キュートな笑顔が印象的。一方で力強く、安定したプレイで着々と好成績を収めているプロゴルファーの鈴木麻綾さん。鈴木さんがゴルフに出会ったのは、お父さまの影響だそう。親子でプレイするうちに夢中になり、プロの道を志したのだとか。
「ゴルフは父と一緒に始めました。親子で出かけるのが嬉しくて、子どもの頃は遊びの延長のような感じだったと思います。上手く打てたり、良いスコアが出たりすると褒めてもらえるのが嬉しくて、自然と普段の生活もゴルフ中心になっていきましたね。家ではゴルフ番組ばかり観たり、暇があればパターの練習をしたり……。ちょっと変わった子ども時代だったかもしれません(笑)。具体的にプロを目指し始めた頃からは、両親ともに全力でサポートしてくれました。練習に集中しやすいような生活環境に整えてくれて、どんな時もはげまし応援してくれる家族の支えなしに、今の私はありません」(鈴木麻綾さん)
持って生まれた才能に加えて、日々積み重ねた努力、さらにご家族のサポートによるゴルフ三昧の環境でみるみる実力をつけていった鈴木さんは、21歳でプロデビュー。毎日の生活がゴルフ中心になり、もっと強くなりたいと思う気持ちが大きくなるにつれて、プレッシャーを感じることも多くなり……。そんな時に鈴木さんが注力したのが、メンタル面での強化でした。
「プロデビューが現実的になり始めた頃からでしょうか。周りの期待にもっと応えたいと思う気持ちが強くなっていったんです。アマチュアの頃は主に自分や家族のために強くなりたいと思っていましたが、プロとして多くのファンの方やスポンサーにも支えられるようになったことで、より確実に成績を残したいと思う気持ちがプレッシャーになりすぎて、プレイにも影響してしまうことがありました。例えばここは決めなきゃいけない、というショットの時に手が震えてしまったり、大事な試合の前に精神的に不安定になったり。時には体調を崩してしまうこともありました。今思えば、ゴルフを始めた頃の楽しいという気持ちよりも、頑張らなきゃと思う重圧のようなもののほうが強くなり、プレイに集中できなくなっていたのかもしれませんね。練習はいつも以上に頑張っているのに、それが本番で発揮できないことがとても悔しくて。技術的なことだけでなく、精神的にも自分の弱い部分に向き合う必要があると感じました」(鈴木麻綾さん)
これまで、ひたすら技術面を磨いてきた鈴木さんは、プロとしてスランプを経験したことでメンタル強化の必要性を実感。まずは初めてでもチャレンジしやすそうということから、ユーキャンの「心理学入門」を受講することにしたそうです。
「今まで心理学について勉強したこともなかったし、いきなり難しい勉強を始めるのはハードルが高いなと思っていたので、まずは入門編にチャレンジすることにしました。自分の基本的な個性を診断できるテストや、対人関係のくせをシミュレーションするテスト、自分の知らない深層心理を知るためのテストなどを受けましたが、私はどれも『ネガティブな答え』に偏りがちでした。例えば、マイナス思考からプラス思考まで5つの選択肢から自分に近いものを選ぶとして、だいたい、チャートの左側、つまりマイナス思考のほうにチェックがついているんです(笑)。今まで自分の精神的な弱さの原因がいまいちわからなかったのですが、テストの結果に表れたことで、具体的に『自分のメンタルの弱さ=マイナス思考』であることがわかりました」(鈴木麻綾さん)
テストを受けることで、改めて自分のネガティブ思考や、精神的に弱い部分に気づかされたという鈴木さん。また、講座の中で学んだ「ストレスと上手に向き合う方法」もとても役立っているのだとか。
「私は緊張しやすい性格で、それが肝心な時にミスにつながってしまうことがありました。心理学入門講座では緊張をほぐす方法として『呼吸法』を学べたことがとても勉強になりましたね。まず、しっかりお腹がふくらむまで息をたっぷり吸い、ゆっくりと吐ききります。そうすると肩の力がすーっと抜けて、一打に集中できるようになりました」(鈴木麻綾さん)
自分の弱点を知ることで、着実に課題を克服している鈴木さん。プロアスリートにとって、心を鍛えることがいかに大切か、ご本人がいちばんよくわかっていらっしゃるのですね。
「ゴルフはあらゆるスポーツの中でも、1回の試合時間が長いスポーツです。試合の日は朝3時くらいに起き、ゴルフ場へ行ってストレッチやトレーニングなど、スタート前の練習を行います。試合が始まれば数時間にわたり集中し続けますし、終わった後も疲れを残さないためにクールダウンの練習は欠かせません。プロとして1日の長丁場を乗り切るためにも、精神的な強さを鍛えることが必要だと実感しています」(鈴木麻綾さん)
生活のほとんどがゴルフ中心。シーズン中は1日でも打たないと感覚が狂ってしまうので、ほぼ毎日練習と試合の日々を過ごすという鈴木さん。アスリートとしてかなりストイックな日々を送っていらっしゃる様子ですが、心を鍛えることで、オンとオフの切り替えも上手にできるようになってきたそうです。
「以前はうまくプレイできなかった試合の後など、翌日までネガティブな気持ちを引きずってしまうこともありましたが、休みの日にわざわざ反省するより、次の試合に向けてリラックスする時間を大切にしようと思えるようになりました。最近は犬を飼い始めたこともあり、彼女の可愛いさが日々の癒しになっています(笑)。一緒にお散歩へ行ったり、家で遊んだりする時間が本当に楽しくて、元気をもらえますね。また、私はなぜか友達からプライベートな相談を受けることが多いのですが、友人の悩みに対してポジティブなアドバイスができるようになったことも大きな変化だと思います。以前はつい否定的なことを言ってしまうこともあったのですが、心理学を学ぶことでいろいろな考え方があることを知れたせいか、相手の気持ちを汲み取り、背中を押せるような言葉をかける心の余裕ができた気がします」(鈴木麻綾さん)
友達から相談を受けることも多いという頼りがいのある性格も魅力の鈴木さん。将来はその個性を生かし、ゴルフ指導者としても活躍したいという目標があるそうです。
「心理学を学ぼうと思ったのは、もちろん自分のプレイを強化したいという気持ちもありますが、将来的にジュニアの育成に携わりたいという目標のためでもあるんです。私自身がそうだったように、発展途上のジュニア世代が『勝てない』という悩みを抱えた時、技術的な面だけでなく、心の側面からもサポートしてあげられる存在になりたい。そう思った時に、心理学の勉強は将来のためにとても役立つと思いました。ゴルフの世界で一生活躍するために、フィジカル・メンタル両面を鍛え続けたいですね」(鈴木麻綾さん)
プロゴルファーとして、常に心身ともに努力を欠かさない鈴木さん。いつでも明るく、でも自分の弱さから逃げない謙虚な姿が、多くのファンを魅了しているのも納得!これからの活躍から目が離せません。
最後に、プロゴルファーとして、また一人の女性として、これからの人生目標について伺いました。
「ゴルフの近い目標としては、シード権(※)を取りたいですね。家族やファン、スポンサーのためにもっと強くなりたいという気持ちは変わりません。心理学を学び始めたことで、強くなるためには自分の弱点から目をそらしてはいけないことがわかりました。ネガティブ思考や緊張しやすい性格も自分の個性として捉えることで、初めて解決策を講じることができるし、なりたい自分や理想のプレイがイメージできると思います。プライベートでは料理の腕を磨きたいですね(笑)!食べることが大好きなので、おいしくて栄養面も兼ね備えたアスリート向け料理の勉強もしたいと思っています。将来の目標であるジュニアの育成にも、きっと一役買ってくれそうですしね(笑)」(鈴木麻綾さん)
※シード権
JLPGA(一般社団法人日本女子プロゴルフ協会)が定める公式・公認競技への出場資格。この資格を有するためには様々な条件があり、主な条件として、JLPGAツアー賞金ランキング上位50位までの者が翌シーズンこの資格を有することができる。また、鈴木プロが主戦としているLPGAステップ・アップ・ツアーで賞金ランキング1、2位の者も翌シーズンLPGAレギュラーツアー前半戦の出場資格を有することができる。