手や足の先が冷たくなる「冷え」は、多くの女性が抱える悩みの一つです。理想の体温は新陳代謝が活発になり、免疫力が高まる36.5~37.0度と言われていますが、冷え症の人の体温はこれよりも低いため血の巡りが悪くなり、体に様々な不調を引き起こしてしまいます。この不調を改善するために、今注目されているのが基礎体温を上げる「温活」です。
今回お話を伺ったおぬまあすかさんは、温活により68kgあった体重を48kgまで落としたダイエット成功者。そして、よりキレイで健康的になったご自身の経験をもとに温活に関する情報を発信している「温活美容家」です。
美容師でもあるおぬまさんは5年ほど前、過度なストレスや様々な要因で過食衝動が起きてしまい、体重が増加。無理なダイエットにより体調不良に陥ってしまいます。そんな時、婦人科の受診が温活に注目するきっかけになったのだとか。
「生理不順で体がとても辛く、婦人科に行った時のことです。体温を測ってみると35.1度しかなく、自分が低体温だということを知りました。先生から低体温が私を悩ませていた体調不良の原因になっている可能性があると伝えられ、体温を上げることで免疫力アップにもつながることがわかって。それからは基礎体温を上げる『温活』に関する書籍を読んだり、ネットを見たりして自分でも調べるようになりました。すると、当時の私にとっては一番苦しい悩みだった過食も低体温が原因の一つになっていることがわかったんです」(おぬまあすかさん)
低い体温を上げようと、体が本能的に「食べなさい」という信号を出して過食衝動につながっていたと感じたおぬまさん。「温活は健康的な体をつくり、過食も抑えられる」「できることだけ取り入れれば無理なく続けられる」。そう思い、本格的に温活を開始。今は自身で調べた多くの知識や、実体験から導き出した温活メソッドをSNSで発信しています。
「発信した情報を見た企業の方からお声がけいただいて、セミナーの講師などもさせていただいています。例えば、温活で心を安らかにして仕事のパフォーマンスをアップさせる方法だったり、更年期障害に悩まれている方に向けて温活を取り入れたメンタルケアをテーマにしたり。健康的に痩せたい方を対象にした講演会や、Instagram発信のオンラインサロンも行っています」(おぬまあすかさん)
血の巡りを良くして冷えを改善するだけでなく、ダイエットや美容、アンチエイジングなど、温活には期待できる効果がたくさんあるといいます。Instagramを始めてまだ3年。「日頃から仕事に、恋に、自分磨きにと頑張っている女性が、頑張らずにキレイで健康的になれる方法を伝えたい」と始めたことが、今では多くの女性の力になっています。
以前のおぬまさんは、「ダイエット=イベント」であり、「夏までに」など期限を決めて短期間で痩せようという思考が強かったそうです。しかし温活を取り入れてからは「ダイエット=習慣」という認識を持つようになり、習慣として続けられるもの、ガマンをしなくてもできるものを取り入れるようになりました。
「まず変えたのは飲み物です。飲み物は毎日飲むものなので体への影響も大きいだろうし、『これならすぐに変えられそう』と思って始めてみました。太っていた時は朝からミルクと砂糖がたっぷりのコーヒーを飲んでいましたし、仕事の疲れやストレスを甘い飲み物で発散する習慣がありましたが、それをすべて糖分のないお茶に変えました。しかも茶葉を発酵させている紅茶やルイボスティー、焙煎しているほうじ茶、黒炒り玄米茶など、体を温める効果があるお茶をセレクト。基本的に茶色系のお茶は体を温めてくれるものが多いので、色も選ぶ際の参考にしました。とにかくいろんな書籍や情報を見て、一度体験して『続けられそう』と思ったものはどんどん取り入れていった感じです」(おぬまあすかさん)
飲み物の次は、体を冷やすと言われている小麦の摂取を控え、グルテンフリーに注目。さらに使用する砂糖も体を温める作用があるものに変えたそうです。東洋医学によると暑い土地で作られる食べ物は「陰性食品」と呼ばれ、体を冷やす作用があると言われています。逆に、寒い土地で作られるものは体を温める作用がある「陽性食品」です。砂糖も、南国で栽培されるさとうきびからつくられるものは体を冷やしてしまうため、寒地で作られるビート(別名、砂糖大根とも呼ばれる)を原料としたてんさい糖に変更し、食事のベースを洋食から和食に変えていったそうです。
「食べ方もいろいろと意識するようになりました。まずはよく噛んで食べること。どんなにいいものを食べても、よく噛んで食べなければ老廃物として体の中に残ってしまいますから。あとは、腹八分目。食後に睡魔がこない、胃に不快感を与えない、体が重くなりすぎない、この3つが私の腹八分目の目安です。さらに、食事の時は温かいものから口にすること。過食衝動を抑えられる感覚があるので、汁物などの温かいものから食べるようにしています」(おぬまあすかさん)
とにかく体温を上げ、体を冷やさない習慣を続けたというおぬまさん。温活を始めて3か月ほど経つと、一気に5、6kg減少。そこからは順調に体重が減っていきました。基礎体温も半年目くらいから36度台に入り、それ以降は着実に上がっていったそうです。
ストレスなく続けられる工夫をしながら約2年で20kgの減量に成功。それだけでなく、温活の効果によって心と体に大きな変化があったと話します。
「まわりの人からは『心の不安定がまったくなくなったね』とよく言われました。以前は生理中の過食や睡眠欲などで心もボロボロでしたが、1年を通して心の安定を手にすることができたのは大きな副産物でした。さらに、髪の毛も濃くなりましたし、代謝が上がり、ターンオーバーによって肌の調子が良くなったのもうれしかったです」(おぬまあすかさん)
心と体をキレイに、健康に導く温活。長く続けてこそ結果が得られるので、心地よく続けられる体感を大事にして、自分が続けられる選択をしてほしい、とおぬまさん。
「温活に無理は禁物です。温活がストレスになっては意味がないので、食事を楽しみにしている人は食生活を変える必要はありません。温活には入浴法や、マッサージやストレッチを取り入れる方法もありますので、うまくバランスをとれば大丈夫です。例えば入浴の時は湯船につかるだけではなく、お湯の中に自然塩を入れてしっかり汗が出るようにするのも温活なんです」(おぬまあすかさん)
温活に興味がある方に向けて、誰もが取り入れやすく、続けやすい温活についても教えてもらいました。
「朝一番に白湯やお茶など、温かいものを飲むのがおすすめです。寝起きは一番体温が低く、内臓の働きが悪いので、温めることでいい効果がたくさん期待できます。オンラインサロンでも『食べ方を変えたら体の調子が良くなった』という声はよく聞くので、先ほどご紹介した、『よく噛む』『腹八分目』などの食べ方を変えるのも簡単で結果が出やすいと思います」(おぬまあすかさん)
さらに、醤油や味噌などの発酵食品は多くの酵素により代謝を促進し、体を温めてくれる効果が期待できるので、摂取するだけで温活になるそうです。このような調味料は日本ならではのものなので、日本人に生まれて本当によかった、とおぬまさん。
「基本的にお味噌やお醤油で味付けして調理すれば、食材に『体を冷やす要素』があってもそれを中和・緩和することができます。和食では使用頻度の高い調味料なので、ぜひ積極的に使ってみてください。また、体を温める食材としてショウガも有名ですが、実は生のままでは一時的な効果しかありません。熱を加えると体を温める効果が上がるので、お鍋や汁物などに入れるのがおすすめです。さらに、根菜も温活につながる食材なので、根菜たっぷりのお味噌汁を献立に入れるのも効果的ですよ」(おぬまあすかさん)
今ではスーパーなどで、冬でも夏野菜が手に入る時代です。それも冷え体質を加速させる要因になっているのではないかと、おぬまさんは感じています。
「真冬でもダイエットのためにと、手軽に食べられるトマトやキュウリなどの夏野菜を摂取する人が多いと思います。でも、今の時代こそ、旬の野菜を摂ることを大事にしてほしいと思うんです。夏野菜は夏に体温を下げる大事な働きをしてくれるけれど、冬に摂ってしまうと冷え性の人はより冷え体質になってしまいます。ですから、旬の野菜を摂取する大切さは講演やセミナーでもお伝えするようにしているんですよ」(おぬまあすかさん)
冬に夏野菜を食べるのと同様に、「冷えを加速させてしまう」ような、多くの人がやってしまいがちな生活習慣はあるのでしょうか。
「温かい飲み物であれば何でも体を温めると思っている人が多いと思いますが、緑茶などの発酵されていないお茶は体を冷やしてしまうので、茶色系のお茶を選ぶのがベターです。あと、『食事の時はサラダから食べるといい』とよく聞きますが、これも逆効果。冷えたものから食べてしまうと体が温まっていないため、『体を温めるためにもっと食べろ』という信号が出てしまいます。温活するなら、胃腸の働きを良くするために汁物などの温かいものから口にしましょう」(おぬまあすかさん)
今でも自分に合った温活を続けているおぬまさん。そのためリバウンドもなく、健康的な毎日を送れているそうです。最後に、ダイエットが続かない方、キレイ&健康を目指している方に向けてメッセージをいただきました。
「せっかく女性として生まれてきた一度きりの大切な人生ですから、女性であることを最大限に楽しんでいただきたいと思っています。みなさんの声を聞くと、目指す体型も、なりたい体型もそれぞれに違うもの。ですから、まわりと比べることなく、焦らずに、自分で自分を諦めることなく温活を続けてほしいと思っています。そして、温活を通じて、心地よく続けられる習慣やダイエット方法に出会っていただけたらうれしく思います」(おぬまあすかさん)
みなさんも、自分が心地よく続けられる温活を取り入れて、キレイ&健康な体と心を手に入れましょう!