海外の現地法人とメールや電話のやり取りをしたり、海外出張に頻繁に行って取引先と英語で交渉したり…そんな風に仕事でグローバルに活躍するのって憧れますよね。
そんな憧れの仕事を実際にしてきたのが、ANNコンサルティング株式会社代表の野澤夏子さん。電機メーカーの輸出入部門で調達や契約を担当後に、独立。現在は通関士の資格を武器に、輸出入関連のビジネスコンサルタントとして幅広く活躍しています。
「品質改善のために訪れた海外の現地法人で外国人とコミュニケーションしたり、仕事の流れでプライベートでも仲良くなったり…とても楽しかったです」と語る野澤さんのように、海外関連部門で活躍したいという人にオススメなのが「通関士」の資格です。
「通関士」は耳慣れない資格かもしれませんが、貨物の輸出入の際の通関手続を一手に引き受ける仕事。貿易関連唯一の国家資格で、いわば貿易のスペシャリストです。実際にどんな場所で活躍できるのか、野澤さんに教えていただきました。
「通関士」としての技能を最も発揮できるのが「通関業者」です。通関業務専門の会社のほか、航空会社の関連会社や、運送・物流会社の通関部門に勤務して通関業務を行います。事務作業に加え、海外からワインや衣類などの貨物が到着した際に貨物検査の立ち会いをしたり、必要な税金を納めたりします。通関業務をスムーズに行えば、貨物が素早く市場に流通することになるので、会社にとっても大きな利益に繋がります。
また、通関業者以外でも、知識を活かしてさまざまな会社で活躍することができます。実際に資格取得者の多くが働いているのが、メーカーや商社などの輸出入関連部門。
具体的な仕事はというと、お客様への請求書を英語で作成したり、貨物にかける保険を選択したり、為替リスクを考えたりといった、貿易に関わるさまざまな実務を行っています。
「例えば、自社で取り扱っているシャンプーを海外に輸出しようとする場合、その製品に、その国で禁止されている化学物質が含まれていないか確認する必要があります。また海外から輸入した食品が通関手続で止まっている場合に、必要な書類をそろえたり、輸出者に問い合わせをしたりします。そうすることで、次の輸入の時にはスムーズに通関できるようになります」(野澤さん)
そういった細かいチェックを経て、安心、安全に自社の製品を輸出入できるようになるのですね。
現在の日本では、スマホからアパレルまで、身の周りにある品物のほとんどが海外生産。また最近は、醤油や日本酒、果物など、日本の食品を海外の市場で売ろうとする企業も増えているそう。
ちなみに2016年の日本の輸出入総額はなんと約136兆円! それらの品物のほぼすべてに通関業務が必要なのですから、通関士の需要が高いのも納得ですね。
日本の大企業はもちろんのこと、中小企業にも貿易実務の必要な部署があることが多いので、就職先は幅広いと野澤さんは言います。正社員はもちろん、派遣業界でも昔から貿易実務のニーズが非常に高いそう。
「『通関士』を持っていれば、『すぐに来て!』と歓迎されるケースは多いようです。いったん家庭に入った女性が再就職しやすくなるのはもちろん、時短勤務など希望の条件で働ける可能性も高いです」(野澤さん)。
ところで、「通関士」の仕事に英語力がどの程度必要なのかも気になるところ。「通関士試験には、申告書を作成する科目があるので、高校卒業程度の英語力は必要となります。ただ、必要な単語はある程度決まっているので、実務経験を積むうちに自然と身についていくでしょう」(野澤さん)
そんな「通関士」の資格ですが、野澤さんは「キャリアが描きづらい、一般職の女性にも取ってほしい」と言います。
「正社員であっても、一般職の女性が30~40代になった時に、先が見えなくて不安になることがあると思います。そんな時、『通関士』の資格を取ると、キャリアアップに繋がるんです。中でもグローバルに活躍したいという夢がある人は、海外部門への異動が叶いやすくなるのでオススメです。文系の女性は、理系と違って仕事が専門的でなく、かといって管理職になる道も険しいケースが多いと思いますが、『通関士』の資格を取ると文系でもスペシャリストになれるんです」(野澤さん)
「通関士」は国家資格で、ある程度難易度が高いことが周知されているので、取得すれば強力なアピールポイントになるよう。転職でも社内でのキャリアアップでも武器になるのが、「通関士」の資格なんですね。
text:安本真留美