日々の買い物から貯蓄、保険、投資、老後資金まで私たちの生活に欠かせないお金。そんなお金についての知識と、その知識を活用するスキルのことを「マネーリテラシー」と言います。まずは、ファイナンシャルプランナーの國松典子さんにマネーリテラシーを身につけることの重要性についてお聞きしました。
「わざわざお金について勉強するのが面倒、別に知らなくても普通に暮らせればいいなどと思っている人もいらっしゃるかもしれません。でもお金の知識は、実は『知らないと損をする知識』なのです。例えば、あなたが普通預金にお金を預けているとします。『元本保証なので損はしない』と思いがちですが、本当に損はしないのでしょうか?例えば物価が上昇すると物の価格が上がります。どういうことかというと、同じ物を買うのに以前より多くのお金を出さないと手に入らなくなるということです。要するに貨幣価値が下がるのです。つまり、普通貯金に預けているだけでは、実質的にはお金は減っているのと同じ。でもあなたにお金に関する知識とスキルがあれば、物価が上昇した時にはお金を増やして対応するなど、状況に合わせた判断ができるようになるのです」(國松典子さん)
マネーリテラシーを身につけるというと特別なことと思いがちですが、このように普通の生活をする中で「知らないうちに実は損をしていた!」ということがないように、身につけておきたいものなのです。
「日本では義務教育でお金の勉強をする機会はほとんどありません。ですから、お金の知識がないことは決して恥ずかしいことではないのです。私のところにも経営者や医師など、お金に強そうな方もたくさん相談にいらっしゃいます。だからまずは、自分がお金についてどれくらい知っていて、何がよく分かっていないのかを自覚することが大事。それがマネーリテラシーを身につけるための第一歩です」(國松典子さん)
そんな自分のお金に関する知識を確認する際に役立つのが、金融広報中央員会が公開している「金融リテラシークイズ」です。
「このクイズは、5問のみで簡単にチャレンジすることができ、また金融庁が掲げる『最低限身につけるべき金融リテラシー(4分野)』(1.家計管理、2.生活設計、3.金融知識、4.外部知見)についてもバランスよく出題されています。お金について知りたいと思っている人はもちろん、新社会人やアルバイトを始めた学生さんにもおすすめ!お金を稼ぐことの大変さ、大切さを知るタイミングでこのクイズに取り組むことで、お金の有効な使い方、貯め方を学んでもらえたらいいと思います」(國松典子さん)
今回はお金やライフスタイルについてSNSで発信しているインスタグラマーのゆりさんに、この金融リテラシークイズに挑戦していただきました。
……國松さん
……ゆりさん
ゆりさんが金融リテラシークイズに挑戦した結果は、なんと全問正解!元々は超が付く浪費家でお金の知識ゼロだったというゆりさんですが、一念発起しお金について独学で勉強。現在は貯金率40%を誇り、その経験とノウハウをインスタグラムで発信しています。そんなゆりさんが今回マネーリテラシークイズに挑戦してみて疑問に思った点を、ファイナンシャルプランナーの國松さんにぶつけてもらいました。
インスタグラムで発信をするようになってから、お金に関する本をたくさん読んで勉強しました。そうでなければ、今回の金融リテラシークイズは0点だったと思います(笑)
自分で勉強されているのは、すばらしいです。ある程度お金の知識のある人にとっては、クイズ自体は簡単に感じるかもしれませんが、解説まで読むとさらに知識を深められると思いますよ
問1は家計管理に関する問題で、クレジットカードに関するものでしたよね。私もカードは利用するのですが、分割手数料がかからなければカードの分割払いは利用してもよいのでしょうか?支払いを先延ばしにするクセがつくのであればやめた方がいいのでしょうか?
資金管理をしっかりできている人でなければ、やめた方がよいです。クレジットカードはお金を持っていなくても、カード1枚で気軽に買い物ができてしまいますよね。多くのカードは、2回分割払いまでは手数料がかかりません。手数料もかからないし、分割にできると思うと、つい身の丈以上の買い物をしてしまいがちになってしまうものです
わかります!つい分割だし……と思ってしまうんですよね
ですよね。例えば5万円の予算で買い物に行ったところ、10万円の商品の方が気に入って、どうしても欲しくなってしまったとします。クレジットカード払いの2回分割で決済すれば、1回あたりの支払いは5万円になります。『その分、来月はカードの使用は控えよう!』と思っても、つい翌月も同様に分割払いで買い物をしてしまう……ということの繰り返しに。これを繰り返していくと、複数の分割払いの積み重ねが延々と続いてしまいかねません。分割払いのクセはぜひ避けたいところです
なるほど、やっぱりそうですよね。問3には金利の問題がありました。将来どのくらい金利が上がるのかは分からないと思いますが、住宅ローンなどは何を基準に固定/変動金利を選べばよいのでしょうか?
ん~、これは難しい質問ですね。将来の金利の上昇下落を先読みして、その通りに動くかどうかを見極めることは非常に難しく、誰も予測ができないと言われています。まずは、それぞれの金利の特徴について理解した上で、自分自身のライフスタイルとリスク許容度に合わせて考えてみるといいと思います
それぞれの状況やライフプランによっても、変わってくるんですね
そうです。金融機関によっては、変動金利タイプと固定金利タイプを合わせたミックス型ローンもあります。どちらの金利タイプにするか決めかねてしまう方は、ミックス型ローンも検討してみてはいかがでしょう。このローンの場合、金利の状況に合わせて繰上返済をすることで、将来の金利変化によるダメージを抑えることができます。また住宅ローンは長期になりますので、返済期間途中での自在性(繰上返済、金利プランの見直しなどの条件変更)も金融機関選びの際に含めて検討することが大切です
ミックス型というものがあるのは知りませんでした。自分でも調べてみようと思います。金融リテラシークイズは、自分の知識の確認や正しいお金の使い方を意識するよいきっかけになりますね。間違えたところ、分からなかったところを深堀りして改善していけば、今後の家計管理に大いに役立つと思いました
確かに、やってみるとクイズの内容以外にも、お金について興味が持てるようになりますよね。クイズの内容以外でも、お金について気になっていることはありますか?
家計管理についてもう少しお聞きしたいです。やはり家計管理をする上で家計簿をつけるのは必須ですか?
『家計簿をつける=お金が貯まる』わけではありませんが、家計簿をつけることで『家計の見える化⇒家計の振り返り・チェック⇒家計の検証・改善』という流れが作れる効果があります
やっぱりお金の流れを把握する上で、家計簿は効果的なんですね
ただ『家計簿貧乏』という方もいるので注意が必要です。これはずっと欠かさず家計簿をつけているのですが、家計簿をつけることに満足して何もしない人です。家計簿をつけること自体ではなく、その後どうするかが大切になります
家計簿をつけて満足しないことが大事なんですね。それから、家計管理をする上で特別予算(慶弔費や家電が突然壊れた時の購入費など)は必要でしょうか?
特別予算(予備費)を設けるのはとても大事なことです。突然の出費に備えるのはもちろん、家計管理をあまりキチキチし過ぎると、予算通りに回らないこともあり、それでストレスが溜まって続けられなくなってしまいます。それを防ぐためにも特別予算を設けるのはおすすめです
その確保の仕方として、1.特別予算を分けずに毎月10万円を全額貯金。出費がある時に貯金を崩して支払う、2.毎月5万円を貯金(原則崩さない)。5万円を特別予算にして支払いは特別予算から出す、といった方法だとどちらが家計が安定しますか?
1と2ですと、2の方がお金が貯まりやすいと考えられます。その上で取り崩さない5万円はできるだけ手元に置かずに引き出しにくい口座に入れてしまうのがおすすめです
取り崩し防止には、引き出しにくい口座を利用するといいんですね
そうです。ぜひやってみてください
それから今、積極的に貯金を運用に回しているのですが、総資産に対して、どのくらいの割合で運用するのが適切なのかが分からず手探り状態です。生活防衛費や3~5年以内に使う予定の特別予算が貯まっていれば、それ以外の余剰資金はすべて運用に回してもいいのでしょうか?
生活防衛費という概念があるのがすばらしいですね。収入がゼロになってしまった状態を想定して、個々の事情に合わせて6ヶ月~1年分の生活費を準備しておくとよいでしょう。総資産から割合を決めるというよりも、お金をいつの時期にいくらくらい使うかのスケジュール(ライフイベント表)を作成されると、どのくらいの金額をいつまでに準備したらよいのかを見える化できます
ここでも、見える化することが大事なんですね
そうです。ライフイベント表を作成したら、それに合わせてキャッシュフロー表を作成すると、よりお金の流れが具体的に見えてきます。現在の家計簿の年単位のものと考えると分かりやすいかもしれません。予実(予算実績)管理できますので、都度修正してメンテナンスしながら使うのがおすすめです。この表を作成することで夢を叶えられたという人もたくさんいるので、ぜひチャレンジしてみてください
なるほど。ライフイベント表作成は少し難しそうですが、私にも作れますか?
大丈夫です。管理表のフォーマットはFP協会のホームページなどに無料でダウンロードできるものがあるので、利用してみてくださいね
今回、金融リテラシークイズで自分の知識レベルを再確認し、普段疑問に思っていることをプロの方に丁寧に解説いただいたことで、私自身のマネーリテラシーが格段にアップできたと感じました。独学でお金の知識を深めるにも限界があるので、自身の家計や金融知識をブラッシュアップするためにも、定期的に第三者に相談する機会を設けることの大切さを実感しました。この度はこのような貴重な機会をいただきありがとうございました!
今回の「金融リテラシークイズ」に挑戦することが、マネーリテラシーを身につけるための1つの大きなきっかけになりそうですが、普段の生活の中ではどのようなことを心がけるとよいのでしょうか。マネーリテラシーを高めるための3ステップを國松さんに教えていただきました。
【ステップ1】お金に興味・関心を持ち、お金に向き合う
例えば、ニュースやネットでお金関連の情報やコラムに目を向ける、家族や友人とお金に関する会話をするなどしてみましょう。最初は分からなくても、用語に慣れれば段々理解できるようになっておもしろくなってくるはずです。あわせて自分のお金の現状をしっかり向き合うことも大切。浪費家の人の中には「現状を知るのが怖い」という人も多いですが、「見て見ぬふり」をやめる勇気が必要です。
【ステップ2】お金の流れを『見える化』する
家計簿をつけるのが面倒という方は、スマートフォンの家計簿アプリを使用するのもよいでしょう。無料でレシート読み取り機能や自動集計してグラフ化までしてくれるアプリもあります。見える化することで、初めて気付くことも多いです。特に自分が毎月いくら何に使っているのか分からないという人は、まず現状を知ることから始めましょう。
【ステップ3】小さなチャレンジを繰り返して、失敗(損)を恐れない
お金に関して無駄遣いをしたことがない、損をしたことがないという人はいないと思います。貯蓄でも投資でも、できるだけ早いうちからチャレンジして、自分に向いている方法を模索しましょう。そこから得た経験を今後に生かせればよいと思います。年齢が若いほど、後半の時間がありますのでリカバリーは可能です。
マネーリテラシーを高めたいけれど何から始めたらいいか分からないという人は、まずはこの3ステップから始めてみてはいかがでしょうか。私たちの生活には欠かせないお金。その知識と上手な付き合い方を学んで、できるだけ有効活用したいですね。