今回、お話を伺ったのは、“コロリアーティスト(コロリアージュ+アーティスト)”の肩書で『大人の塗り絵』の魅力を伝えている菅原志希(すがわらしき)さん。聞けば、「大人の塗り絵は始めやすい趣味」なのだそうです。
「大がかりな道具を用意したり、どこかへ出掛けたりする必要はなく、思い立ったらいつでも楽しめるのが『大人の塗り絵』。仕事や子育てで忙しく過ごしている方もスキマ時間にできますし、集中して塗っていると呼吸が深くなってリラックスできるので、ストレス解消にも役立つと思います」(菅原志希さん)
確かに、着色する画材と下絵だけ用意すれば始められますし、手が汚れない気軽さも嬉しいですね。作品を一度で完成させず、気が向いた時に少しずつ塗っていくのも、おうち時間の趣味にぴったりです。 さらに菅原さんによれば、「下絵がまとめられた塗り絵ブックもさまざまなものが売られているので、一冊あるとよい」とか。Web上で下絵を無料でダウンロードできるサイトもあるので、続けられるか心配な方は試しに1枚塗ってみるのもよいでしょう。
続いて菅原さんに教えてもらったのは、『大人の塗り絵』を楽しむ道具。一体、何が必要でどのように選ぶとよいのでしょうか?
「私が着色でよく使うのは色鉛筆。ドイツ製で発色が良く、塗り心地がなめらかな120色セットなど、数種類を愛用していますが、最初のうちは12色セットでも十分です。作品が増えていくにつれて欲しい色も増えてくるので、それから買い足していくとよいと思います。面積が広い個所は色鉛筆だと大変なので、背景などを塗る場合はポスターカラーのセットがおすすめ。色ムラができにくいので、キレイに仕上げられますよ」(菅原志希さん)
では、下絵を選ぶコツはあるのでしょうか?
「先ほどお話しした塗り絵ブックは一冊にまとめられているので、作品が折れ曲がったり散乱したりしにくいほか、後から見返して楽しむ時にも扱いやすいですよ。繊細な絵柄も多いので“難しそう”と思うかもしれませんが、細かいほうがムラなく塗れるので、初心者でもキレイに仕上げられるはず。モチーフは花やスイーツ、風景などさまざまありますが、自分が好きなものを選ぶのが一番ワクワクしながら塗れると思います」(菅原志希さん)
このほか、消しゴムや鉛筆削り、下敷きなどもあるとよいとか。
「はみ出た箇所などを修正しやすいペンタイプの消しゴムは、特に細かな下絵を塗る時に重宝します。鉛筆削りは携帯タイプでもよいですが、色鉛筆の先端まで尖らせたいなら据え置きタイプがおすすめ。また、塗り絵ブックは画材によっては裏写りしたり、力を入れすぎてよれてしまったりするので、下敷きを使うとよいでしょう。下敷きは、お気に入りのものを3枚程度用意しておくと、気分によって選べてよいですよ」(菅原志希さん)
菅原さんによると、『大人の塗り絵』にルールはなく、自由に塗って楽しむのがよいそうです。
「塗り始める箇所も、好きなところからで大丈夫。もし、何色にするかで悩むなら、例えばショートケーキの絵ならイチゴといったように、イメージしやすい部分から塗るとよいでしょう。さらに、当たり前ではない色で塗ってみても楽しいもの。例えば、フルーツを青系色だけ、野菜を赤系色だけで塗り分けるなど、常識にとらわれない色で塗れるのも醍醐味だと思います」(菅原志希さん)
これは、どうすれば楽しく塗り続けられるかを模索した結果、思い至ったことだとか。
「始めたころはさまざまな色で闇雲に塗っていたんですが、そのうち飽きてしまって。楽しく塗り続けるにはどうすればよいかを考えていたら、1枚ずつの下絵にテーマを決めることを思いついたんです。青い柑橘類や赤いレタスなんて自然にはないものですが、“今までに見たことのない世界を体感したい”と思って、色使いでも遊ぶようになりました。そうやってオリジナリティを出していくのも、楽しく塗るコツだと思います」(菅原志希さん)
『大人の塗り絵』を自由に楽しむ菅原さんの作品を拝見すると、とてもユニーク。海外の香水ボトルが並んだ下絵に抹茶や桜など和スイーツを思わせる色を合わせたり、下絵に描かれたサメをスイカに見立て、緑や赤で塗り分けて種まで書き込んだり……。実に自由に楽しんでいて、見ている側も胸が躍る作品がいっぱいです。
その最たるものとも言えるのが、菅原さんが「コラボ塗り」と呼ぶ塗り方。ロマンティックな下絵に商品パッケージを組み合わせるという、まさに「今まで見たことのない世界」が表現された作品に仕上がっています。
「カップ焼きそばのカラフルなパッケージを見て、商品ロゴまで入れ込んだら楽しいかもと思いついたんです。ロゴの型紙を作り、下絵に下書きして塗っていく工程は、とにかく楽しかったのを覚えています。私は昔から“変わっている”と言われていて、それがコンプレックスだったんですが、こうした作品をブログやSNSにアップすると見てもらえる。人と違った感性や考え方も、今では財産だと思っています」(菅原志希さん)
菅原さん独自の手法、コラボ塗り。手順としては、まずパソコン画面に商品ロゴを表示させ、薄い紙を当てて写し取ります。写し取ったロゴをハサミで切り抜いたものが、型紙。これを下絵の好きな場所に当て、輪郭を鉛筆でなぞって下書きしたら、あとは思いのままに塗っていくだけです。
こうしたユニークな作品を仕上げるには、「完成形がどうなるかを想像しておくことが大切」と、菅原さん。
「色使いや配色を想像したり、下絵を活かすなら何を組み込むかを考えたりと、頭の中で設計図を思い描いてから塗っています。渦巻く葉っぱが描かれた下絵なら、ナルトに見立てて渦をピンクにしてみることも。それでも、“これはいい!”と思ってSNSにアップしても反応が良くなかったり、逆にイマイチと思っても好評だったりする時もあるんですが(笑)」(菅原志希さん)
聞けば聞くほど興味が湧いてくる『大人の塗り絵』。菅原さんも「関心があるなら、ぜひ始めていただきたい」と言います。
「塗り絵は子どものころにしかしたことがない、という方もいるかもしれませんが、始めると童心に返って癒されますし、どんどん引き込まれていくはず。デジタル時代だからこそ、紙に描かれたものと向き合い、自分の手を動かす時間はとても大切だとも思います。塗り絵ブックは、途中で飽きても何年か後に再開したり、世代を越えて楽しんだりできるので、手元に1冊あってもよいのではないでしょうか」(菅原志希さん)
自己流を脱却して一段上の表現力を身につけたい方は、講座を受けてみるのも一つの手段かもしれません。ユーキャンなら画材やテキストなど必要なものが一式セットで、届いてすぐに楽しめるのでおすすめです。