教育系YouTuberとして活動している葉一さんは、小学生から高校生を対象とした学校教育の授業動画をYouTubeで3000本以上配信しています。「無料で好きな時間に勉強できるチャンネル」としてクチコミが広がり、累計再生回数は開設から8年で2.7億回を超えました。そんな葉一さんは、どんな思いで授業動画の配信を始めたのでしょうか?
「塾講師として働いていましたが、経済的な理由で塾に通えない子が多いことに気づきました。意志さえあれば、いつでも無料で勉強できる環境を提供したいとの思いでYouTube配信を始め、気づいたら3000本以上も配信していましたね。今では様々なレベルの子が見てくれていますが、当初想定していた対象は『基本的なところでつまづいてしまっている子』です。動画の良いところは、何度も繰り返して見られること。学校の授業でわからなかったところを探して、わかるまで何度も見てほしいと思っています。無料ですから(笑)」(葉一さん)
そんな思いでYouTubeで勉強の場を提供している葉一さんですが、「あくまでも動画は、自分で進めることができるようになるまでの手助けの一つ」と言います。「自分で勉強を進めていく力は、未来を切り開いていく力にもつながります。これからの人生で必ず役立つものなので学生のうちにぜひその力を身につけてほしいですね」(葉一さん)
一般的には「勉強を進めていく力」は学生のときに必要な力で、社会人になってからはそれほど必要ではないイメージがあります。葉一さんは、なぜ「自分で勉強を進めていく力は、学校を卒業したその後の人生でも役立つもの」と考えているのでしょうか?
「自分の力で勉強を進めていくこと、つまり『学ぶこと』は、人が生きている間は切り離せないものです。経済は成長しますし、技術も進化する。変わり続ける現代社会で生きている限り、学ぶことで自分をレベルアップさせることは常に必要だと思います。また、社会人は仕事の場で自分のスキルをアウトプットし、自分を新しいステージに引き上げていくことが必要ですが、それには学ぶ=インプットすることで土台を作ることが欠かせません。例えば、仕事でクライアントに対するプレゼンテーション力をあげるためには、マーケティングの知識をインプットすることが必要です。プレゼンテーション力が上がったことで、今までとは異なるポジションの上司やクライアントに評価され、新しいステージに行くことができます。新しいステージに行けば、新しい出会いがあり、そこからインプットすること、学ぶこともさらに増えます。その好循環が人生を豊かにしてくれるのだと思います」(葉一さん)
また、社会人の学びは自分に合ったスタイルを選ぶことが大切とのこと。モチベーションをキープすることも、学びを続けるポイントとなります。
「学生のように定期テストや受験がないので、社会人の学びはゴールを設定するのが難しいですよね。そう考えると、まずは自分の興味のあることや必要なことをしっかり見極めたうえで、資格取得や点数アップなど明確な目標を持つと良いですね。退路を断つという意味では、お金をかけることも重要かもしれません。また、今はいろいろな選択肢がありますから、自分に合った勉強法を選ぶことも大切。自分のペースで学習できる通信教育は、忙しくて使える時間に制限がある人に向いていると思いますし、逆に集団で学ぶスクールに入ってモチベーションをキープする方が向いている人もいると思います。私自身はYouTubeで動画を配信していますが、自分でテキストを進められる人には必要がないですし、一方通行になるので、直接コミュニケーションをとれるスクールには敵わないと思っています。動画はあくまで、フォローツールの一つだと思っています」(葉一さん)
自分に合った目標設定やモチベーションの上げ方を意識して、あらかじめ準備しておくことが大切なんですね!
学びの必要性は感じていても、勉強から長年離れている人や、もともと勉強に対する苦手意識がある人にとっては、最初はハードルが高く感じられることも多いと思います。ですが、葉一さんは「大人は学生時代よりも勉強するために必要なスキルが進化しているんですよ」と、ためらっている人の背中を押します。
「大人になってからの学びは、自分が興味を持っている分野に関するものなので、どんどん覚えられると思いますよ。例えば、学生時代に英語が苦手でも好きな曲の英語の歌詞だけは覚えられたり、歴史などの暗記科目が大嫌いでも好きなアニメのキャラクターとストーリー展開は覚えられたりすると思います。まずは、自分の苦手分野を決めてしまうような思い込みを捨てましょう」(葉一さん)
「また、『年を取ると脳は劣化するから、今からはとても無理』という声もよく耳にします。確かに、記憶力は悪くなっていくかもしれませんが、学びとは暗記ではなく理解することです。年齢を重ねると、経験によって理解する効率が良くなっているので、むしろ進化しているんですよ。学生時代は勉強の効率までは考えていなかった方も少なくないと思うのですが、今はあらかじめどのように学んでいけば効率が良いか、考えることができるようになっています。実はすごく進化しているんですよ」(葉一さん)
さらに、今は学ぶ環境が格段に変化していることも大人になってからの学びを後押ししているそうです。
「『勉強は自分の力だけで、ノートにひたすら書きまくって覚えるもの』というイメージを持っている方も多いと思いますが、現代ではまったく違います。手軽さで言えばYouTubeかもしれませんが、それだけではなく、多くのツールがあるので、一人ひとりの状況に合わせて学ぶ環境が整っています。私のYouTubeチャンネルを見てくれている人の中には、看護学校の受験を目指している主婦の人や、子どもと一緒に動画を見るうちに興味が出てきて自主的に学び始めた人も多いのですが、そんな『学び直し』の人が口を揃えて『自分の学生時代に今のような環境があったら、もっと勉強がしやすかったのに!』と、嘆きつつも喜んでくださるんです。学びから離れていた人ほど、今の時代の学びやすさに驚くと思います。『もっと学びたい!』と思うことを見つけたら、ぜひ一歩踏み出してほしいですね。また、お子さんがいる方は、親が学んでいる姿を見せることは間違いなく子どもに好影響を与えます。よく『うちの子は本を読まない』と嘆いている人がいますが、そういう親御さんご自身が本を読まないケースも少なくはありません。学び続けているお母さん、お父さんの背中を、子どもはしっかりと見ていますよ」(葉一さん)
学ぶことは生きていく上で欠かせないこと。私たちは学生時代の勉強を通し、一生役立つ学びの基礎を身につけています。また経験を積むことで、必要なことや興味のあることを身につけていく学びの効率も良くなっていますし、学ぶための環境も格段の進化を遂げています。せっかく身についている学びの基本スキルと、今の環境を生かさないのはもったいないですよね。「勉強はもうやりたくないこと」という思い込みを捨て、勇気を持って一歩を踏み出し、新たな学びを始めてみませんか?