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2020.05.08

「噛む介護食」とは?食感を残して噛む力を維持する調理法をご紹介

「噛む介護食」とは?食感を残して噛む力を維持する調理法をご紹介

軟らかくて飲み込みやすいというイメージのある介護食。しかし、噛む力が残っている人は、適度に歯ごたえを残したほうが食が進むことも多いようです。健康寿命を延ばすという意味でも、噛む力はとても大切。そこで今回は、介護食士の資格を持ちマクロビオティックの料理家でもある寄國揚こさんに、噛む力を維持するための調理法やレシピについてお話を伺いました。

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知っているようで知らないこと。噛む力ってこんなに大切!

知っているようで知らないこと。噛む力ってこんなに大切!

よく、「年をとっても自分の歯をできるだけ残しましょう」といわれるのは、自分の歯でしっかり噛むことが、健康に生きるためにとても大切なことだから。でも、実際にどういう効果があるのか、なぜ大切なのか、知っているようで知らないのではないでしょうか。では具体的に噛む力を保つとどんないいことがあるのか、寄國さんに伺いました。

「年をとると、口の中の唾液が減ってきます。そうするとものを食べた時に飲み込みにくくなるという、嚥下障害につながる可能性もあります。よく噛んで咀嚼をすることによって口の中に唾液が出やすくなり、ものが飲み込みやすくなるんです。また、噛む作業により筋肉が動き血液が循環することで、脳も刺激されますから、認知症予防にもつながります」と寄國さん。

「しかも、唾液には殺菌作用がありますから、唾液が多くなることで口腔内の殺菌効果が高くなります。そうすると虫歯ができにくくなり、長く自分の歯を維持することができます。自分の歯で噛んで食事ができる人とそうでない人では、健康寿命も変わるといわれるほど、歯と噛む力を維持するのは大切。でも、噛む習慣はすぐに身に付くわけではありません。若いうちからよく噛んで食べることを意識してほしいですね」(寄國揚こさん)

噛む力に合わせて調理法を変える、介護食の考え方とは?

噛む力に合わせて調理法を変える、介護食の考え方とは?

体の状態が変わり通常の食事ではうまく食べられなくなった時、必要となるのが介護食です。食べやすさ・飲み込みやすさを重視するため、介護食といえば「おかずもごはんもドロドロにして食べやすくする」というイメージを持っていませんか?でも実は、「噛む力が残っている人にとっては、ドロドロのご飯ってとても食べにくいんです」と寄國さん。

「例えば、食べやすいようにとご飯を煮つづけると、糊のようになり喉に張り付き食べにくく、『おいしくないから食べたくない』と言って嫌がる人は多いんです。作る人も、これまで介護食を食べた経験がないので分からないんですね。食欲は生きる活力にもつながりますから、噛む力に合わせておいしく食べられる介護食を作ることが大切です」(寄國揚こさん)

噛む力に合わせた介護食を作ろうとする時、目安として活用できるのが「ユニバーサルデザインフード」です。ユニバーサルデザインフードとは「日常の食事から介護食まで幅広く使うことができる、食べやすさに配慮した食品」のこと。噛む力、飲み込む力によって「容易にかめる」「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」「かまなくてよい」という4つに区分されています。

「噛む力が弱まって食べられないものが増えたとしても、本人が気がつかないケースは意外と多いんです。そこで、どんなものなら食べられるのか、家族が気づくことがとても大切です」と寄國さん。「何が食べられて何が飲み込みづらいのか、どんな形・軟らかさなら残さず食べられるのかを家族がよく観察しながら、その人の噛む力に合った食事を出すと、とても喜んでもらえます。ユニバーサルデザインフードの区分を知っておけば、家族が介護食を食べる人の状態を把握する時の目安にもなると思います」

また、寄國さんに介護食を作る時のポイントを伺いました。

「普段の食事とは別に介護食を作る手間を減らすためにも、なるべく家族と同じ食事であるといいですね。介護食にする場合は、刺激物を減らしたり軟らかく煮たり、食べる時に細かく切るなどの工夫をすると食べやすくなります。

また、食事は五感で味わうものでもあるので、柑橘系のものや甘いものを使って味や香りをつけるのも喜ばれます。見た目や香り、食感に少し工夫を加えることで、食欲をそそる効果もあります。さらに、食事中には『よく噛んで食べてね』など、家族が誘導しながら噛む力を保てるようにコミュニケーションをとるといいですね」(寄國揚こさん)

噛む力を維持するための調理法、レシピとは?

では、実際に家族でおいしく食べられる介護食にはどのようなものがあるでしょうか。今回は、調理法を工夫することで、健康な人から噛む力が弱ってきている人まで楽しめるレシピを寄國さんにご紹介いただきました。

大根のステーキ

「噛む介護食」とは?食感を残して噛む力を維持する調理法をご紹介

材料:2人分

  • 大根(輪切り)……3cm程度にカットしたものを4枚
  • ドライプルーン……3個
  • みそ……大さじ2
  • 甘酒……大さじ2
  • 大根の葉(ゆでたもの)・ゆず皮(細切り)…適量

作り方

  • 1:大根は両面に格子状に切り込みを入れる。介護食の場合は皮をむく
  • 2:フライパンを熱し油をひいて(分量外)大根の両面を焼く
  • 3:大根の半分の高さくらいまでフライパンに水を注ぎ、軟らかくなるまで蒸し焼きにする
  • 4:ドライプルーンは刻んですり鉢でペースト状にし、みそと甘酒を加えてよくすり合わせる
  • 5:皿に大根を盛り付け、大根の葉・ゆず皮をふり、4で作ったみそを乗せていただく

大根のステーキはお箸で簡単にほぐすことができるので、噛む力が弱っている人にも人気のレシピだそうです。焦げ目をつけることによって、見た目にも食欲をそそる効果があります。 また、プルーンは鉄分や食物繊維が豊富で、甘酒は『飲む点滴』といわれるほど栄養価が高い食品。健康面でもおすすめのレシピです。

ゴボウの梅煮

「噛む介護食」とは?食感を残して噛む力を維持する調理法をご紹介

材料:2人分

  • ゴボウ……1本
  • 梅干し……1個
  • 水……適量

作り方

  • 1:ゴボウはよく洗い、麺棒などで叩き、食べやすい長さにカットする
  • 2:鍋を熱し、ゴボウを乾いりする。焦げつきそうになったら、少量の水を加えて青臭さをとばす。甘い香りがしてきたら、ひたひたに水を加え、梅干しも加えて煮る
  • 3:水が少なくなったら足しながら、軟らかくなるまで煮る

ゴボウはどうしても『かたい』というイメージがあるので、介護食としては敬遠されがちな食材。しかし麺棒で叩くことによって、煮た時に全体が軟らかくなり、とても食べやすくなります。
また、梅干しを加えて煮ることで、酸味によって唾液の分泌を促す効果もあります。

介護食だからこそ、食べる楽しみを感じてもらえる一工夫を

介護食だからこそ、食べる楽しみを感じてもらえる一工夫を

今回は介護をする家族にとって負担が少なく、みんなでおいしく食べられる介護食をご紹介しました。「軟らかく飲込みやすいもの」といっても、まだ味覚の発達していない赤ちゃんが食べる離乳食と違い、介護食を食べるのは、これまでおいしいものを食べ、自分の好き嫌いがわかっている大人です。介護が必要になったからといって、急にこれまでと全く異なる食感や味付けにすると、抵抗を感じ食が進まなくなるということもあります。体の状態に合わせ味付けや軟らかさを調整することが一番大切ですが、介護を必要とするようになってからも、できるだけ長い間噛む力を維持できるよう、「食べる楽しみ」を持ってもらうことも忘れてはいけません。
「噛む力を維持することで健康寿命が延び、介護度が上がるのを遅らせることもできるようになります」と話す寄國さん。ユニバーサルデザインフードの区分も参考にしながら、噛む力に合わせて食事を工夫してみてはいかがでしょうか。

取材協力
寄國 揚こ(よりくに ようこ)さん
東京都出身/外資デザイン会社、大手広告代理店に25年勤め、過酷な状況の中でも常にベストな状態で仕事に臨むためには、食生活の管理が必要と思い、マクロビオティックの思想に出会う。2011年にマクロビオティックの料理家として独立。また自身の介護経験を通し、生きるための食の重要性を知り、訪問介護士・介護食士の資格も取得。すべての人に食べる喜びと、食べ物が持つ本来のチカラを届けるために、2019年4月世田谷にマクロビオティック・キッチンスペース「よりどころ」を開業。
 

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