韓国語は日本人にとって覚えやすい言葉
まず、韓国語とはどんな言葉でしょう。日本語との共通点はありますか。
「韓国語も日本語も、基本的な語順は『主語~目的語~動詞』。漢字由来の言葉も多いので、日本語に一番近い外国語ではないかと思います」(粧子さん)
例えば、「簡単」は「간단(カンダン)」、「約束」は「약속 (ヤクソク)」、「気分」は「기분 (キブン)」など、日本語と同じような音。ドラマを見ていても、「あれっ?!今、日本語で言った?」と思えそうです。
「韓国語はハングルで表されます。ハングルは15世紀に、それまで一部の人しか理解できなかった漢字表記を、多くの民衆が読めるために生まれたという歴史があります。だから見慣れると理に適い、誰でも覚えやすい作りになっています」(粧子さん)※ハングルの歴史については諸説あり
ハングルの表記はローマ字に近い
では、ハングルとはどんな文字なのでしょう。
ハングルは、日本語のローマ字表記と同じように、母音と子音の組み合わせで示されます。基本となる母音は10、子音は9。さらに、日本語の「製」の「衣」や、「聖」の「王」にあたる位置に、「パッチム(終声)」という文字が付くこともあり、読み方が変わります。
「例えば、『사』という字を見てみると、『ㅅ』が子音のs、『ㅏ』が母音のaなので、saと読みます。しくみが理解できれば、意味はともかく、音だけなら半日もあれば読めるようになりますよ」(粧子さん)
ちなみに、ハングルとは、日本語のひらがなやカタカナと同じように、文字の種類を示す名称。言語そのものではないので、韓国では「ハングル語」という言い方はしません。
まずは簡単なあいさつから
次に、ドラマにもよく出てくるあいさつについて見てみましょう。特徴としては、オフィシャルな場所で使う丁寧な言い方と友人同士で使うようなくだけた言い方があること。基本的なあいさつでも、以下のようにそれぞれ異なります。
上下関係を意識して、言葉を使い分け
丁寧な言い方とくだけた言い方がはっきり分かれている韓国語。丁寧な言い方を「존댓말(チョンデンマル)」、くだけた言い方を「반말(パンマル)」と言います。「~ハムニダ」「~イムニダ」「~ヨ」などの語尾が付くのがチョンデンマルで、日本語の「です・ます」にあたります。パンマルにはこのような言葉は付きません。だからパンマルかチョンデンマルのどちらを使っているのかで、ドラマの登場人物の立場も明確になります。
「上司や父母には必ずチョンデンマル。特に親にため口を言うようなことはありません。また、日本よりずっと上下関係には敏感で、年下からため口で話されると『アイツは何でパンマルで言ってくるんだよ』と、ぼやくようなセリフもよく出てきます。日本の感覚で見ていると、それほど気にならないんですけどね」(粧子さん)
ドラマ発信の流行語にも注目
日本と同じように、韓国もドラマ発信の流行語があります。
「しばらく前に流行ったのが、『최최차차 (チェチェチャチャ)』。『推し(好きなアイドル)は推しで好きだけど、チャウヌは別格』を短くしたもので、チャ・ウヌというイケメンアイドルを讃えた言葉です。彼が主演するラブコメから生まれ、『얼굴천재(オルグルチョンジェ)=顔の天才』という言葉と共に話題になりました」(粧子さん)
SNSなどで使いやすいよう、長い言葉を「チェチェチャチャ」と縮めて使うのも流行語の特徴。この点は日本と同じですね。
情熱度が100%詰まった「사랑해요 (サランヘヨ)」
韓国ドラマで不動の人気は、恋愛ドラマ。なかでも「初恋の人に再会して……」といった初恋パターンは、いつの時代でも人気です。一方、最近注目されているのが軍人モノ。厳しい任務を乗り越えるストーリーや制服姿のカッコよさで人気を集めています。 そんな中、韓国語最強の愛の言葉は「사랑해요 (サランヘヨ)=愛しています」だと言われています。
「사랑해요(サランヘヨ)は、気持ちがドップリ入っていて、ドラマでも涙なみだで切々と訴えるようなシーンで使われます。それよりも軽くて『好きだよ』くらいのノリで使われるのが、『좋아해요 (チョアヘヨ)』です。それから、『보고싶다 (ポゴシプタ)=会いたい』も、恋愛ドラマ鉄板のフレーズですね」(粧子さん)
ドラマから読み解く韓国人の日常生活
恋愛ドラマの主人公に自らを投影して、ドラマと日常生活がリンクするのは、よくあることです。
「基本的に韓国人の恋愛は日本人よりも意思表示が明確。言葉でちゃんと言ってほしい、と思っているので、『君がいないとダメ』とか、『ボクの夢を見て寝てね』なんて、日本人なら照れて言えない言葉も、抵抗がないみたいです」(粧子さん)
そんな韓国人カップルの恋愛情熱度の高さを示すのが、「付き合って100日目……」といった2人だけの記念日。3ヵ月や半年といった単位ではなく、日にちがピンポイントであることにこだわります。
「起点となるのが最初の1日目。これを『1일이다 (イリリダ)』といって大事にしていて、『今日がワタシたちの1日目だね』なんて告白シーンでも使われます」(粧子さん)
ドラマの中だけでなく、現実生活でも節目の日を忘れようものなら、ケンカや仲たがいに発展することも。記念日は、韓国人の恋愛事情を語る上で重要なポイントです。
リアリティ重視の韓国社会派ドラマ
恋愛ドラマと並んで人気があるのが、刑事モノや医療モノなどの社会派ドラマ。韓国の作品を元にリメイクされた作品も数多くあります。その人気の秘密は何でしょうか。
「韓国映画は世界の映画祭の受賞作品も多く、人気があります。その理由の一つに、闇を描くのがうまく、黒の使い方が上手だと言われています。現実的で、リアリティを追求し、ストレートに表現する。かなり深いところまでえぐるので、見ていて辛くなることもあるほどです。その流れがテレビドラマにも届き、社会派ドラマの人気も高いと思います」(粧子さん)
そんな社会派ドラマでよく使われるのが、「괜찮아요 (ケンチャナヨ)=大丈夫だよ」と「잘했어요(チャレッソヨ)=よくやった」。難局を乗り越えた登場人物を讃えるシーンで聞くセリフです。また、「잘했어요(チャレッソヨ)」はスポーツの応援で使われることもあります。
その他に社会派ドラマでよく出てくる言葉に、「구급차 (クグプチャ)=救急車」や「도와주세요 (トワジュセヨ)=助けてください」があります。緊迫したシーンを思い起こしますが、覚えておくと、韓国旅行での緊急事態の際も使えるかもしれません。
日本のドラマよりも長くて複雑なストーリー
さて、日本のドラマは、3ヵ月単位、10話程度で展開されることが多いですが、韓国のドラマは?
「短編で16話、中編で20~50話、長編で100話くらいと言われています。ストーリーが深くて複雑なものが多く、人気が出ると、脚本を変えて、延長されることも当たり前。俳優のスケジュールや体調によって、降板や途中交代も実は多いんです」(粧子さん)
思わぬ制作の裏事情があるのですね!
SNSを活用して、「推し」をグッと身近に
ドラマを見るだけでなく、SNSを活用して、俳優や作品にもっと近付くのが、今どきの楽しみ方。俳優のInstagramアカウントや、Vライブというアーティストごとの動画サイトをフォローすれば、ドラマ以外のいろんな姿を楽しめます。韓国語でコメントを付けたいと思ったら、翻訳サイトを活用。ハングルでコメントを書いたり、韓国語のコメントを日本語に翻訳してみて、自分が言いたい内容に近ければ、コピペして利用。韓国語ができなくても、現地のファンと一緒に楽しめます。
もちろん、「推し」の情報を満載にした日本人ファンのブログやインスタも多数あるので、日本語でも楽しめます。
韓国語を覚えるなら、ドラマのフレーズから
最後に、韓国語習得のために韓国ドラマを使うメリットを粧子さんに教えていただきました。
「文法書などで勉強するよりも、セリフやフレーズで覚えたほうが、断然定着率が高いんです。それはドラマのシーンで言葉を覚えるから。こんな時にはこういう言い方をするとか、使い分けのニュアンスなど、ドラマの中にはいろいろなことが詰まっているし、何より楽しいです!私はそれで続けられました」(粧子さん)
韓国ドラマを視聴するだけでも勉強になり、特に発音とリスニングについては、どんな参考書よりも自然な韓国語を学ぶことができます。また、韓国ドラマを見ていて気に入ったフレーズや、使えそうなフレーズがあった時はノートなどにまとめておくとより効果的です。
韓国ドラマを見ながら楽しく、そして効率的に韓国語の学習も始めてみてはいかがでしょうか。