家庭的ながらおしゃれなレシピが幅広い年代に大人気の有元葉子さん。手に入りやすい食材で手軽にできるシンプルなものばかりなのに、どこかに気の利いたエッセンスを取り入れたレシピは、毎日の食事はもちろん、おもてなしなどハレの日の食卓にも応用自在。さまざまなシーンで、日本中の台所に寄り添っています。
そんな有元さんのレシピ本『しょうがの料理』が最近、話題を呼んでいます。しょうがは、体を温める効果が期待できるヘルシー食材。毎日の食事で体の中から温活したい人には朗報ですね。今回は特別に、有元さんの料理が生まれるルーツや、食卓で大活躍しているという「しょうが」のお話を伺いました。
「家庭を持ってから20年ほど専業主婦をしていましたが、家事全般どれも好きな仕事でした。とりわけ食事作りは創造力をかき立てられる興味深い仕事でした。食べることは家族の心身を作ることに直結しますし、生家も食べることには熱心な家でしたので、生活の中でも特に食は大切にするもの、という考えは子どもの頃から育まれていたのかもしれません。家には客人も多く、料理には自然と力が入りました。料理が仕事になる以前と今では生活状況は異なりますが、根底にある食への興味は尽きることなく現在まで続いています。
今回ご紹介する『しょうが』は、私の料理に欠かせない食材。食卓にも毎日のように登場します。体によい作用が期待できるのもありがたいですね。皆さんもぜひ、上手に使っていただけたらと思います」(有元葉子さん※)
一般的に「食べると体が温まる効果が期待できる」とされる「しょうが」。料理にアクセントを加える香辛料としておなじみですが、その温活効果にも注目が集まっています。生食なら末端の血管を拡張し、血流を促進する作用があるのだとか。一方加熱したものは熱を作り出す働きがあり、体を芯から温めると言われています。
これまでに多くのレシピを手掛けられてきた中で、有元さんが今改めて「しょうが」に着目した理由を伺いました。
「以前、この『しょうがの料理』と同じく『にんにくの料理』という本を作ったことがきっかけです。しょうがもにんにくも、毎日の料理になくてはならない存在。主役というより料理の引き立て役のようなイメージがありますが、立派な主役にもなります。今回は私たちの食卓を豊かにし、楽しませてくれる『しょうが』を主役にした本を作ろう、といういきさつがありました」(有元葉子さん※)
また、有元さんは、ご自身が大好きなヨーロッパでの暮らしの中で、日本の「しょうが」の素晴らしさを再発見されたのだとか。有元さんが感じる日本の「しょうが」の魅力とは?
「ヨーロッパで『しょうが』というと干からびたかたい薄茶色の石ころのようなもので、香りではなくてやたらに辛いというものしか入手できません。でも日本では、フレッシュな素晴らしい『しょうが』がいつでもどこでも手に入れられて、本当に幸せです。初夏に出回る『葉しょうが』はフレッシュでやわらかく、生で食べるにはうってつけ。夏から秋に旬を迎えるみずみずしい『新しょうが』や、年中手に入りやすい『ひねしょうが』は季節ごとに味も香りも厚みを増し、毎日の食卓にアクセントをつけてくれます。また、産地によってさまざまな味わいの『しょうが』が楽しめるのも、日本ならではの豊かな恵みだと思います」(有元葉子さん※)
今回は特別に、新刊の中から注目の3品を紹介!どれも有元さんの思い入れがあるレシピで、「しょうが」をたっぷり食べることができます。ぜひ、温活のパートナーとして毎日の献立に取り入れましょう。
1. 有元さんの定番中の定番!「豚肉のしょうが焼き」
有元さんの娘さんが子どもだった頃から作り続けている秘蔵レシピだそうです。豚肉に片栗粉をふって半分にたたんで焼くのがコツ。やわらかく仕上がります。
撮影:ジョー
●材料(作りやすい分量)
●作り方
撮影:ジョー
2. アツアツうどんで、体の芯から温活!「しょうがうどん」
「体が冷えたときにうってつけ」と有元さん太鼓判の温活レシピ。具はレシピ通りでなくてもOK。野菜やきのこ、油揚げなどのちょっとしたたんぱく質など、冷蔵庫のありもので。
撮影:ジョー
●材料(作りやすい分量)
●作り方
3. たっぷりしょうがのお食事スイーツ「ジンジャーケーキ」
おやつにも、朝食にも。焼きたてもいいけれど、翌日には、より生地がしっとりとしておいしくなるそう。しょうがのメープルシロップ煮は、アイスクリームに添えたり、ソーダで割ってもおいしい。
撮影:ジョー
●材料(8×18×高さ6cmのパウンド型1台分)
しょうがのメープルシロップ煮(作りやすい分量)
ケーキ生地
メレンゲ
●作り方
今回紹介した3つのレシピのほか、ご著書『しょうがの料理』には、50以上のしょうがレシピとそのアレンジ術が紹介されています。どれも作りやすく、「しょうが」をたっぷり食べられる有元さん自慢のレシピ。温活効果も期待できそうです。有元さんの「食べることは心身を作ることに直結する」という言葉の通り、「しょうが」を毎日食べることで健康な体づくりに役立てたいですね。
最後に、有元さんに毎日の料理を楽しむコツを伺いました。
「料理のレシピは必要ですが、あくまで参考と考え、自分の味を見つけることではないでしょうか。初めはレシピ通りで作ってみたら、次には自分の感覚を大切にして味や火の通し方など決めましょう。私の料理は基本的には母の料理や、家族・客人のためによく作った料理などが基本にありますが、そこに旅をして新しい食材や食べ方を教わったことが積み重なり、新しいアイディアが生まれることもあります。結局、『生活から生まれたレシピ』が一番おいしいと思っています。本当においしいかどうかは、自分の舌でしか決められません。食材、調味料、道具、食べる人の年齢や生活環境など、全てにわたって人と自分は違うのですから。自分の五感を駆使して料理をするようになると、途端に料理が面白くなり尽きぬ興味が湧いてくることでしょう。レシピを見ないで自分の感覚で料理を作れるようになると、さらに新しいアイディアも湧いてきますよ」(有元葉子さん)
※コメントの一部、およびレシピ、料理写真は著書『しょうがの料理』有元葉子・著(東京書籍)より抜粋