前編では保育士という仕事の奥深さや、マニュアルのない日々の業務を、円滑にすすめるためのポイントについて伺いました。後編では保育という仕事のやりがいについて、具体的なエピソードとともに詳しく伺っていきます。
――子ども目線という言葉をよく耳にするのですが、どう考えれば子ども目線で見ることができますか?
一番シンプルなのは「自分が子どもだったらどう思うのかな?」と考えるのが分かりやすいと思います。例えば子どもが真夏に、どうしても好きなキャラクターの顔がついた長袖のTシャツを着たがったとしますよね。
大人としては、汗もかくし、熱中症になったらと心配で半袖のTシャツを着させたいのですが、自分がその子だったら好きなキャラクターだからそのTシャツが着たいわけですよ。そうであるならば、自分だったらどうされたら嬉しいかを考えると、いろんな選択肢がでてきますよね。例えば、長袖しかなければ袖をめくって着せてあげる、一度着たいと言っているTシャツを着て、外に出て暑いということを体感させるなど、自分がその子だったらと考えるのが、シンプルで分かりやすいと思います。
そのためにはさっきもお話ししたように普段から子どもをよく観察して、その子がどんなことに関心を持っているかを把握しておくことが重要なんですね。
そして、子どもにいっぱい失敗させてあげて欲しいです。子どもは自分で失敗しないと学ぶことができません。大人が最初から手をだして成功に導くのではなく、自分で失敗から気付けるような子にしてあげたほうがよいと思います。
――てぃ先生が、子どもから学んだことを教えてください。
今は4歳児のクラスを担当していますが、この子たちを見ていて、ときには自分の思っていることをはっきり伝えた方がいいんだなということを学びました。
例えば、なにか嫌なことをされたとき、大人だったら「あ、大丈夫です」とお茶を濁してやり過ごす人が多いと思います。でも子どもは、嫌なことがあったらその場で「嫌だ」と言います。そうすると相手の子は、すぐに謝って次から同じことはしなくなります。自分の思っていることをはっきり伝えることが、相手にとっても成長のチャンスになることもあると思います。
また、子どもは自分がやりたいことを、「やりたい」とはっきり言いますし、「これが好きだ」とストレートに表現します。そういうのを見ていると、もっと大人も素直に、シンプルに自分の思っていることを表現しても良いのではないかと感じます。
さらに、これは子どもからというより保育という仕事を通じて学び、身についたことですが、気遣いができるようになったと思います。保育では常に子どもの状態を観察、予測して先回りをする必要があるので、普段の生活でも、相手が今どういう状況で、どんなことを欲しているのかなというのは、以前よりも考えられるようになりました。
以前の自分を良く知る父親にも「最近気遣いができるようになった」と言われますので、やっぱりこれも保育という仕事を通じて子どもと接するなかで、学んだことだと思います。
――保育士に向いているのはどんな人ですか?
「子どもが好きな人」というのは大前提としてもちろんなのですが、気遣いができる人ですかね。気付くことができて、空気が読める人が向いていると思います。
それができないと、何か問題が起こってから、場当たり的にその対処に追われるような形になってしまいます。ですから事前に気付き、先回りして準備ができるタイプの人がいいですね。
それができれば、手先が不器用な人でも心配しなくて大丈夫です。ピアノの最低限のスキルは必要ですし、園の方針があるので一概には言えない部分もあるのですが、園に入れば他にピアノがうまい先生がいたりしますので、必要以上に心配することはありません。
――保育士になりたいと考えている人が、今のうちにやっておいたほうがよいことはありますか?
保育士としての仕事は現場に出て場数を踏むしか無いので、現場で経験を重ねる必要があります。新卒から3年間ぐらいは、いろんなタイプの子どもと接するなかで、失敗もしつつ、先輩にサポートをしてもらいながら対応の仕方を学んでいきます。
そうやって3年ぐらい経つと、例えば1年で20人だとしてその3年分、つまり60人の子どもたちと接して学んだストックが自分の中にできてきます。なので、「このやり方でうまくいかなかったら、あの子でうまくいったこのやり方でやってみよう」という感じで、その子にあった接し方が自然とできるようになってきますので、最初は臨機応変に対応できなかったとしても心配いりません。
もし機会があるのならば、ボランティアやアルバイトなどでどんどん保育の現場に出て、経験を積むのは良いことだと思います。また、手遊びを1ヵ月に1個ずつ覚えていくなど、現場に出なくても学べるスキルを身につけておくことも大事だと思います。
――保育という仕事の、どんなところにやりがいを感じますか?
卒園式で自分の受け持った園児が卒園していくのを見たときや、卒園して数ヵ月経ってから遊びに来た園児を見て成長したなと感じたときは感動する、という保育士は多いですね。
もちろんそれも感動するのですが、僕は例えば、ご飯を食べるのを嫌がっている子がいるときに、自分のアプローチ方法がうまくハマって、ちゃんとご飯を食べてくれたときの、「ヨッシャー」という瞬間や、ちょっとしたことで泣いてしまった子どもを、お母さんが迎えにくるまでの10分の間で笑顔にしてお母さんに引き渡すことができた時の「よかった!」というような小さな達成感が好きです。
そういった、子どもの成長を見ること以外の、自分の中での達成感は非常にやりがいになっていると思います。
『三つ子の魂百まで』と言いますけど、この時期の保育は子どもたちの将来にも大きく影響してくるので、「1人の子どもを育てている」というよりは、「1人の人間を育てている」という意識があります。そういった部分にやりがいや達成感を感じることができるのが、やはり保育士という仕事の一番の魅力ではないでしょうか。
――てぃ先生、最後にひと言お願いします!
保育士は日々の業務の中で達成感を感じながら、子どもたちの成長をサポートして、1人の人間の「未来をつくる」ができる素晴らしい仕事です。子どもが好きで子どもと一緒に成長していきたいと考える人には最高の環境です。頑張ってください!
――てぃ先生、本日はありがとうございました!
国としても、待機児童問題の解消に向けて本腰を入れる改革が進んでいく中で、保育士の待遇や賃金も改善されて、よりよい環境で働けるようになることが期待されています。てぃ先生の話に共感した!という方は、保育士の資格にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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