一人息子を育てながら、超難関といわれる国家資格・公認会計士を取得し、事務所を開業した松岡由起子さん。そのストーリーを語った著書『高卒シンママ会計士』が話題になっています。
高校在学中に簿記検定3級の学習をスタートし、結婚して一児の母になってからも資格の勉強を続けたという松岡さん。その後シングルマザーとなってから、24歳で簿記1級に合格、27歳で見事公認会計士の資格を取得しました。
まずは彼女と資格との出会いや、当時の学習方法についてお話を伺います。
――簿記との出会いは? どんなきっかけで資格の勉強を始めたのでしょう?
私は高校在学中に息子を出産しましたが、高校3年の1月が出産予定で、自宅学習になったんです。そのとき、税理士の父の勧めで簿記検定3級に挑戦しました。
もともと数学は苦手で、高校1年の定期テストは毎回10点以下と散々。高校2年以降は数学の授業を一切選択していなくて、数字自体にも苦手意識があったので、正直、不安でした。でも、簿記は電卓が使えるし、学校の数学みたいに難しい計算式はいりません。足し算・引き算・掛け算・割り算ができれば大丈夫なので、数学の成績は関係なかったですね。
――簿記2級を取得してから簿記1級合格まで、約3年かかったとか?
簿記3級、2級と順調に一発合格しました。でも、そのときの勉強の仕方は、市販の教科書を読んで丸暗記するというもの。疑問が湧いても解決しようとせず、理屈・根拠・理論を理解することを全部とばして、ただ覚えるだけだったので、簿記1級の学習のときには伸び悩みを経験しました。
それでも当時は「理解が足りない」という問題点に気づかないまま、「勉強時間を増やす」「とにかく量をこなす」という非効率な勉強法で簿記1級の試験も強行突破しました。後でお話ししますが、だから次の公認会計士試験でも苦労することになりましたね。
それでも勉強を続けたのは、21歳で離婚して、「とにかくお給料のいい就職」をする必要に迫られて必死だったからです。高卒でも、資格を持っていれば相手に自分の能力を理解してもらえます。勉強嫌いだった私でも、息子の笑顔のためなら真剣に取り組むことができました。
――公認会計士への挑戦を決意した理由は?
最初は、簿記1級を取って税理士事務所に就職する予定でした。ところが、一緒に勉強していた友だちから公認会計士を目指すと聞いて、初めてその職業の存在を知ったんです。医師・弁護士と並ぶ日本三大国家資格といわれていると聞き、「かっこいい!」「私も取りたい!」と、単純な理由で始めました(笑)。
学歴がない分を補いたくて、国家資格という肩書きが欲しかったんです。
簿記1級を持っていれば就職はできると思いますが、残業が増えると育児と両立させることが難しくなるかもしれません。だったら公認会計士まで取得して、自分で事務所を開けば、時間に融通が利き、シングルマザーでも子育てと両立できると考えました。
――公認会計士試験への挑戦1年目は、どんな結果でしたか?
24歳のときに公認会計士の試験勉強を始めましたが、まず教科書の漢字が読めませんでした(笑)。専門用語なんて、訓読みなのか音読みなのか、ちんぷんかんぷん。公認会計士の勉強で、漢字を読むために電子辞書を購入したのは私くらいかもしれません。
そのうえ、とにかく暗記が苦手で、友だちからいろいろな暗記方法を聞いて全部試してみましたが全然覚えられませんでした。
仕事・家事・育児で試験勉強の時間が確保できず……4回目の挑戦でようやく合格した簿記1級よりも、はるかに大変だと実感しましたね。勉強を始めて1年後に受験した公認会計士の一次試験は、全然手ごたえがなくて不合格。一次試験は年2回実施されますが、半年後の2回目の一次試験も不合格でした。
――1年目に失敗して、勉強法を見直すことにしたのですね?
そうですね。2年目の勉強をスタートするにあたり、自分の勉強法に向き合ってみました。すると、今までの教科書を丸暗記するだけの勉強法では、きちんと理解できていないことが分かったんです。まったく同じ問題を出されれば答えられるのに、角度を変えて問われると全く解けませんでしたから。解説を聞くと、「あ、あの問題と似てる」って分かるんですけどね。そこでようやく気づいたのが、「理解するための勉強をしなくてはならない」ということでした。
そのためには、少しでも勉強時間を確保しなければなりません。子育てもしながら学習をするために、限りある時間を効率的に使えるよう考えて編み出したのが、独自の「超コスパ勉強法」だったんです。
非効率的な勉強法を見直すことから編み出された、松岡さん独自の「超コスパ勉強法」。その最初のステップは、勉強時間を確保するための「4つのスキマ時間」を活用することと、機能性の高い「効率アップのための7つ道具」を利用することでした。
【学習に使おう!4つのスキマ時間】
昼間は仕事をして、朝夕は家事と育児をすることが大前提だったので、勉強時間を確保するには、スキマ時間を使うしかなかったという松岡さん。そこで、松岡さんが実際に活用した「4つのスキマ時間」を教えてもらいました。
こうした10分、15分のスキマ時間の積み重ねが大事だという松岡さん。
「これは私の事情なんですけど、平日は忙しかったので、土日に5時間くらいまとめて勉強しようと思っていたら、子どもが熱を出してしまって何もできなかったことがありました。それからは、何が起こるかわからないからスキマ時間でコツコツ勉強するようになりましたね。忙しいから、疲れているからと、週末に先延ばしをするのはよくないと思います」。
【効率アップのための7つ道具】
非効率的な勉強をしていた頃は、かわいいものや色のきれいな文房具を使っていたという松岡さんですが、勉強法を見直してからは見た目より機能性を重視するようになったそう。いろいろ試した結果たどり着いた、効率アップにこだわった7つ道具をお聞きしました!
「超コスパ勉強法」の最初のステップ、いかがでしたか?
スキマ時間を見つけたり、道具を揃えたりしても、毎日モチベーションを維持し続けるのは大変なこと。
松岡さんは、学習のモチベーションを維持するために「音楽」と「先生」を上手く活用していたといいます。
「私の場合は、いつも1曲のテーマソングを決めて、落ち込んだときや試験前に聴くことでメンタルを立て直していました。それと、分からないことを質問するだけでなく、精神面でも支えてくれる先生の存在が大きかったです。例えば通信講座でも、添削や質問サポートをしてくださる先生がいますよね。ちゃんとほめてもらえたり、成績が伸びているのをテストの点などの数字で見ることができると、励みになりますよ」。
次回のVol.2では、さらに具体的な学習方法について伺います。
松岡さんが、仕事をしながら超難関資格・公認会計士に合格するために考えた「超コスパ勉強法」の全貌、ぜひ楽しみにお待ちくださいね。
高卒シングルマザーから公認会計士・税理士になった、松岡さんの「超コスパ勉強法」はいかがでしたか? 時間・場所等の制限をものともせず、道を切り開くお姿はとても感銘を受けますね。
ここでは、ロックミュージシャンを目指しながら、あるきっかけから人生の方向転換をし、公認会計士の資格を見事取得した井藤丈嗣さんのお話をご紹介します。
プロフィール
松岡由起子さん
公認会計士・税理士。高校卒業後、税理士事務所に勤務。公認会計士試験に合格後は有限責任監査法人トーマツに勤務し、国内監査業務に従事。2016年より、税理士である父と共に、公認会計士兼税理士事務所にて、税務業務・会計業務に従事している。
著書「高卒シンママ会計士」(中央公論新社)、「シンママ公認会計士だから言えるこっちを選べば1円でも得!節約体験77」(主婦の友社)
公式ブログ:https://ameblo.jp/chuchu1ip/