簿記3級の取得からスタートした、高卒シングルマザー・松岡由起子さんの公認会計士への道。初めての公認会計士試験で不合格だったことがきっかけで、限りある時間を効率的に使うための「超コスパ勉強法」を編み出し、見事、難関資格である公認会計士の試験に合格、事務所開業の夢を叶えました!
vol.1では、「超コスパ勉強法」の最初のステップとして、普段の「勉強時間」と「学習道具」の見直し方を教えてくれました。Vol.2では、より具体的な勉強法について伺います!
――あらためて、「超コスパ勉強法」とはどんなものなのでしょうか?
とことん「効率性」にこだわった試験対策の学習法です。すでにお話ししたように、はじめに時間と道具の有効活用で、試験勉強に取り組む環境を整えます。その次に、「教科書の目次」に着目して、「理解ワールド」という、私が考案した独自のまとめを書くんです。そしてさらに、合格までのステップアップとして、「試験で得点を稼ぐコツ」や「効率よい復習方法」といった勉強術も合わせて行います。
――それでは、「超コスパ勉強法」の具体的な実践方法についてお聞かせください。
すぐに実践できるのが、「教科書の目次」の活用です。私も最初は、教科書の一字一句をひたすら丁寧に読んでいたのですが、それは時間の無駄でした。全体像を把握せずに教科書を読んでいるだけだと、教科書と違う角度から出題された時に、どこに書いてあった内容が問われているのか分からず、混乱してしまうんです。
そこに気が付いて取り組んだのが「教科書の目次で全体像をつかむ」ことでした。
目次を見ただけで各項目の内容をイメージできるようになると、問題集を解いていても、今自分が教科書のどの部分に取り組んでいるのかが分かるようになります。すると、すぐに教科書の該当ページを開くことができて、勉強時間の短縮にもなりますよ。
――「教科書の目次で全体像をつかむ」ために、どんなことをすればよいのでしょうか?
目次を活用して理解を深めるのに役立つのが、私が考案した「理解ワールド」です。
「理解ワールド」とは、教科書1冊分の目次を1枚の紙にまとめたもの(上の写真)で、もちろん私の造語です。
公認会計士試験に失敗した最初の年に、勉強法を見直した際、難関試験に合格するには丸暗記だけでなく「内容の理解」が大切だと気が付きました。そこで、教科書の内容を効率よく理解するために、「理解ワールド」を考えついたんです。
この「理解ワールド」を紙に書いて、ひたすら覚えることが、「超コスパ勉強法」の大事なステップになります。
――「理解ワールド」は、どのように書けばよいのでしょうか?
1枚の紙に、教科書の目次にある章立てと項目を書いて、それぞれの関係を矢印や記号などでつなげていきます。
例えば、食品に関する教科書の場合、1章「野菜」、2章「肉」、3章「魚介」と分けて並列に書いて、さらに1章の枠の中に、項目1「果菜類」、項目2「葉茎菜類」、項目3「根菜類」がある、というようにまとめていきます。
目次に使われている言葉以外は基本的に使わず、また細かい点まで書かないことがポイントです。「2章は1章の逆説を述べている」とか、「項目2では項目1の内容を詳しく解説している」というように、それぞれの章立てや項目のつながりが理解できるようになれば十分。「理解ワールド」は、あくまでも目次の内容を理解して、一つにつなげることが目的ですから。あれこれ書き込み過ぎると、書いたことに満足して終わってしまいますよ。
――「理解ワールド」を実践して、どんな効果がありましたか?
矢印を引いたり、色をつけてまとめることで、目次の章立てや項目のつながりを、頭の中で整理することができました。問題を解いている時も、「あ、これは1章の項目1の話だ」と、教科書のどの部分の内容なのかが思い浮かぶようになり、理解度がかなりアップしたんですよ。こうして理解を深めていくことで、応用問題にも対応できるようになりました。
時間と道具の有効活用で学習環境を整え、さらに「理解ワールド」による教科書の理解が済んだら、その後はどうやって、合格に向けたステップアップをしていけばよいのでしょうか。
松岡さん独自の「超コスパ勉強法」の仕上げとなるのが、合格までのステップアップにつながる勉強術です。ここでは、松岡さんがおすすめする、効率よく合格を目指すための勉強の進め方を、4つのステップにまとめました。
松岡さんいわく、特にステップ2でご紹介した「問題集をくり返し解く」ことが、効率よくステップアップするためのポイントになるとのこと。松岡さんの場合は、3冊の問題集に取り組むよりも、1冊の問題集を3回解くほうが、同じミスをくり返さず、基礎をしっかりとマスターするには効果的だったそうです。
――公認会計士の勉強に約3年かかっていますが、モチベーションを維持できた秘訣はありますか?
言い訳をつくらないことですね。仕事が忙しいとか眠たいとかを言い訳にしないで、がんばってみてください。長い人生を考えたら、資格取得の勉強なんて数年のこと。何百回、転んだとしても、その回数よりたった1回だけ多く立ち上がれば、勝つことができます。ポジティブに考えて、やるだけやってみましょう。
もしも不合格だったとしても、「やるだけやったけどダメだった」と納得できれば、「じゃあ新しい方法を考えよう」と切り替えられるので、まずはやりきることが大切です。
家族や友人など、まわりの支えも力になるので、勉強させてもらえる感謝の気持ちも忘れないでくださいね。そうしてたどり着いた「合格」は、何より自分の自信になりますよ。
――資格を取得して良かったことと、公認会計士の仕事のやりがいを教えてください!
高卒で学歴のないシングルマザーの私でも、公認会計士の資格を取得することで、大手監査法人に就職することができました。監査法人では、仕事のやり方、考え方、新しい知識など、学ぶことがとても多いです。就職して1年目から、企業の経営者や部長クラスの方と対等にお話ができるのも、資格という武器があるからこそですね。
また、息子に不自由な思いをさせないだけの収入を得ることもできていますし、自分の公認会計士兼税理士事務所を開いてからは、時間の融通もきくようになり、息子と過ごせる時間も増えました。
これからは、税金や相続などの相談に乗るだけでなく、自分と同じ境遇のシングルマザーの方が、資格取得を通じて自立していく、バックアップもしていきたいと考えています。
スキマ時間を作って、効率よく取り組めば、仕事を続けながらでも、また家事や育児と両立させながらでも、難関資格の取得を目指すことができます。「資格を取りたいけど忙しくて……」とためらっている方は、ぜひ松岡さんの「超コスパ勉強法」を試してみてくださいね。
自分に合った学習法は人それぞれ。資格にチャレンジする中で、自分なりの学習法も見つけて、取り組んでみましょう。そうすれば、松岡さんのように、簿記3級から公認会計士までキャリアアップすることも、夢ではありませんよ。
高卒シングルマザーから公認会計士・税理士になった、松岡さんの「超コスパ勉強法」はいかがでしたか? 時間・場所等の制限をものともせず、道を切り開くお姿はとても感銘を受けますね。
ここでは、ロックミュージシャンを目指しながら、あるきっかけから人生の方向転換をし、公認会計士の資格を見事取得した井藤丈嗣さんのお話をご紹介します。
プロフィール
松岡由起子さん
公認会計士・税理士。高校卒業後、税理士事務所に勤務。公認会計士試験に合格後は有限責任監査法人トーマツに勤務し、国内監査業務に従事。2016年より、税理士である父と共に、公認会計士兼税理士事務所にて、税務業務・会計業務に従事している。
著書「高卒シンママ会計士」(中央公論新社)、「シンママ公認会計士だから言えるこっちを選べば1円でも得!節約体験77」(主婦の友社)
公式ブログ:https://ameblo.jp/chuchu1ip/