成長期の子どもが運動能力を全力で発揮するために、食事において最も大事なことは「栄養バランスを整え、健康的な食習慣を身に付けること」だと話すのは、運動と栄養の関係性に詳しい、公認スポーツ栄養士の橋本玲子さん。
5~15歳頃までの「ゴールデンエイジ」と呼ばれる時期にいる子どもたちは、さまざまなことを吸収でき、急成長が可能です。身体能力や運動能力、脳の神経系統などが著しく発達する時期だからこそ、その発達のもとになる食事がとても大切です。また、「一度身に付いてしまった食習慣を大人になってから改善するのは難しいため、子どものうちから健康的な食習慣を身に付けられるようサポートしてあげてほしいですね」と、橋本さんは話します。
しかし、ライフスタイルが多様化している現代では、子どもの食事においてさまざまな問題点があるそうで……。
「成長期の子どもたちは、日々食べたものが体の材料になって、骨・筋肉・血液・髪の毛など細胞の1つ1つを作り上げています。特にスポーツをするお子さんは、スポーツをしないお子さんに比べて多くのエネルギーや栄養素が必要になります。そのため、偏った食事や不規則な食生活では丈夫な体を作れない、疲れやすくて力を発揮できない、怪我をしやすいといったマイナス要素が増えてしまいがちです。ところが、最近は子どもの生活リズムが夜型化し、朝食の欠食や、一人で食事をする孤食の増加による偏食など、食べることの楽しさを学び、体験せずに過ごしている子どもが増えています」(橋本玲子さん)
では、子どもの運動能力向上と成長のためには、具体的にどのようなことを意識して食事をするとよいのでしょうか?
橋本さんが意識してほしいというのが、「毎食のバランスを整える」こと。とはいえ、栄養素を言われても分かりにくく、取り入れるのはなかなか難しいですよね。そこで、橋本さんがおすすめするのが、厚生労働省・農林水産省による「食事バランスガイド」を参考にする方法。1日に何をどれだけ食べるとよいかの目安が分かりやすく示されており、パッと見るだけでメニューの組合せを考えることができます。
出典
・厚生労働省Webサイト「食事バランスガイド」https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou-syokuji.html
・農林水産省Webサイト「食事バランスガイド」https://www.maff.go.jp/j/balance_guide/
橋本さんいわく、「難しく考えずに主食・主菜・副菜の3つが揃っているかを意識するだけで、栄養バランスは格段に整います」とのこと。牛乳・乳製品や、果物は毎食取らなくてもOK。おやつやデザートなどとして、1日のうち、どこかで取り入れるようにすれば大丈夫です。
「分かりやすく言うと、定食を意識するイメージです。例えば、コンビニに行っておにぎりだけで済ませるよりも、ハムや卵、レタスが入っているサンドイッチを選べば主食に主菜や副菜がプラスされて栄養バランスが豊かになりますよね。余裕があれば牛乳も付けよう……と、それくらい気軽な気持ちで始めてみてほしいです」(橋本玲子さん)
健康的な食習慣を身に付けるためには、継続することが何よりも大事。そのためには、出来合いのお惣菜や冷凍食品、レトルト食品なども活用しながら、足りないものをプラスしていくのが長続きさせるポイントです。
バランスの取れた3度の食事は子どもの運動能力と成長を促すために欠かせませんが、さらに取り入れると効果的なのが「補食」です。
補食は、3度の食事では取り切れないものを補う食事のこと。橋本さんによると、「成長期に必要なエネルギーやビタミン、ミネラルなどを3度の食事で補うことは難しいため、特に運動で体と脳を使うお子さんには積極的に取り入れてほしいです」とのこと。運動をする1~2時間前に食べることで、胃に負担をかけずにエネルギーを補給することができ、集中力アップにつながります。
具体的な補食については、こちらを参考にしてください。
補食はおやつではなく、あくまで食事の1つ。おすすめの食品は、体と脳のエネルギー源になる糖質がメインのもの。対して、控えたほうがよい食品は、脂質が多く消化に時間がかかるものです。
子どもに栄養バランスの整ったごはんを食べてほしいものの、毎日の食事作りはやっぱり大変。親御さんの負担を少しでも軽くするべく、橋本さん監修・おいしくて栄養バランスも整うオリジナルレシピ(※)をご紹介します。
<朝食>
まずは、1日の始まりとなる朝食のレシピから。体と脳のエネルギー源となる糖質を含むごはんと、体作りに欠かせないたんぱく質の豊富な卵がセットで取れるメニューです。
おにぎり
材料:1人分
作り方
ほうれん草と油揚げのみそ汁
材料:2人分
作り方
きゅうりの即席漬け
材料:2人分
作り方
ゆで卵
材料:1人分
作り方
ミニトマト
材料:1人分
作り方
POINT
「おにぎりやゆで卵にすれば食べやすく、忙しい朝にピッタリです。不足しがちなカルシウムも、おにぎりの具材に小エビ、みそ汁の具に油揚げを使えばOK。体の機能を調節するビタミン類を含む野菜は、洗っただけで食べられるトマトや冷凍野菜などを活用すると便利ですよ」(橋本玲子さん)
<昼食>
続いては、1日の活力を支えるのに大切な昼食メニュー。午後の活動のエネルギー源となる糖質と、腹持ちを良くするたんぱく質をしっかり補給するのがポイントです。
鶏肉うどん
材料:2人分
作り方
ツナとにんじんのごま和え
材料:2人分
作り方
フルーツヨーグルト
材料:1人分
作り方
POINT
「のどごしの良い麺類に、良質のたんぱく質を含む鶏肉と野菜、きのこ類が一杯で取れる一品。にんじんのごま和えに缶詰のツナをプラスすれば、お子さんでも食べやすく手軽に魚を取ることができます。カルシウムの吸収率が良いヨーグルトとビタミン類が豊富な果物も、1日1回欠かさず取るようにしましょう」(橋本玲子さん)
<夕食>
最後は、1日の中で最もリラックスして食べられる夕食のレシピを。お子さんの好きな肉料理を中心に、朝食と昼食で取っていない食材を使うと栄養のバランスが整いやすくなります。
ごはん
材料:1人分
じゃがいもとたまねぎのみそ汁
材料:2人分
作り方
豆腐ハンバーグ
材料:2人分
作り方
小松菜とじゃこの炒め物
材料:2人分
作り方
ぶどう
材料:1人分
作り方
POINT
「肉や魚に負けないたんぱく質のほか、カルシウムの豊富な豆腐を使ったハンバーグはボリューム感もあり、カロリーが気になるお父さんやお母さんにもおすすめ。1食で成長期のお子さんに不足しがちな鉄の約8割、カルシウムは約4割が補える栄養リッチな夕食です」(橋本玲子さん)
子どもの頃に身に付いた食習慣は、一生の財産になります。お子さんが健康で元気な毎日を送れるよう、できるところから食生活の改善に取り組んでみてくださいね。
※:オリジナルレシピは、小学校5~6年生男子を基準に考案。材料の分量については、小学校低学年のお子さんは7~8割程度、中学校のお子さんは2割増し程度を目安にするとよいでしょう。