今やすっかり浸透した「副業」。副業を認めている会社も多くなり、実際に副業を考えている人も増えてきました。以前は、メインの仕事の退勤後や休日にアルバイトなどをして副収入を得るというイメージが強かった副業も、今では自分の強みを活かして稼ぐ人が増えてきています。副業やフリーランスで仕事をしようと思っている人にとって気になるのが、時間とお金の管理です。中でも、今回はお金の管理にスポットをあてて詳しくみてみましょう。
一口に「お金」といっても、副業やフリーランスで仕事を始めるときの「お金」にはさまざまな役割があります。例えば、売上金の管理や毎日の経費の支払い、仕入れなどの請求に対する振込み、そして毎年の確定申告による所得税の支払いや還付などです。
会社員であれば会社が計算した給与を受取るだけですが、副業・フリーランスとして働く場合はそうはいきません。お金に関する業務は大きく次の3つに分かれます。
中でも重要なのが、①と②です。ここをしっかりしておかないと、確定申告書の作成もできません。そこで、まずは①と②について具体的にどのようなことに注意しておけば良いのかをみていきましょう。
副業・フリーランスとして働くときに、お金に関することで最も気になるのが「税金」について、ではないでしょうか。税金がどのくらいかかるのかということは、誰もが気になるポイントです。
副業やフリーランスとして働く場合は確定申告をすることで納税する所得税の計算を行います。しかし、確定申告書にいきなり数字を記入するわけではありません。確定申告書を作成するためには、毎月の売上や経費の集計が欠かせませんし、その方法について知っておかなければなりません。
まずは、日々の売上の管理からです。
副業・フリーランスのお金の受取り方には大きく分けて、現金で受取る方法と、振込みで受取る方法の2つがあります。
①現金で受取る方法
この場合は、飲食店などの店舗を構えて行う商売が主なので、副業やフリーランスではあまりみられないケースでしょう。それでも日払いの仕事などで、その場でお金を受取ることもあるかもしれません。現金で売上を受取ると、そのまま財布に入れて売上金として記録することを忘れてしまいがちです。このようなことを防ぐために、お金を受取った相手に領収書を渡して、手元にはその控えを持っておきましょう。市販の領収書は複写式になっているので、相手に渡した領収書と同じ内容を手元で確認できるようになっています。
記録を残したくないから現金で受取ってそのままポケットに……などということは脱税となってしまいますので、間違っても行わないようにしましょう。
②振込みで受取る方法
もう一つのお金の受取り方が振込みです。この場合は、相手に請求書を送って振込んでもらう方法と、相手が支払額を計算して振込む金額を通知してくる方法の2パターンがあります。特に、こちらから請求書を送付するパターンは、請求書の出し忘れに気を付けましょう。会社によっては、請求書の送付期限を設けているところもあります。
経費については、レシートや受取った請求書などの金額を合計するだけで大丈夫です。よく、「経費にするには領収書が必要」といわれますが、書類のタイトルは「領収書」でなくても、支払った内容や相手先、支払日が確認できればどんな書類でも問題ありません。
気になるのが、「どの範囲まで経費にすることができるのか」ということでしょう。この点については、仕事によりけりなので一概に答えはありませんが、「その仕事を行うからこそ支出したものであれば経費になる」というのが基本的な考え方です。 また、できれば売上の入金や経費の支払いをするための口座は、プライベートの口座と分けておきましょう。仕事用の口座を明確に分けておくことで、売上や経費の計上漏れを防ぐことにもつながります。
集計した売上や経費は必ず毎月記録しましょう。毎月記録を行うことで、どのくらい稼いだのか把握できますし、書類の紛失も防げます。専用の会計ソフトの使用がおすすめです。多くの会計ソフトには、そのまま確定申告書を作成してくれる機能まで付いているので、確定申告書の作成の手間も省けます。副業やフリーランスのための簡易なものであれば、年間1万円程度で利用可能なものもあります。「毎月〇日に前月分をまとめて記録する」といったように記録する日を決めておくと良いでしょう。
売上や経費を毎月集計して記録していくことで、確定申告書の作成時期になっても慌てずに済みます。さらにメリットはそれだけではありません。しっかりと数字の記録(これを「記帳」といいます)を行うことを前提に、税務署に青色申告の承認申請ができます。青色申告とは、簡単に言えば、しっかりと記帳した数字に基づいて確定申告書を作成することです。
青色申告を行うことで、経費とは別に最大で65万円、少なくとも10万円を確定申告する所得から引くことができます(※)。
また、講師業やデザイナーなどの仕事であれば、稼いだ売上から一部を天引きされて振込まれることがあります。これを所得税の源泉徴収といいます。この源泉徴収された所得税も、確定申告を行うことで還付を受けられることがあります。どのくらい源泉徴収されているかということも、毎月の記帳をしっかりと行っておけば把握できますし、確定申告の時に漏れる心配もありません。
※2020年より青色申告特別控除額が変更されます。引き続き65万円の控除を受けるためには、①e-Taxによる申告(インターネットを利用した電子申告)、②電子帳簿保存(税務署に申請書を提出し、帳簿を電子データのまま保存する制度)のどちらかを行う必要があります。
このように、副業やフリーランスで働くことには、「自分のやりたいことで稼ぐことができる」という魅力があります。しかし、仕事で輝いている裏では、どんな人であってもお金の管理は欠かせません。この点をおろそかにして、いくら稼いだのか把握しないまま確定申告の時期を迎えることは、「どのくらい税金がかかるのか分からない……」「確定申告の時期に大慌て!」ということにもなりかねません。仕事が充実すればするほど、何かと後回しになりがちなお金の管理業務。毎月しっかりと記帳を行うことで、どのくらい利益を上げられたのかが分かり、仕事の励みにもなることでしょう。