今、就職を控える若い世代が「家族留学」という制度に注目し始めています。家族留学とは、仕事はもちろん、結婚や子育てといった未来の暮らしについて、実際に学ぶことができる、いわば「家庭版OBOG訪問」。子育てをしながら働いている先輩パパ&ママとの交流や育児体験を通じ、就職だけにとどまらない自分の暮らしの未来像を描くきっかけが得られるのです。
この制度をプロデュースしているのが、NPO法人manmaさん。
「将来の進路選びという岐路に立つ若い世代は、仕事について考える機会はあっても、暮らしについて考える機会は少ないのでは……?」という実感から、この家族留学を事業化し、現在までに、400件以上の家庭留学の成立を実現。仕事はもちろん、自分らしい家庭生活との両立をサポートするパートナーとして、今注目をあびています。
将来、自分らしく働き、生活を楽しむためには、仕事だけじゃない暮らしの計画書、つまり「ライフキャリア」を描くことがとても大切。
今回は、大学3年生の大橋空さんが、実際に家族留学を体験!大橋さんは高校時代にフィンランドへ1年間留学した時に日本と海外の「働き方」の違いを実感し、カルチャーショックを受けたそうです。現在はワークライフバランスを大切にした働き方や社会のあり方を模索しながら、コンサルティング会社でインターン中。まだまだ、結婚や子育てといった未来の暮らしにはリアリティがないのが今の正直なところだそうですが、人生の先輩方と一緒に過ごす家族留学では、どんな発見があったのでしょうか?
(manmaさん提供)
はじめまして!今回「家族留学」を体験レポートする、大橋空です。僕は、海外留学をした経験から、仕事と家庭生活、どちらも充実した理想の暮らしについて興味を持ち始めました。留学先のフィンランドでは、働くことと同じかそれ以上に、家族との時間を大切にします。残業や休日出勤といった時間外労働も日本に比べると少なく、皆、仕事とプライベートの切り替えがとても上手だなと感じました。でも、自分が日本で家庭を持ったとしたら、こんなふうに仕事と家庭の両立ができるんだろうか?と疑問を持っていた矢先、今回の家族留学を知りました。
日本では仕事の現場を見学したり、先輩に話を聞いたりする機会はいろいろあるけれど、自分の暮らしの軸になる「家庭」のお手本に触れるチャンスって、意外にないと思いませんか?特に僕の場合は実家が自営業で、祖母と両親の三世代家族という環境で育ち、さらに長男で兄弟姉妹は誰も結婚していないので、他の家庭環境を知るきっかけが今までありませんでした。「自分と違う環境の仕事や生活事情を知りたい」と興味を抱いたことも、家族留学を希望する一つの大きな動機になりました。
さて、今回お世話になるのは、6才の娘さん、4才の息子さんの子育てに奮闘中の4人家族の鈴木さん(仮名)ご一家です。ご主人は人材派遣会社に勤務されており、奥様は専業主婦として家庭を支えていらっしゃいます。
留学先の家庭は、事前にmanmaさんを介し、お互いにベストと思われるパートナーが選ばれます。パートナー選定のための自己紹介を書いていると、例えば「将来に対するイメージ」や「結婚についての考えは?」など、今回改めて聞かれるまで想像もしていなかったような質問項目も多く、最初はちょっと戸惑いました(笑)。自己紹介の時から、自分の将来像を描くシミュレーションが始まっているんですね。
いよいよご対面!「家族留学」のタイムスケジュールはどんな感じ?
家族留学当日。初めてのお宅へ伺う緊張感からか、最初はちょっとぎこちない挨拶をしてしまいましたが(笑)、ご家族でにこやかに迎えてくださる様子に、一気に緊張がほぐれた感じ!2人の子どもたちも、オリジナルのすごろくを作って待っていてくれました。なんてかわいいおもてなし!
1日のスケジュールは意外にフレキシブル。今回はこんなふうに過ごしました。
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子どもと過ごす1日はあっという間!もしかしたら、仕事以上にハードかも!?
日中の短い時間でしたが、子どもと過ごす時間はとにかく動いてばかり!インターンとして仕事をする今の生活とは違う体力を使った感じがしました(笑)。
また、いつでも遊びが子どもたちの中心にある、ということにも改めて気づきましたね。とにかく次々と繰り出される遊びの中には、僕が思いもつかないような独創性があふれていることも、新鮮な発見でした。僕もかつてはそんな子どもだったのかなあ?(笑)
子どもたちとたっぷり遊んでいるうちに、僕もいつかは、こんなふうに温かくて楽しさにあふれた家庭を持ちたい、という気持ちになり……。人生って、仕事はもちろんだけれど、奥さんや子どもと一緒に過ごす時間も、かけがえのないひとときなんだな〜って、しみじみしてしまいました。
(manmaさん提供)
今回お世話になった鈴木さんは、manmaに登録をしてから3年間の間に、4回も留学生を迎えているそう。家族留学のホストファミリーとしてはベテランの域!!
子どもたちともすっかり仲良くなった午後のおやつタイムに、ホストファミリーとして僕のような学生を温かく受け入れてくださる理由について伺いました。
その1:自分も「家族留学」してみたかったから!
「manmaさんの事業を知ったのは、会社の同僚からの口コミがきっかけでした。育休を取得することを伝えた時に、『家族生活をリアルに体験させてあげられるホストファミリーに興味あるんじゃない?』って。最初は、私たちがホストファミリーになれるかな?という不安もありましたが、こうしたホームステイを、自分も若い時に経験してみたかった、という気持ちが決め手になりました。
というのも、私が社会人2年目の時に出会った先輩が、仕事をバリバリこなしながら、とても楽しそうに子育てをしていて。自分もこんなふうに仕事と家庭を両方楽しめたらいいな、と思ったんです。当時、家族留学という制度があったら、きっと先輩のお宅へ伺っていましたね(笑)。今、若い人のお手本になれるような暮らしを実現しているかどうかはわかりませんが、少しでも、リアルなワークライフバランスを見てもらえれば、と思ってホストファミリーになりました」(鈴木さん)
その2:子どもにとっても、いい刺激になるから!
「今の子って、少子化の影響もあってお兄さんやお姉さんと言えるような、ちょっと上の世代と過ごす時間がとても少ない、ということを実際の子育てを通して実感しています。もちろん、私たち夫婦は親として愛情を持って子どもを育ててはいるけれど、もうちょっと別の価値観というか、私たちも知らない世界で育った若い世代と接することは、子どもにとってもすばらしい刺激になると思いました。また、今回大橋さんと過ごしたことで、私たち自身も刺激を受けました。意欲がある人って、大人が見ていないところでもしっかり学んで、育っているんだなあって、自分の若い頃と比べちゃったりして(笑)」(鈴木さん)
その3:自分の経験が、若い人のお手本になればと思ったから!
「人生で転機になるような決断をする時に、先輩の意見ってとても参考になると思うんです。実際、私は尊敬する先輩に憧れ、彼のような家庭を築きたいと思いましたし、子どもができた時は、別の先輩に育休取得のための資料を借りて参考にし、当時は男性にとって少しハードルが高かった育休を取得することができました。こうした経験は、自分も後輩に伝えていくべきと思ったのも、家族留学を受け入れようと思った大きなきっかけですね。もちろん、家族留学を経験する人がみんな、先輩や自分がやった通りにすればいいというわけではありません。私が伝えられることは共有し、そこから大橋さんのような若い世代なりの正解を見つけていってもらえたら嬉しいなと思っています」(鈴木さん)
いかがでしたか?海外留学をきっかけに、将来の働き方、暮らし方について改めて学びたいという気持ちから「家族留学」を体験した大橋さん。体験した直後に、大橋さんが感じた素直な感想を伺いました。
「今回の家族留学は、自分にとって海外留学と同じくらいのカルチャーショックでした。僕は社会人としてまだまだ新人ですし、家庭を持ち、子育てをした経験もありません。そんな中、仕事と家庭を自分たちらしく両立している先輩の生活にご一緒し、お話を伺えたことが新鮮だったし、自分の未来の暮らしについて改めて考えるきっかけになりました。中でも『子どもと一緒に過ごす時間』については、今から計画的にイメージしたいと思いました。鈴木さんのお話によると、子どもと過ごす時間って長いようで、実は短いんだそう。せめて小学校低学年くらいまでは、夫婦で子育てができる環境を作りたいとおっしゃっていました。僕たち若い世代は、特に就職のことばかり心配になりがちですが、夫婦や子どもとの関係は、一生続いていく。そう考えると、仕事と同じように、家庭や子育てのこともプランニングしていくことが、幸せな未来につながるのかもしれないな、と気づかされました」(大橋空さん)
子どもを持つ親御さんや、大橋さんと同じように、ライフキャリアを計画してみたいと思う若手のみなさんは、ぜひ「家族留学」を体験してみては?