「教育訓練給付制度」をご存知でしょうか? 雇用の安定と再就職の促進を図る目的で設けられたもので、中長期的なキャリア形成に役立ててくださいね、という雇用保険の給付制度です。労働者や離職者が、自分で費用を払って厚生労働大臣が指定する教育訓練講座を修了した場合に、支払った費用の一定割合(上限あり)について、ハローワークから支給を受けられます。
実は教育訓練給付制度は2014年10月に拡大され、さらに充実したものになりました。現在は、雇用保険加入期間が原則3年以上(初回1年)で利用できる「一般教育訓練」と、加入期間が原則10年以上(初回2年)の「専門実践教育訓練」の2本立てになっています。
対象となる講座は、厚生労働省の講座検索専用サイトで検索するか、ハローワークでも閲覧できます。下の例のような講座が対象として挙げられますが、厚生労働大臣が指定した教育訓練施設で受講したものしか対象になりません。一般教育訓練の方は通学だけでなく、通信やeラーニングでの講座もありますが、専門実践教育訓練の方は通学になります。
<一般教育訓練>
情報処理、語学、簿記、社会保険労務士、宅建、ホームヘルパー、インテリアデザイナーをはじめ幅広い講座が対象。通学だけでなく、通信教育の講座も対象になっています。
<専門実践教育訓練>
業務独占資格、名称独占資格の取得を目指す養成施設の課程(訓練期間1~3年):看護師、介護福祉士、保育士、建築士など
専門的職業に就業するための教育訓練専門学校の職業実践専門課程(訓練期間2年):工業、医療、商業実務など
専門学校の専門課程のうち、最新の実務知識などを身につけられるよう教育課程を編成したものとして文部科学大臣が認定したもの
専門職大学院(訓練期間2~3年):高度専門職業人の養成を目的とした課程
(1)教育訓練給付の対象になるものは?
対象となる講座を修了すれば、受講のために支払った教育訓練経費の一部が「教育訓練給付金」としてハローワークから支給されますが、あとで「知らなかった!」とならないよう、どのようなものが給付の対象になり、どのようなものがならないのかを整理しておきましょう。
まず、対象になるものとしては、入学金や受講料(教科書代等含む)が挙げられます。ただし、各種割引がある場合は割引後の額となります。一方、対象にならないものとしては、検定試験の受験料や補助教材費、補講費、交通費、パソコン等器材は対象にはなりません。
(2)支給額はどれくらい?
給付される金額は、一般教育訓練と専門実践教育訓練とで違ってきます。
一般教育訓練は入学金・受講料の20%相当額で上限10万円。専門実践教育訓練の場合は、入学金・受講料の40%相当額。1年の上限額は32万円で、訓練期間は最大3年間のため、最大96万円が上限になります。どちらも4000円を超えない場合は支給されません。
専門実践教育訓練を修了後、定められた資格等を取得し、受講修了日の翌日から1年以内に被保険者として雇用されたかすでに雇用されている人は、教育訓練経費の20%が追加支給されます。つまり、合計すると60%相当分が支給されます。60%の場合は、1年の上限額は48万円、3年の場合で144万円となります。
一般教育訓練で30万円かかった場合は、20%なので、教育訓練給付金が6万円もらえます。専門実践教育訓練で50万円の講座に2年通った場合は、40%の20万円×2年=40万円の給付。60%に該当する場合は、30万円×2年=60万円が給付されます。
これはなかなか使えますね!上手に活用してオトクとキャリアをゲットしたいものです。
<一般教育訓練>
・入学金・受講料の20%相当額
・上限10万円
・4000円を超えない場合は支給されない
<専門実践教育訓練>
・入学金・受講料の40%相当額
・1年の上限額32万円
・訓練期間は最大3年間のため、最大96万円が上限
・4000円を超えない場合は支給されない
・専門実践教育訓練を修了後、定められた資格等を取得し、受講修了日の翌日から1年以内に雇用されたかすでに雇用されている人には、教育訓練経費の20%を追加支給。
*平成31年3月31日までの時限措置として、専門実践教育訓練の給付金を受給できる人のうち、受講開始時に45歳未満で離職し、初めての給付であるなど一定条件を満たす場合は「教育訓練支援給付金」も支給されます。詳細はハローワークで確認してください。
(3)給付の条件は?
では、制度利用の条件はあるのでしょうか? 教育訓練給付の対象となるのは、次のいずれかに該当して、さらに厚生労働大臣の指定する教育訓練を修了した人です。
<一般教育訓練給付>
受講開始日現在、雇用保険の被保険者期間が3年以上(初支給の方は1年以上)で、前回の教育訓練給付金受給から3年以上(※)経過しているなど一定要件を満たす雇用保険の被保険者、または辞めて1年以内の退職者。
※平成26年10月1日前に教育訓練給付金を受給した場合はこの適用なし
<専門実践教育訓練>
受講開始日現在、雇用保険の被保険者期間が10年以上(初支給の方は2年以上※1)で、前回の教育訓練給付金受給から今回の受講開始日前までに10年以上※2経過しているなど、一定要件を満たす雇用保険の被保険者、または辞めて1年以内の退職者。
※1 平成26年10月1日前に旧制度の教育訓練給付金を受給した場合、初めて専門実践教育訓練を受給する場合は2年、同年10月1日以降に旧制度の教育訓練給付金か一般教育訓練給付金の支給を受けた場合は10年以上
※2 平成26年10月1日前に教育訓練給付金を受給した場合はこの適用なし
なかなか分かりにくいので、本当に自分が該当するかどうか心配なときは、あらかじめハローワークで確認してから利用すると安心ですね。
給付金を受けとれるのは講座修了後です。一時的に全額負担となり、受講修了後にハローワークに必要書類を提出して手続きをします。修了後1カ月以内が手続きのリミットですので、すみやかに手続きを。育休中は忙しいと思いますが、うっかり忘れがないよう、受けられる給付はしっかりゲットしましょう。
育休ママの頑張りすぎは禁物ですが、無理のない範囲で時間をやりくりして、長期的な視点でスキルアップや資格取得にも目を向けておきたいもの。教育訓練給付制度はそんなママの強い味方です。上手に賢く活用し、スキルアップ等に役立てましょう!
Text:豊田眞弓
【ガイドプロフィール】
豊田眞弓(とよだ・まゆみ):All About「出産・教育のお金」ガイド。「FPラウンジばっくすてーじ」代表。子どもマネー総合研究会会長も務める。94年より、FPとして家計や保険、住宅ローン等の相談業務に従事。ほかに講演や企業研修、記事の監修、コラム執筆などで活動。自身も子育て中。
教育訓練給付制度について理解できたら、さっそく資格取得にチャレンジ! 特に時間が取れる育休中は、絶好のチャンスです。
とはいえ、子育てが想像していた以上に忙しい。育休後に活かせるのがどんな資格なのかわからない。……と悩んでしまう人も多いはず。そこで今回は、 育休中の女性にどんな資格がオススメなのか、「資格」ガイドの中瀬路子さんに伺いました。