鈴木さんは富山県の砺波市出身。「東大に行ける人は1年に1人いるかどうかくらい」という、決して有名ではない地元の高校に進学するも、見事現役合格を果たしました。しかし、その後は必ずしも順風満帆ではなかったようです。
「東大に現役合格できたのは、多分田舎の高校だったのが逆によかったのでしょうね。周りに遊ぶところが全然なくて勉強くらいしかすることがなかったんですよ(笑)。東京の高校に通っていたら、遊んでしまって勉強どころじゃなかったかもしれません。ただ、やっぱり東大はすごい人ばかりが集まっている所で、入ってからが大変でした。1~2年生の時は真ん中くらいの成績だったものの、3年生以降は下の中くらいになっちゃって。
本当は研究職に就きたかったんですが、こんなんじゃまともに勝負できないと思ったんです。いろんな資格を取得することはその当時からひとつの趣味として取り組んでいたのですが、根底には、東大で挫折を感じていた自分が現実逃避する場という思いもありました」
当時東大生協の学生委員会に所属していた鈴木さんは、月1発行の広報誌を制作していました。そこで先輩から受け継いだ「資格道」というコーナー(いろいろな資格試験に挑戦し、受験体験記のドキュメンタリーを執筆するコラム)を担当し、レポート原稿制作のために毎月数々の資格取得にチャレンジしていたそう。
「最初に取った資格は、ワープロ検定2級。それこそ、このコーナーを担当すると決まったタイミングで出願〆切に間に合うものがそれくらいしかなかったからです。大学生の時に30~40種類は取ったと思うのですが、書籍代や受験料って大学生にとってかなりの出費で、実は借金までしていたほどです(笑)。
その後大学院修士2年の時に『シカクロード!!!』という本を出版させていただいたのをきっかけに、資格をたくさん持っていること自体を活かして資格の専門家として仕事をすることを意識し始めました。僕の場合は個々の資格を直接仕事で使っているわけではないので、学歴と資格のどちらが役に立つかという判断は難しいのですが、様々な資格を取得していたおかげで挫折後の道が開けたので、その点では本当に資格に感謝していると言っても過言ではないですね」
そんな鈴木さん曰く「学歴はベース、資格は肉付け」とのこと。
「学歴はやはりある程度大事だと思っています。特定の物事を頑張ってきた、結果を出してきたということの一つの目安でもあるので、おろそかにすることはできません。ただ、どうしても結局は大学の偏差値・ランクという軸だけで評価されてしまいがちなので、よっぽど専門的な学部に進まない限り、その人のパーソナリティーを特徴づけたり、差別化させたりするものではありませんよね。
資格は自分の得意分野やバックグラウンドを客観的に周りに示せるもの。経歴にアクセントやエッジをきかせ、プロフィールに彩りを添えるものだと思います」
とはいえ、資格を取るのも簡単なことではありません。鈴木さん自身も難関だと言われている気象予報士の試験には5度目の受験でやっと合格するなど、失敗も経験しながら常に試行錯誤や努力を続けています。
「受験勉強も資格の勉強も同じですが、やはり適切な戦略や目標を立てて自分なりの勉強法を確立することが大切。試験勉強の過程では学力だけでなく、自己管理力や課題解決力、段取り力といった力も大いに磨かれます。こうして知らず知らずのうちに身に付いたスキルはビジネスの場面でも必ずや役に立つことでしょう」
ポイントは自分に合った勉強法を探すことで、それにはまず自分の性格、志向、特性、長所短所といった自己分析をすることが重要とか。自分を見つめ直すいいきっかけにもなりそうです。
「実は不況の時ほど資格取得人口が増えると言われています。それはいざという時につぶしがきく、つまりリスクを分散できるからなんですよね。世の中には特定の資格を持っていなければできない仕事もたくさんありますし。
大人になってから学歴を更新することはなかなか難しいですが、資格取得はいくつになっても幅広くチャレンジできるもの。それで巻き返せることもありますから、人生に彩りを添える『武器』のひとつとして資格という選択肢を視野に入れてみるのもよいのではと思います」