(撮影:福尾美雪 スタイリング:池水陽子 / 台湾スイーツレシピブック)
タピオカミルクティーを筆頭としたアレンジドリンクの大流行で、今注目が集まっている台湾スイーツ。台湾スイーツの書籍を出版し、年に数回は訪台するという料理研究家の若山曜子さんに、台湾の食とスイーツの特色や魅力についてお聞きしました。
「2013年から夫が台湾に駐在したのをきっかけに、日本と台湾を行き来することを2年ほど続けました。台湾料理っておいしいものが本当に多いんですよね。屋台や小皿料理が多いから、一人で何軒もハシゴできるし友達とシェアしても楽しい。食べ歩きにぴったりな国だと思います」(若山曜子さん)
食材が豊富で美味しいものだらけの台湾。特に若山さんがはまってしまったのが、台湾のスイーツなんだそうです。
「南国ですから、まずフルーツの種類がたくさんある。屋台に行けばその場でスライスした旬のフレッシュフルーツが手軽に食べられます。南の方ではカカオ豆も栽培できるので、台湾産カカオで作るチョコレートもあるんですよ。また東方美人などのお茶も有名ですが、実はコーヒーもすごくおいしくて、カフェのコーヒーのレベルはもしかしたら東京より高いかもしれません。それでいて、漢方の食材を使った体に優しい薬膳スイーツもある。食材に恵まれているからこそ、お菓子のバリエーションも幅広いですね」(若山曜子さん)
若山先生が気づいた台湾スイーツの魅力は「甘さ控えめ」なこと。
「台湾のスイーツって、こってり甘いお菓子はそんなにないんですよ。和菓子の方がずっと甘いくらい。その代わり、ごはんのおかずは甘辛味が多いんですね。そのせいかわかりませんが、スイーツ系は他の国と比べても甘さが控えめな印象です」(若山曜子さん)
「現地の人気洋菓子店を訪れた際に、北欧で修行を積んだパティシエさんとお話する機会がありました。『台湾で洋菓子を食べてもらうために工夫していることはありますか?』と私が尋ねると、『まずは砂糖の量を減らすことです』という答えが真っ先に返ってきました。台湾の人たちは、はっきりとした強い甘さのお菓子をあまり好まないそうなんですね。とはいえ、ケーキなどの洋菓子は砂糖の量が少ないとケーキが膨らまなかったりする。その点の工夫が難しいと、パティシエさんはおっしゃっていました」(若山曜子さん)
ところで、日本で大流行したタピオカミルクティーですが、台湾では昔からある 「定番のおやつ」だそうですね。
「タピオカのアレンジドリンクを出す店は、台湾には昔からよくあったんですよ。老舗もチェーン店も。ですから、ここ最近の日本の熱狂的なタピオカブームには驚きました。ただ、これが一過性のブームとして消え去ってしまうのはもったいないので、ドリンクの選択肢のひとつとして日本でも定着してほしいなと思います」(若山曜子さん)
食材が豊富でお菓子のバリエーションが幅広いこと。漢方の食材を使ったヘルシー志向のスイーツが多いこと。甘さが控えめなこと。そんな台湾スイーツの魅力を踏まえた上で、最近の現地でのブームについても聞いてみました。
「最近は台湾の流行が大きな時間差なく日本に入ってきている気がします。ですから、台湾人が食べたい最先端のスイーツは、東京で流行しているスイーツとほぼ変わらない。現地に遊びに行くと、いつも友達が一番人気の洋菓子店へ連れて行ってくれるんですね。そうすると、日本人の私が食べたい王道の台湾スイーツとは微妙にズレてしまうのが最近の悩みですね(笑)」(若山曜子さん)
一方で、最近は伝統菓子への『原点回帰』ブームも見られるそうです。
「パイナップルケーキの原型みたいな地方のお菓子が急にブレイクしたり、老舗店の三代目店主が伝統のお菓子の形をおしゃれにアレンジして再評価されたり、ということが実際にありました。洋菓子の流行を追いかけるばかりではなく、台湾独自の伝統菓子の良さを見直す。スイーツの世界では、そういう『原点回帰』の傾向があるように思います」(若山曜子さん)
台湾スイーツについて知れば知るほど、自分でも作って食べてみたくなるもの。身近に手に入る材料で台湾スイーツが作れる『台湾スイーツレシピブック』を出版された若山先生に、とびきりおいしい台湾スイーツレシピを教えていただきました。
地瓜球(ディグァチィゥ)
揚げたては絶品!もっちり香ばしいサツマイモの揚げ団子
揚げ団子といえば、台湾の屋台でよく見かける定番おやつ。プレーンな揚げ団子は、スーパーなどで売られている焼き芋を使えば、3ステップで簡単にできます。紫芋の揚げ団子は、水を加えるとマッシュポテトのようにふやける手軽な紫芋フレークを使用。油を吸っているのは表面だけなので、見た目より軽い食感でペロッと食べられます!
材料
(プレーン団子)
(紫芋団子)
(A)
※焼き芋ではなく生のサツマイモを使う場合は、サツマイモを洗い、濡れたままアルミホイルで包んで、予熱なしで180℃のオーブンで50分ほど焼いたものを使ってください。
〈作り方のポイント〉
芋の品種によって糖度が違うため、丸めやすくなるように片栗粉の量は調整してください。ベチャベチャだったら片栗粉を足し、逆にぽそぽそしていたら片栗粉を控えめに。
若山先生からの一言コメント
「サツマイモそのものの甘さを活かすために、砂糖は控えめにして現地の味に近づけています。お好みでチーズやチョコレートを生地に加えてもおいしいですよ」
杏仁スープ
甘さと香りにほっと癒やされるデザートスープ
杏仁の優しい香りと甘みにほっとする、温かいデザートスープです。漢方生薬にも用いられる杏仁は、アーモンドに似たコクと深みがある南杏仁、華やかな香りを持つ北杏仁の2種類を使っています。最後に牛乳(もしくは豆乳)を加えることで、杏仁独特のほのかな苦味が消え、まろやかな風味に変わります。中華揚げパンを浸しながら召し上がれ。
材料
※杏仁は市販の杏仁霜同量でも代用可能です。その場合は、砂糖が入っているので気持ち砂糖を控えめにしてください。
〈作り方のポイント〉
添えている中華揚げパンが手に入らなければ、カリッと焼いたバケットや、揚げ焼きした食パンの耳でもOK。中華揚げパンのレシピは『台湾スイーツレシピブック』に掲載されていますので、興味が湧いた方はぜひ作ってみてください。
若山先生からの一言コメント
「杏仁は南杏仁と北杏仁では、見た目も香りも違います。漢方の世界では、「杏仁」には咳止めや肌を潤す美容効果があるといわれています。乾燥が気になる季節にぴったりの、体に優しいデザートです」
(撮影:福尾美雪 スタイリング:池水陽子 / 台湾スイーツレシピブック)
優しい甘さとおいしさに、癒やしと元気をもらえる台湾スイーツの世界、いかがでしたか?最近は日本でも台湾スイーツの専門店が増えていますが、自宅で手軽に味わえたらもっと台湾が身近に感じられるはず。いろんな台湾スイーツを食べ比べしながら、お気に入りを見つけてくださいね。