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2021.02.26

今、覚えておきたい!テレワーク時代のコミュニケーション術

今、覚えておきたい!テレワーク時代のコミュニケーション術

働き方が変わっても、ビジネスにおいてコミュニケーションは不可欠。むしろ今まで以上に、相手への想像力を働かせることが重要になっています。ビジネスコミュニケーションの講師を務める北條久美子さんに、テレワーク時代のコミュニケーション術を教わりました。

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仕事の基本といえば「ホウ・レン・ソウ」。テレワーク時代は?

仕事の基本といえば「ホウ・レン・ソウ」。テレワーク時代は?

このところ働き方が大きく変化したという人は多いのではないでしょうか?テレワークが一般化し、社内外を問わず会議や打ち合わせがパソコンの画面越しに行われることも普通なことになりました。しかし、働き方が急に変化した今、取引先、上司や同僚とのコミュニケーションに戸惑う人も多いようです。

今回お話をうかがった北條久美子さんは、キャリアカウンセラー・研修講師として年間約2,500人へセミナーやカウンセリングを行っています。働き方が急激に変わった今、ビジネスマナーにおける変化と、変わらず大切にすべきコミュニケーションのポイントについて教えていただきました。

「毎年多くの社員研修やキャリアカウンセリングを対面形式で行ってきましたが、今年は研修のほとんどがオンライン形式になりました。このようにテレワークが増える中、企業からの相談で特に多いのが、テレワーク中のコミュニケーションです。今までは机を並べ、『今は忙しそうだな』『プロジェクトが成功してほっとしているな』と様子が手にとるようにわかりましたが、それぞれ個別に自宅で仕事をしているので、それがわかりづらくなってしまったのです。特に若手社員は、仕事の基本である『ホウ・レン・ソウ』を徹底したくても、タイミングを見失ってしまっている場合があります。2020年4月に入社した新入社員はほとんど会社で仕事をした経験がなく、コミュニケーションのベースがありません。たとえチャットであっても、どんな人かもわからない先輩に声をかけて質問をするのは勇気がいりますよね」(北條久美子さん)

新入社員でなくとも、戸惑いがちなテレワークの「ホウ・レン・ソウ」。まずは基本をおさらいしながら、確認していきましょう。

●ホウ=報告(事実+意見)

「報告」とは、指示を受けた案件を実行し、指示者に成果を伝えること。実行する際にどう感じたか、何を学んだかも添えると良いでしょう。上司や先輩に相談をしたときは、どんな小さなことでも「報告」をすると好感を持たれます。

<テレワークの場合の注意点>
自分の意見や遂行中に感じた「意見」を忘れがちです。上司はオンラインでの報告から評価をしなければならないので、しっかりと考えを述べて成長ぶりをアピールしましょう。

●レン=連絡(事実のみ)

「連絡」とは、情報を伝えること。会議についての事柄や休暇の取得など幅広く、個人の考えや意見は含まれません。内容よりもスピード感やわかりやすさ、適切なツール選び(口頭、メモ、メール、チャット、電話など)が重視されます。

<テレワークの場合の注意点>
相手の様子がわからないので、特にツール選びが重要です。例えば、急ぎ、かつ込み入った説明が必要ならさっと電話をかける、添付の文書を読んでもらいたい場合はメールを選ぶなど、内容や目的に合わせて使い分けましょう。相手の「好み」のツールを使うのもよいでしょう。

●ソウ=相談(事実+意見+質問)

「相談」とは、物事の判断に迷った場合に経験豊富な先輩や上司に相談すること。しかし、忙しい先輩や上司に質問だけ持ちかけるのはNG。ただ意見を求めるのではなく、自分の意見を用意しておきましょう。上司がイエス・ノーで答えやすくなるだけでなく、考えることで自分の成長にもつながります。

<テレワークの場合の注意点>
相談は相手の時間を長めにもらう場合もあるので、タイミングを図るのが重要です。状況を説明するのが難しければ、メール・チャットにこだわらず、電話やオンラインミーティングの時間をもらってもいいでしょう。その場合は事前にチャットで時間をもらう「アポイント」をとることを忘れずに。

このように、基本的な周囲の人たちへの気配りは変わりませんが、テレワークの場合は顔が見えない分、今まで以上に想像力を働かせることが大切です。

テレワーク時代のコミュニケーション術

パソコンでのコミュニケーションの機会が増えた現在、具体的にはどのようなことに注意すればいいのでしょう。

「具体的にはこれまでの基本的なマナーと変わりませんが、オンラインでの打ち合わせや会議では、実際に対面していないからこそ注意しなければならないことがいくつかあります。『これがマナー』という決まりがあるわけではないのですが、企業や経営者とのミーティングやセミナーの中で出てきた実例や注意点をご紹介します」(北條久美子さん)

今、覚えておきたい!テレワーク時代のコミュニケーション術

●オンライン会議/打ち合わせ

  • 身だしなみは、自然できちんとした印象に。

「テレワークが始まった当初は、特に営業職などで、ジャケットまで着用している人もいましたが、自宅にいてそれは不自然です。Tシャツではラフすぎますが、清潔感のあるシャツやカットソーを身につけましょう。女性は眉・チーク・リップ程度の軽いメイクを。画面越しなので、少し濃いめの色を使ってもいいと思います。対面とは違うメイクをすれば気分転換にもなりますよ」(北條久美子さん)

  • 言葉のかぶりを避ける話し方をする。

「3人以上のオンラインミーティングの場合は、特に話し方に注意が必要です。発言をするときには『一つ質問があるのですがよろしいですか?』などと声をかけ、話し終えたら『以上です』と締めましょう。誰かが話しているときに割り込むのはNGです。また、話すときは相手が聞き取りやすいよう、いつもより少し声を張って。自宅からオンラインミーティングに参加するときは、生活音が入らないよう、発言するとき以外はマイクをオフにするなど気配りをしましょう」(北條久美子さん)

  • リアクションを丁寧に。

「『はい』という返答のリアクションは、オンラインでは声を拾ってしまいます。話に相づちを打つ場合には、声には出さず、大きくうなずく、興味深かったら目を見開くなど、いつもより少しオーバーリアクションを心がけると良いと思います」(北條久美子さん)

  • カメラを凝視しすぎない。

「じっとカメラを見ていると、少し怖い印象に感じてしまうことも。ただ、まったく見ないのも不自然なので、ときどき視線を送りましょう」(北條久美子さん)

  • 段取りしてくれた人にお礼を。

「ミーティングの最初と最後には、主催者に『今日はご用意をありがとうございます』など一言お礼を。自分がセッティングした場合は『参加してくださってありがとうございます』とひと声かけると、心のこもったコミュニケーションをすることができます」(北條久美子さん)

  • 雑談もする。

「相談を受けることが多いのが、実は雑談不足。特に上司側から、『部下のやる気や心身の状態がつかみにくい』『新企画が生まれにくい』といった相談が増えています。特に新人とは雑談がないことで相手の人柄がわかりにくく、仕事の相談がしにくくなっているとも聞きます。オンラインでも最初と最後には仕事以外の話を少しして、コミュニケーションを楽しんでくださいね」(北條久美子さん)

今、覚えておきたい!テレワーク時代のコミュニケーション術

●メールやチャット

  • 自分は即レスを心がけ、相手には期待しない。

「メールには以前に比べてかなり早いレスポンスが期待されています。ただ、誰もが即レスできる環境にいるとは限りません。即レスがなくてもイライラしない、でも自分はできるだけ早く返事をするよう心がけておくと、ストレスになりません」(北條久美子さん)

  • ツールを使い分ける。

「会社の指針に沿ったツールを使い分けます。例えば、大勢が参加するチャットツールのチャンネルに、数名あてのメッセージを送れば埋もれる可能性が高まります。急ぎの用件は個人にチャットで問いかけるなど、適したツール選びをしましょう」(北條久美子さん)

  • チャットはタイミングにも注意。

「テレワークでないときも同様ですが、深夜や週末にチャットで相談をするのは、急用のみが望ましいです。メールでも、スマートフォンで見れば相手は『返事をしなければ』と少なからずプレッシャーになります。予約送信機能などを使い、相手が休んでいるときは極力仕事の連絡をしないようにしましょう。また、自分自身も相手にオンオフがわかるようにしておくと、相手が気にせず連絡できます」(北條久美子さん)

●テレワークができない人への気配り

「会社には、出社しないと仕事ができない人もいます。通勤リスクなどがある彼らには敬意と感謝を忘れてはいけません。『郵便物を確認してほしい』など、一方的にお願いごとばかりするのは好ましくありません。電話やメールの機会に『いつもありがとう』『元気ですか』など感謝とねぎらいの一言を添えるとコミュニケーションもスムーズです」(北條久美子さん)

相手別コミュニケーションのポイント

さて、ここまでテレワークを中心にビジネスコミュニケーションで大切な気配りを説明してもらいましたが、すべてのコミュニケーションのポイントは、どんなときでも「相手への配慮」が基本になっています。

「『新しい働き方』『ニューノーマル』などと言われていますが、人と人のコミュニケーションであることは同じ。お互いに気持ちよく仕事をするためのポイントは変わりません」(北條久美子さん)

ここでは、相手別にコミュニケーションで気をつけたいポイントをご紹介します。

今、覚えておきたい!テレワーク時代のコミュニケーション術

●上司とのコミュニケーションのポイント

  • 信頼してもらうための話し方・聞き方を心掛ける。

「特に新人に多いのは、自分の都合でいきなり内容に入ってしまう話し方です。上司は自分よりたくさんの案件に関わっていますから、どの件で何をしてほしいかを最初に明確にしてから話し始めましょう。これは対面でもオンラインでも変わりません。また、上司が話しているときは、対面しているならしっかりと目を見て『はい』と相づちを打ち、オンラインなら大きくうなずきます。どちらも、メモをしっかりとり、実際『とっている』ことがわかるようにすると『ちゃんと聞いてるな』ということが伝わります」(北條久美子さん)

  • 忙しい上司の邪魔をしない。

「先ほどもお話ししたように、上司はたくさんの案件を抱えています。話しかける前には、『今、5分ほどよろしいでしょうか』など、時間がもらえるかどうかを必ず確認しましょう。オンラインでも、アポイントをとったほうがいいでしょう。その際、やはり何の案件なのかを明確に。あなたの話に時間を割くかどうかを決めるのは、あなたではなく上司なのです」(北條久美子さん)

  • 安心感のある対応を。

「上司の話を聞き終えたら、『しっかり理解した』と伝えるのも仕事のうち。とったメモをさっと見返し、質問があれば最後にまとめてします。大切な数字や日付、人名などは必ず復唱して、確認しましょう」(北條久美子さん)

今、覚えておきたい!テレワーク時代のコミュニケーション術

●先輩とのコミュニケーションのポイント

  • 先輩は最高の相談相手。

「上司より世代が近く身近で、仕事の経験を積んでいるのが先輩です。困ったことがあれば、先輩に相談をするのが自然です。ただ、相談相手に適しているからといって急に持ちかけるのではなく、普段から元気に挨拶をし、雑談をして距離を近づけておくこと。また、どんなに親しみやすい先輩でも、敬語は正しく使い、敬う態度を崩してはいけません」(北條久美子さん)

  • 相談の場所と時間をわきまえる。

「業務に関しての話をするなら社内、またはメールやオンラインのチャットで。人間関係やプライベートな相談はランチタイムや休憩時間、テレワークならオフタイムのチャットを利用しましょう。特に業務内容などの相談を他人の耳がある場所で行うのは、コンプライアンス的にもNG。生活時間なども考慮しましょう。テレワークでは様子がわからない分、オフタイムでも相談をする時間のアポイントをとるのが無難です」(北條久美子さん)

  • 相談したら報告する。

「忘れがちなのがこちら。相談した件に関しては、いい結果でも悪い結果でも、結果が出なくても、必ず報告をしましょう。『相談にのっていただいてありがとうございました』の一言で、きっとまた親身になって相談にのってくれるはずです」(北條久美子さん)

今、覚えておきたい!テレワーク時代のコミュニケーション術

●付き合いの浅い商談相手とのコミュニケーションのポイント

  • 共感を得るためには、主語を「私たち」に。

「ちょっとした言葉選びで、人と人の距離はぐっと近づきます。とても効果的なのが、『私たち』という言葉です。例えばプレゼンの前に『頑張っていただいてありがとうございました。プレゼンにあげますね』ではなく、『私たちが練った案なんですから、きっとうまくいきます』と言うと、チームとしての一体感が出て聞こえます」(北條久美子さん)

  • 会話の始めと終わりに雑談を。

「テレワークの注意点でもあげましたが、雑談はとても大切なコミュニケーション方法。天気の話や時事問題だけでなく、『この前の台風は大丈夫でしたか?うちは植木鉢を片付けるのが大変でした』など、具体的なお話をしてみましょう。テレワーク中や付き合いが浅い相手とは雑談がしにくい雰囲気になりがちですが、こんな時代だからこそ雑談不足の方が多く、仕事以外のちょっとした会話が恋しいと感じているかもしれませんよ」(北條久美子さん)

コミュニケーション術は万能なスキルになる

「テレワークが増え、リアルな会議やミーティング、会食が減り、人との直接のコミュニケーションは本当に少なくなりました。それでも、私たちは仕事を一人で完結することはできません。取引先がいて、仲間がいます。働き方がどうなろうとも、それは変わることはなく、むしろ、今こそ大切なのはコミュニケーションなのかもしれません。例えば、敬語を一つ間違ってしまったとしても、ミーティングの最後に『いいものができるように頑張りましょう。楽しくなってきました!』とにっこりと笑う笑顔が、仕事を円滑に進めたりもします。上手なコミュニケーションとは、相手への思いやりと感謝の気持ち、未来への想像力から生まれます。時代がめまぐるしく変わるからこそ、マナーの型にはめようとするのではなく、想像力を働かせて言葉を選び、行動することが大切です」(北條久美子さん)

会社に行っても行かなくても、対面でもオンラインでも。仕事には人間同士のコミュニケーションが不可欠です。臨機応変な相手への心遣いこそが、マナーのニューノーマルなのかもしれません。

プロフィール
北條久美子さん
北條久美子さん
東京外国語大学を卒業後、研修講師等を経て、2007年からエイベックス・グループ・ホールディングス株式会社(現・エイベックス株式会社)人事部にて人材育成に携わる。2010年にキャリアカウンセラー資格を取得し、独立。年間約2,500人にマナーやコミュニケーション、キャリアのセミナーを行っている。心理カウンセラー・コーチ資格も持ち、現在はライフスタイリストとして多方面で活躍中。著書に『仕事で差がつくコミュニケーションと敬語の基本』(辰巳出版)など。
イラストレイタープロフィール
Eikaさん
Eikaさん
1985年生まれ。日本と在日コリアンのハーフ。幼少期をアメリカで過ごし、帰国後、神戸へ。ニューヨークのSVAイラストレーション学科卒業。アパレル雑貨メーカーのテキスタイルデザイナーを経て、2018年よりフリーランスのイラストレーターとして活動。
 

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