気分転換や趣味として、イラスト描画を始めてみたいという人は年々増えているそう。でも、「絵の才能がない」、「思うように描けない」と、迷っている人もいるかもしれません。SNSで公開するファッションイラストが大人気のミヤマアユミさんは、そんな背中をそっと押してくれるように、水彩画の魅力について語ります。
「水彩は紙に色が滲んでいくところを眺めているだけでもとても癒やされます。自分で描いている最中も『まるで水彩セラピーだな』と思っています。線画や形にとらわれず、水を含ませた筆で湿らせた紙に好きな色を自由に広げてみてください。思いがけない滲みやグラデーションで、お気に入りの作品が出来上がるかもしれません」(ミヤマさん)
まずは何かテーマを決めて描くのではなく、水彩絵具の色を楽しむことから始めてもいいのですね。
では、ミヤマさんが普段ファッションイラストを描く際には、どのような道具を使用しているのか拝見しました。
「画材は好みや人それぞれ相性がありますが、私はタッチと発色の良さがお気に入りで水彩絵具を使っています。持ち運びやすく、比較的扱いやすい画材だと思います。好きな色を1本ずつ集めていくのも楽しいですし、いろいろなメーカーから出ている12色セットを揃えてみるのもいいかもしれません。お手頃なものでは12色入りが1,000円未満で手に入ると思います。最初から購入しなくても、シャーペンや色鉛筆、マーカーや絵具など、身の回りにあるものでも大丈夫です。お気に入りのペンや、新しい画材などテンションの上がるもので始めてみてください」(ミヤマさん)
ちなみに、ミヤマさんの著書『FASHION GIRLS』とコラボした、ウィンザー&ニュートン社のハーフパンセットも、ハイクオリティで発色良くおすすめだとか。水彩12色+水彩マーカーのセット(約2,600円)のほか、塗り絵用の線画や塗り方リーフレットも付属しているそうです。
「ファッションイラストを描くときの紙は、マルマンスケッチブック(約300円、A4サイズ)を一番愛用しています。安価で手に入りやすく、適度な厚みがあるので、水彩でも紙がよれにくくキレイに色がのります」(ミヤマさん)
すぐ始められる水彩画。楽しくて隙間時間も絵を描きたいと思うようになれば、継続できて早く上達するそうです。
では実際どのように描いていくのでしょうか。描き方のコツや手順についても教えていただきました。
■まずは何から始めればいい?
「雑誌でもSNSでも、『いいな』と思ったファッションをまずはよく見て描いてみましょう。鉛筆でもボールペンでも、家にあるものでいいのでとにかくたくさん描く。続けていると自分の好みなども見えてきます」(ミヤマさん)
■描くときのコツやポイントは?
「大事にしているのは、シルエット、バランス、そして色です。私の場合は、頭の形やシルエットを決めてから、細部を描くようにしています。顔から描き始める方も多いと思いますが、顔にこだわると失敗したり思うようにいかなかったりするので、ファッションイラストに限ってはいっそ最初は顔を描かないという練習方法もありかもしれません」(ミヤマさん)
■ファッションイラストを描くときの手順は?
「今回はお気に入りのコーディネートを気軽に水彩でイラストにする楽しみを知ってほしいので、素敵なファッションコーディネートを投稿されているkotori_miiさん(テキストリンク https://www.instagram.com/p/Bu6Kx0XgsqV/)の写真を元にイラストを描かせていただきました」(ミヤマさん)
■描く手順~背景なしのファッションイラストの場合
①スケッチブックに直接シャーペンで線画を描く
まずは、薄く大体のシルエットを描いてみたり、最後にペンで清書してもOK。
②水彩絵具で着色をする
はみ出しても気にしない。失敗しても水で濡らしてティッシュで拭き取ると結構色が取れます。
③線画をなぞったら完成!
仕上げにもう少し線をハッキリさせたい部分を、色鉛筆や細い筆でなぞりましょう。
ミヤマさんにイラストを描く手順を教えてもらいましたが、普段、写真をそのまま再現することはあまりないそうです。
「街を歩いていて気になるコーディネートの人がいたら、目に焼き付けてメモを取ったり、ウィンドウショッピングをしているときの『このデザイン好きだな』というものとの出会いを大切にしています。欲しい服や小物など、全部は手に入れられませんが、イラストでは理想を詰め込んだ好きなコーディネートを作ることができます」(ミヤマさん)
「色や形も『もう少しこうだったらいいな』と、自分流に自由にアレンジできるのが楽しいです。買い物に行って気になる服を見つけたものの、購入を諦めたときは、イラストに残して満足したりすることもあります」(ミヤマさん)
そんなミヤマさんは、著書の中でファッションのワンポイントアドバイスもしていますが、もともとファッションには疎いほうだと言います。そのため、ファッションイラストは自分が素敵だと思うものが中心で、ファッション誌よりも自分の主観を織り交ぜた好きなコーディネートで自由に描くとのこと。
「とにかく女の子を可愛く描きたい。似合うファッションやメイクをするような感覚で、アナログ感のあるタッチと明るい色彩を心がけています」(ミヤマさん)
これらのこだわりは、ファッションイラストをこれから始める人も、ぜひ参考にしたいところではないでしょうか。
そもそもミヤマさんがファッションイラストを始めたきっかけは意外なものでした。
「ファッションイラストを描こうと思い立ったわけではありません。街中で見かける素敵だなと思った服や小物をメモすることはしていたのですが、あるとき、職場の同僚の着こなしを、何気なく描いてSNSに載せたところ、その人がとても喜んでくれたんです。自分の絵で感動してくれる人がいるのがうれしくて、それから今日のファッションメモとして、職場の人の服装をスケッチするのが日課になりました」(ミヤマさん)
「ファッションメモが描き溜まった頃に、『FASHION SKETCH MEMO BOOK』という2冊のイラスト集を自費で作りました。そして、それを見た出版社の方からお声がけいただいてできたのが『FASHION GIRLS』という本です。これをきっかけにファッション系のお仕事を頂くことも増えました。とても大切な一冊です」(ミヤマさん)
そんなきっかけを経て、今も活躍の場を広げ続けるミヤマさん。これからファッションイラストを始めたいと思う人にこんなアドバイスをくれました。
「やっぱり楽しく続けることが一番上達に繋がると思います。描いていくうちに、どんどん理想に近づけたり、喜んでくれる人も出てくるかもしれません。ぜひ自分なりの楽しみ方を見つけてみてください」(ミヤマさん)
自己満足で楽しむもよし、誰かに見せてコメントをもらうもよし。とにかくハードルを高く設定せず、始めてみると新たな世界や趣味が広がっていくかもしれませんよ。