人気料理家として多くのメディアや教室で活躍している真藤舞衣子さん。京都とフランスでご自身の軸となる食の基礎を身につけた後、都内の菓子店勤務を経て、赤坂でカフェ&サロン「my-an」のオーナーに。女性のヘルシーな美しさをサポートする食生活を提案しています。
真藤さんの料理が多くのファンに愛される理由は何より、体に優しいこと。特にお祖母さまの代から受け継がれた昔ながらの発酵食の知恵を受け継ぎ、日本人の体と舌に合う自家製の「麹」をアレンジしたレシピの数々が大評判なんだそうです。そんな真藤さんに、まずは真藤さんが発酵食のスペシャリストとして活躍するようになったルーツを教えていただきました。
「実は、祖母がかなりの『健康食マニア』だったんです(笑)。その影響で、麹を使った発酵食品は子どもの頃から身近にありました。昔の女性らしくこまめな祖母が作る自家製の発酵食品をふんだんに使った家庭料理は、どれも美味しかった。そんなわけで祖母や母の手伝いをするうちに、自然と作り方を覚えていきました」(真藤舞衣子さん)
家庭環境に恵まれ、料理の基礎を身につけた真藤さん。毎日手をかけて料理を作る習慣は、健康のためでもあるけれど、実は親子三代、筋金入りの「食いしん坊気質」が影響しているのだとか。
「皆、『一食一食を無駄にしたくない。本物の美味しいものが食べたい!』と思う気持ちが強かったのは、根っからの食いしん坊家系だったから(笑)。そんな環境で育ったことで、小さい頃から料理が大好きになりました。中でも私の料理熱を一気に高めたのは意外にも『フランス菓子』だったんです。古典的なレシピで作る素朴な味のお菓子がとても美味しくて、フランスへ渡り、お菓子を極めたい!と思って。
でも、いざ海外暮らしをイメージしてみると、実は日本の文化を深く知らないことに気付いたんです。私はフランスで、日本の食文化をきちんと説明できるだけの知識を持っているだろうか?そう考えると、海外へ行く前に、まず自国の食文化をもっと掘り下げたくなりました。そこから180度方向転換(笑)。京都の禅寺にお世話になるきっかけがあり、畑仕事をしながら、日本料理のルーツを改めて学ぶことにしたんです。京都には、有名な大徳寺味噌や納豆、乳酸発酵の知恵を生かしたお漬物など、独特な発酵食の文化がありますし、地のものを使う食生活も非常に魅力的。毎日刺激と学びのある日々をすごしました」(真藤舞衣子さん)
京都で昔ながらの和の暮らしと向き合う生活を送る中で、改めて発酵食品の奥深さを見つめ直した真藤さん。その後フランスへ渡ってからも、日本独自の食生活はますます彼女のバックボーンとしてかけがえのない存在になっていきます。
「フランスへ渡り本格的にお菓子漬けの日々を送り、今まで自分にとってあたりまえだった和食の世界から離れたことで、逆に日本食や発酵食品の素晴らしさを改めて認識しました。帰国した後は、祖母の代から受け継いだ優しい家庭料理の味をベースにしながら、私ならではの発酵料理を作り、ご紹介する活動を続けています」(真藤舞衣子さん)
「和と洋の食文化を柔軟にかけあわせ、発酵のエッセンスを加えた料理」――。真藤さんの作り出す独自の世界観が、世代や性別を問わず食いしん坊の心をつかんでいるんですね。次は、具体的に真藤さんの麹使いの極意に迫ります。
「『麹』は、簡単に言うと米や麦、豆などの穀物に、麹菌を繁殖させたもの。それぞれ米麹、麦麹、豆麹と言われ、用途によって使い分けます。例えば、蒸した大豆に好みの麹を加えれば味噌ができますし、米麹に水分と温度を加えれば甘麹(甘酒)になります。麹は、さまざまな食材を発酵の力で美味しく変化させ、さらに保存性も高めてくれる『タネ』のようなものと考えていいかもしれませんね。味噌や甘酒を作るのはちょっとハードルが高いという人はまず、自家製の塩麹を作ってみることをおすすめしています。塩麹は、米麹に塩をなじませて熟成発酵させた調味料。塩に麹が加わることで独特のうまみ成分が増し、たくさんの調味料を使わなくても料理が美味しく仕上がるんですよ」(真藤舞衣子さん)
麹初心者はまず「塩麹」を作ってみるのがおすすめという真藤さん。塩と同じようにあらゆる料理に使える上、塩よりもうまみ成分がたっぷりだから減塩&美味しさアップにも役立つ魔法のような調味料だそうです。今回は特別に、基本の塩麹の作り方を教わりました。
真藤さん直伝!基本の塩麹レシピ
材料
作り方
※冷蔵庫内で半年くらい保存可能
「塩麹は、麹のうまみが凝縮した万能調味料。例えば切った野菜とさっと和えたり、焼き魚や肉のグリルに添えるだけでも立派なごちそうになります。市販の調味料をあれこれ揃えなくてもよくなるので、料理が苦手な人ほど常備しておくと便利かもしれませんね。塩麹に慣れたら、醤油に麦麹を仕込んだ「醤油麹」や、スイーツにも使える「甘麹」作りにチャレンジしてみるのもおすすめ。我が家の台所では、甘麹で作った自家製ケチャップや、小豆に麹を加えた自家製納豆など、毎日麹が食卓に登場していますよ。麹や発酵食品を摂る食生活を続けているせいか、あまり風邪をひくこともなく、肌の調子も良い気がします。麹は日本の伝統的な食文化ですし、日本人の体に合っているのかもしれませんね」(真藤舞衣子さん)
真藤さんの麹料理が大人気なのは、その多彩なアレンジにも理由があるんです。和食にとらわれず、発酵食品の可能性を提案する真藤さんに、麹を使った簡単で美味しいレシピを教えていただきました。テーブルに並べれば思わず「美味しそう!」と歓声があがりそう。
きゅうりとアボカド、ほたてのヨーグルトハーブサラダ
材料
作り方
(真藤さんからのおすすめポイント)
塩麹はもちろん、ヨーグルトも発酵食品。ハーブをたっぷり食べられるのも嬉しいですね。
しいたけのファルシ
材料(6つ分)
※写真は、倍量です。
作り方
(真藤さんからのおすすめポイント)
お肉を使わないけれど食べ応え満点。塩麹とチーズの相性って、とてもいいんですよ。コロっとした見た目がかわいく、おもてなしの前菜にもおすすめです。
発酵オートミールスープ
材料(2人前)
※写真は、6名分です。
作り方
(真藤さんからのおすすめポイント)
冷蔵庫に残った野菜を自由にアレンジして作れるお助けレシピ。自家製の乳酸白菜や乳酸キャベツ(ザワークラウト)も、発酵パワーがたっぷりです。なければ市販のものでもOK。好みでクリームっぽく豆乳などを入れても美味しいです。
「麹などの発酵食品は、一度にたくさん摂るというよりも、毎食少しずつ、続けて食べるのがおすすめです。冷蔵庫に発酵食品が常備されていて、それが美味しかったら、自然と毎日食べたくなるはず。塩麹を始めとした麹料理のアレンジは何かと『漬け込み』に注目されがちですが、私はもっと手軽に、和えものやドレッシングなどに活用するのが好きですね。じっくり自炊する時間がない時でも、市販のお惣菜や外食に頼らず美味しいものを食べたいし、忙しい時ほど食事は大切にしたい。そんな時に自家製麹があると、本当に助かるんです」(真藤舞衣子さん)
真藤さんの料理教室には「麹のおかげで、食材のうまみや持ち味を楽しむ料理のレパートリーが増えた」という生徒さんが多く通っているのだそう。知れば知るほど奥深い麹の世界に魅了され、どんどん料理上手になっていくのだそうですよ。
「麹は『食材の美味しさを引き出してくれる』調味料でもありますから、麹を使い始めると、いろんな料理を試してみたくなるんです。発酵の力を借りて、一食一食を大切にしたいと思う人がもっと増えたら、嬉しいですね」(真藤舞衣子さん)