コロナで自粛ムードが広がり、外出時にはマスクを着け、人と人との距離に配慮する……といった毎日。人によっては、あたかも出口が見えないトンネルに入れられたように感じるかもしれません。それは、「2011年3月11日の東日本大震災からしばらく経った頃」までの状況とも類似点があります。
このような大変な状況では、気持ちが普段より落ち込むのは当然ですが、一部の方は、その気持ちの落ち込みがかなり深刻化して、うつ病の診断が付くレベルになっている可能性もあります。今回取り上げる「コロナうつ」は、そうした気持ちの落ち込みがかなり深刻化して、うつ病のレベルになった状況を指す言葉として話を進めていきます。
まず、「コロナうつ」の症状に関しては、実は通常のうつ病とあまり違いはないことをお伝えしておきます。その理由ですが、そもそもうつ病と診断が付く状況は大まかに言えば「うつ病を特徴付ける、いくつかの問題が出ている状況」です。つまりうつ病という診断名は、「それがどういうかかわりで、そうした症状が現れているのか」という背景や過程は表していません。
では、「コロナうつ」と通常のうつ病との違いとはなんでしょう。それは、今までうつ病は自分とは無縁だと思っていた方が、「コロナうつ」という言葉を通じて、「うつ病に警戒感を覚える可能性がある」といった点。そして、体質的(遺伝的)にはうつ病のリスクがそれほど高くない方でも、「うつ病を発症する可能性がある」点が挙げられます。
うつ病の要因自体は複数あります。そして、うつ病が発症する際には、そのうちのいくつかが同時にかかわってくることが一般的です。具体的には、体質的(遺伝的)にうつ病に相対的にリスクがある方が、何らかのストレス状況をきっかけに発症するパターンが大半です。
「コロナうつ」では、その引き金になりやすいストレス状況が通常よりかなり深刻になる可能性があります。もっとも、ストレス自体は私たちの日常の一部です。毎日の中で、苦手な人とのかかわり合いもあれば、仕事のプレッシャーがキツイこともあると思います。そのレベルがある一線を越えれば、必ず心身に何らかの悪影響が出てきます。
そうした一線を越えたレベルのストレスと言えば、具体的には「家族が深刻な病気になった」「生活環境が厳しくなった」「親しい方が亡くなった」などが考えられます。withコロナの現状では、コロナ感染に関連してショックな出来事がいくつか同時に、自分自身に発生する可能性もあります。その際は、体質的(遺伝的)にはうつ病のリスクがそれほど高くない方でも、うつ病を発症する可能性があります。
下記チェックリストにあるうつ病を特徴付ける問題が、複数出てきた時は要注意です。
もしも上に挙げた項目がいくつか該当して、その結果「自分の体や気持ちの状態について、本来の自分を100とした時に、現在の状態は50(半分)以下のように思える」という状況であれば、うつ病を発症している可能性があります。さらに、この状況が1週間以上持続していれば要注意です。もしその症状が原因で日常生活に普段起きないような問題やトラブルが起きている場合、うつ病の可能性をはっきりさせるためにも、一度病院で受診してみてもよいかもしれません。
そして上記の症状の他に、もしも死にたい気持ちが出ていれば、さらに要注意です。うつ病に自殺のリスクがあることは、知っておかなくてはならない、大事なポイントの一つです。これは、「コロナうつ」でも同様です。その時点でうつ病がかなり深刻化している可能性があるので、すぐにでも精神科(神経科)を受診すべき状況だと、どうか覚えておいてください。
「コロナうつ」対策の一つ目は、その要因になっているであろうストレスから自分の身を守ることです。ストレス対策には基本的なポイントが二つあります。まず、そのストレス要因に対して何とか解消できないか検討することです。例えば、仕事の量がストレスになっている場合、上司や周りの人に相談して、適切な仕事量に調整する……といった形で、ストレス要因そのものを軽減できればよいですが、実際には、そう簡単にはいかないかもしれません。
その際は、そこから受ける「ダメージ」のほうに目を向け、それをできるだけ軽減するようにしてみましょう。二つ目のポイントとして、健康的な食生活、充分な睡眠時間の確保、そして気持ちをリラックスさせるための気晴らしなどが効果的です。呼吸法やヨガなど、一般的なリラックス手法もおすすめです。
対策の二つ目は、自分に関連する情報にアンテナを高くしておき、周りの人とも意見を交わすことで、先の見通しを付けることです。コロナに関するストレスには「先が見えにくい」面が強く影響しています。実際、コロナが始まった頃の「先の見えなさ」と、半年そして1年経過した現在では状況が違い、コロナウイルスは「全く未知のウイルス」ではなくなってきています。
基本的には、「たちの悪い風邪で、リスクのある人にとっては危険だ」といった認識ができてきたり、その実態が以前より「見える」ようになったことで、コロナという単語から受けるストレスもかなり和らいできたと言えるでしょう。
しかし、コロナで一変した生活環境の先行きの見えにくさは相変わらずの現状です。そのため、情報を得ることで先の見通しが付いてくれば、今より気持ちが楽になる可能性もあります。それは同時に「コロナうつ」への対策にもなります。
そして、対策の三つ目として、先が見えない、まさにコロナの真っ只中にあるような現状では、いわゆるスピリチュアルな面にも目を向けてみましょう。例えば、しばらくご無沙汰していた近所の神社を参拝してみる、あるいはクリスチャンの方なら、日曜の礼拝に出かけてみる……といったことです。お祈りをして家に帰った時には気持ちがある程度、あるいはとても楽になることも少なくありません。こうしたことも、ぜひ「コロナうつ」への対策として、取り入れてみてください。
「コロナうつ」に注意しているつもりでも、逆効果な行動をしている場合もあります。
一つ目は言わば「間違った気晴らし」です。飲酒などもその一種で、「こんな時は酒でも飲んでいなければやっていられない……」と考え、酒量がある程度増えた方は意外に多いかもしれません。ここで釘を刺したいのは、飲酒で「気持ちが楽になる」という効果は通常一時的であるということです。過度の飲酒量がある一定期間続けば、アルコール依存症へのリスクが高まります。
同時に、アルコール依存症は、うつ病のリスク要因の一つです。言い換えれば、飲酒でその場の気持ちが楽になるので、うつ病対策をしているように見えても、長期的にはそのリスクを高めているのです。同様の注意は、ギャンブルなどに関してもそのまま当てはまります。
二つ目は、通常のうつ病対策としては効果的でも、コロナ禍では注意しなくてはいけない「外出」における行動です。具体的には、「仲間同士で楽しい時間を過ごす」などです。通常なら真っ先に推奨しますが、コロナへのリスクが相対的に高まってしまいます。コロナ感染が収まっていない現状では、自分にもし風邪症状があった場合はもちろんのこと、そのほか高齢者などリスクの高い人がその集まりの中にいる場合も、コロナの流行がはっきり収まるまで、控えたほうが良いでしょう。
そして、最後にもっとも注意しなくてはならないのは「頑張りすぎること」です。うつ病は、頑張りすぎて心がガス欠になった状態とも言える面があることを、どうか頭に置いて頑張りすぎないようにしてください。これからまだまだ続きそうなwithコロナの毎日の中で、力を抜ける時は力を抜き、「コロナうつ」には注意しながら、毎日を乗り切っていきましょう。