「一つでも資格があれば充分」と思う人も多いなかで、なぜこれほど多くの資格を取得しているのか……?!717個もの複数資格を持つ鈴木さんに、きっかけや今までの歩みも踏まえて伺いました。
※取得済みの資格の数は2020年9月15日時点
「大学在学中に、大学生協の学生委員会というサークル的な組織に所属していて、広報誌の編集をしていました。そこで生協書籍部の広報を目的とした『資格をたくさん取得して、その体験をコラムとして書く』という連載記事を担当することになったのが始まりです。2001年の秋からやっているので、資格を取り続けてもう19年でしょうか。現在まで、スケジュールを調整しながらほぼ毎週なにかしらの試験を受けています」(鈴木秀明さん)
資格を掛け算することで、どういった強みやメリットがあるのでしょうか?また、資格を掛け算することで発揮できる個性があるとすれば、どんなものでしょうか。
「一つの資格ではさほど珍しくない資格でも、掛け合わせることでスキルやプロフィールの独自性・希少性を生み出すことができます。また、いろんなことにアクティブに取り組める人、新しいことに積極的に取り組める人、自分磨きを大切にしている人、変化に対応できる人ということを示すことができたり、資格によって身に付くスキルや思考をアピールできる幅が広がるのは強みでありメリットです」(鈴木秀明さん)
確かに複数資格を持つことでアピールに幅が生まれることは想像できますね。鈴木さんが実際に知っている具体的な例はありますか?
「例えば、昔から言われている例だと『税理士×社労士』。税理士は税金、社労士は社会保険。会社のお金に関わる手続き面を網羅できます。あとは『簿記×ファイナンシャル・プランナー』。会社のお金と個人のお金に関するスペシャリストになれます。ふたつの考え方があるのとないのとでは、提案できるアイデアのベースが違ってくるので、希少な存在として重宝されると思います。
また、組み合わせ次第で新たな価値・個性が生まれるケースとして、私の知り合いに『ねこ検定×建築士』という方がいます。この方は、猫専門建築士という肩書で、ねこと幸せに共生できる家を作る建築士として活躍されています。その他には『税理士×ボクサー』という方もいますね。直接ビジネス的な相乗効果がある組み合わせではないとしても、インパクトは大。覚えてもらいやすいという点も魅力だと思います。
インパクトもあって、将来性もある分野としては語学系。アジア系の言語やフランス語、スペイン語、イタリア語など、英語以外の言語の資格を持っていると実用性もあって、肩書としてもインパクトが大きいのでおすすめです」(鈴木秀明さん)
これまでの経験のなかで複数資格を持っていたからこそできたことや、乗り越えられたことはありますか?
「サラリーマン時代に、某大手人材派遣会社で営業の仕事をしていました。派遣の営業というのは、世の中に存在しているすべての会社が取引の対象となりうるので、業種や規模にかかわらず、担当エリア内すべての企業にひたすら飛び込み営業をするということもやっていました。新人の多くが、受注はしたけど業界のことはよく分からず具体的な商談ができないとなるなかで、私はさまざまな業界の資格を持っていたので、業界の話はもちろん『こんな資格を持っている人が良いのでは?』という提案もすることができ、『なんで分かるの?』とお客様に驚かれたのを覚えています。
このように複数資格を持っていると、自分の会社や仕事の実務だけでなく、提携先や取引先との専門的な話でもスムーズに進めることができ、一目置かれる存在になることもできるのです」(鈴木秀明さん)
「勉強しておくと役立つ『他業界の資格』として代表的なのが、銀行業務検定。これは、銀行員がキャリアアップのために取得する資格ですが、銀行関係者以外の人にとっても有用な知識が学べ、特に独立を考えている人におすすめです。36種類の種目があるのですが、特におすすめなのは法人融資渉外3級、事業性評価3級、融資管理3級。これらを学ぶことで、銀行が企業に融資をする際、どの数字を見てお金を貸すのか。支払いが滞ったらどう回収するのかといったノウハウが学べます。経営者として、銀行側の手の内を知っておくことは、プラス以外のなにものでもありません」(鈴木秀明さん)
資格という「学び」のバリエーションは、ここ数年でどのように変化してきたのでしょうか。また、最近ではどういった分野の資格が増えているのか教えてください。
「ここ数年レベルだとそこまで大きな変化はないかもしれませんが、20年前と比べるとフランクなものが増えてきています。当時は簿記検定や危険物取扱者など、お堅いイメージの資格しかほぼなかった印象ですが、2006年にご当地検定が流行り始めたころから、バラエティ豊かな資格が続々と誕生しています。ですから今は、資格・検定は履歴書に書くために取るだけのものではなく、『新しいことを楽しく学べるコンテンツ』という感覚でとらえられている側面も大きいと思いますね。
最近、増えてきている分野だと、AIの分野。資格というのは、その時代や時期のホットなテーマを反映して新しい資格がどんどん生まれてくるということが多いのです。いわば時代を映す鏡。例えばここ数年では、ドローン検定やマイナンバー実務検定、スマート介護士資格試験、福祉ロボット検定などがあります。
あと、いつの時代も必要とされているのは、やはり医療系・福祉系の資格。昔は看護師や介護福祉士などベースとなる国家資格だけが重視される傾向がありましたが、最近では認知症ライフパートナー検定、福祉住環境コーディネーター検定など、医療・福祉領域のなかでもより特化したテーマの学習ニーズが出てきており、新しい資格がたくさん生まれています」(鈴木秀明さん)
新しい分野の資格が続々と誕生したり、あるテーマに特化した資格を目指せるというのは、楽しみながら取り組めそうですね。今後のトレンドや資格取得の方法に、変化は起こるのでしょうか?
「トレンドに関しては、コロナ禍を機に変わっていくのではと考えています。現在の日本の資格試験は、みんなが試験会場に集まってペーパーテストを受けるのが主流。しかし、今はそれができません。実際に、司法試験などの国家試験ですら大半が延期になっている状況です。それに伴ってCBT方式(パソコンで試験を受ける形式)や郵送での試験が増えてきています。
1年に1回しか実施されない資格試験も多いのですが、今後は時間や場所を選ばず受けることができる試験がもっと増えていくでしょう。諸外国では医師国家試験にも、CBTがすでに取り入れられています。日本もCBT化が進めば、トレンドも大きく変わってくるはずです」(鈴木秀明さん)
確かに、試験の方法が変わると資格のトレンドにも変化が生まれそうですね。現在、鈴木さんが注目している資格はありますか?
「私が注目しているのはAI系のディープラーニングG検定(ディープラーニング…人間が自然に行うタスクをコンピューターに学習させる、機械学習の手法のひとつ)です。また今後、『健康』も重要なテーマのひとつになると思います。健康と栄養について勉強してみて、日々の食事だけでは必要な栄養を摂るのが難しいことが分かりました。なので、サプリメントアドバイザーにも注目しています。ちなみにディープラーニングG検定は7月、サプリメントアドバイザーは5月に取得しました。
これからの時代に強い資格の組み合わせですが、正直、「これと、これ!」と断言するのは難しいのですが、軸にすると良い資格分野の例としては『IT×●●』『語学×●●』『健康×●●』があります。あとは『ご当地検定×●●』も地域の活動に広げることができるので、活かせる場面は多いと思います。これらを軸に、自分の強みや得意分野と掛け合わせるとよいと思います」(鈴木秀明さん)
これから資格取得しようと考えている方が「どの資格にチャレンジしたらいいのか分からない」ということもあるかもしれません。そうなった際の対処法などはありますか?また、おすすめの勉強法などもあれば教えてください。
「どの資格を取ろうか迷った時の対処法としておすすめしたいのは三つ。
一つ目は資格ガイドブックを見たり、私の個人サイトにも取得資格一覧を掲載していますが、そういったものを見たりする方法。何もない状態でただ漠然と考えるよりも、一覧として提示されれば、グッとくるものがいくつかは見つかると思います。さまざまな資格を見るなかで『これいいかも!』という資格があれば調べてみる。選択肢をいろいろ見てみるというのは、とても大事です。
二つ目は自分の趣味の分野から探してみる。勉強に対しては苦手意識が強い人もいますが、自分の好きなことから始めれば、さほど抵抗感なくチャレンジできます。学生時代の『やらされる勉強』とは違い、大人になってから自分の好きなことを学ぶ勉強というのは想像以上に楽しいものです。『(自分が好きなもの)×資格』でネット検索してみてください。きっと、なにかしら興味を持てる資格・検定がヒットするはずです。
三つ目は、とりあえず新しくできた資格を取ってみる。新しい資格やノウハウを持つことは、それがそこまで高レベルなものでなくても「周りに先駆けて自分だけが持っている」ということだけで価値になります。例えば以前、マイナンバーが法制化された時には、知り合いの社労士さんがいち早くマイナンバー実務検定を取得。どこよりも早くマイナンバーに関するセミナーを開くことができて稼ぐことができた、という話を聞きました。今ならAI系の資格なんて、いいかもしれませんね」(鈴木秀明さん)
「おすすめの勉強法ですが、これは人それぞれ。学びの目的によっても違うのかなと。あくまで資格試験に効率的に受かるための勉強なのか、自らを高める知識・スキルを身に付けるための勉強なのか。効率的な勉強法としては過去問を集中的にやることをおすすめします。出題内容はどんな分量・レベル感なのか、出題傾向も見えるので、試験勉強の指針を立てることができます。傾向が分からないと全部の範囲を完璧にやろうとしてしまい、エネルギーが分散してしまいますからね。ここはやって、ここはやらない。選択と集中を意識して試験対策すべきです」(鈴木秀明さん)
困ったらとりあえず、新しい資格を!というのは「なるほど!」と思いました。では、最後に複数資格の取得に興味のある方にメッセージをお願いします。
「資格の活かし方には無限の可能性があると思っています。組み合わせ次第では、オンリーワンの人になることだってできる。自身のブランディングが確立できれば、今後の生き方や働き方にも明確な軸ができるはずです。資格という明確な形として残すことで、将来の不安が消えたり、これからの人生を歩む上での自信になったりもします。自宅にいる時間の多い、この機会だからこそ、ぜひどんどん新しいことにもチャレンジしてみてはいかがでしょうか」(鈴木秀明さん)