油分も不足しているため、化粧水の後に必ず乳液やクリームなどで油分を与えてください。水分と油分が配合された日中用ミスト化粧水を利用し、日中にこまめな保湿をするのもおすすめです」(友利新先生)
■体の内側からも水分を摂りましょう
「水を飲むと体の水分量が上がるため、こまめに水を飲んで、体の内側から乾燥を防ぐといいでしょう。ただし、水を飲んでいれば肌が乾燥しないということではありません。スキンケアによる保湿を基本に、水分も摂るようにしてください」(友利新先生)
マスクによる肌荒れを防ぐために、日頃のケアを一度見直してみましょう。
肌荒れを防ぐためのケアを伺ってきましたが、既に肌が荒れてしまっている場合は、どのようなケアをしたらいいのでしょうか?症状別のケア方法についても教えていただきました。
■ニキビ
「インナードライ(角質層の水分不足が原因で皮脂分泌が増える状態)が進んでいる可能性があるので、水分をしっかり入れる保湿をすること。肌の水分量を高める成分、ヘパリン類似物質やヒアルロン酸、セラミドなどが配合された化粧品を使用してみるのもおすすめです」(友利新先生)
■乾燥
「油分も水分も不足しているため、化粧水だけで終わっていた方は乳液を足す。乳液で終わっていた方は、より油分の多いクリームに変える。クリームを使っていても乾燥を感じる場合は、オイルを足すといいでしょう。肌の状態を見ながら、プラスオンしていくことが大切です」(友利新先生)
■くすみ
「マスクで肌に摩擦が起きたことで、角質が未熟な状態のまま重なり合って厚くなっている可能性があります。そうすると、肌がゴワついたり、くすんだりしてしまいます。そのような時には、刺激の強くないピーリングローションなどを使って角質ケアをし、その後にしっかりと保湿をするといいでしょう」(友利新先生)
友利先生は「今回ご紹介したケアは、マスクを着用しない時でも行って構いません」と話します。これからも、季節性のインフルエンザや風邪、花粉症対策など、マスクは生活に欠かせない存在に変わりはありません。炎症と乾燥を防ぐスキンケアを日常的に取り入れて、マスクで肌荒れしにくい肌を作りましょう。