「IDEE」創業者で、青山のファーマーズマーケットなどの新たなコミュニケーションの場を次々と生み出してきた黒﨑輝男さん。
黒﨑さんは2014年、「大きく学び、自由に生きる」をテーマに、ユニークな講義を展開する「自由大学」と、自由に働けるコワーキングスペース「みどり荘」を中心に、オープン型のイベントスペースやカフェ、飲食スペースなどが集合した複合型のコミュニティ空間「commune246(コミューン246)」を生み出しました。
「『commune246』を設立したのは、会ったり、話したり、学んだり、食べたりする、そして本も音楽もある、そんな『状況』を作りたいという思いから。今までの『学びの場』は、参考書などの蔵書をたくさん用意したり、自習室を作ったり、インターネットを整備したりといった、環境を整えることが重要視されていたけど、これからは『学びたくなる状況』をいかに作るかが大切になってくると思う。
『commune246』の核となる施設の1つが『自由大学』。専門知識を持つ先生が内容を考え、講義をするスタイルが普通だけど、自由大学では、『キュレーター』と呼ばれる人が、講義内容を考え、それに合うゲストや講師を招いて、ディスカッションしながら講義を作っていく。そして、キュレーターが企画した講義に興味のある人や同じ意識を持つ人が集い、その空気がさらに学びたくなる『状況』をつくるサイクルが生まれるように、講義を運営するんだ。自由大学の卒業生は今や述べ9000人以上になり、現在のキュレーターも、全員が自由大学のキュレーション学講義を受講した自由大学の卒業生なんだよ」(黒﨑さん)
今回、自由大学に在籍する女性たちにも話を聞くことが出来ました。
自由大学3代目学長の岡島悦代さんは、自由大学の卒業生。そんな岡島さんいわく、今人気の講義は『働き方を考える講義』なんだそう。
「たとえば、今人気なのが『アメーバワークスタイル』。これは、ひとつの会社に身を捧げて給料をもらうのではなく、フリーランスを志したいとか、週末だけ違う仕事をしたいとか、アメーバのように仕事の内容に合わせて働く形を変えたり、仲間とつながって増殖を続けたりして、職場以外の場を持ちながらお金を稼いでいく働き方を考える講義です。」(岡島さん)
自由大学3代目学長の岡島さん
花村えみさんは、大企業を退職して、キュレーターに転じました。花村さんにも人気の講座を伺うと、
「『生き方デザイン学』は、30代前半から中盤の女性に人気です。私自身もそうでしたが、女性の30代は自分の人生や仕事を振り返って『これからどうしよう』と考えるタイミング。それまでの自分を棚卸ししつつ、今後大切にしていく軸を作っていくことを考える講義です」(花村さん)
自由大学キュレーター 花村さん
しかし、ここでちょっと不安が。「働き方」「生き方」を真剣に考えている人でないと、やはり講義についていけないのでしょうか?
「受講生の方には、今熱中していることや受講理由、卒業後の夢を事前に書いてもらいますが、本当にバラバラです(笑)意識の高い人ばかりではなく、今後どうしたらいいのかまったくわからない、とにかく立ち止まってしまっただけ、という人もたくさんいます。ただ、働き方に迷っているという部分は共通なので、お互いの立場や意識に刺激を受けて、学び合うことができます。そんな『状況』を自由大学はつくっています」(岡島さん)
なぜ、ここまで「働き方を学ぶ」講義に、人気が集まるのでしょうか?
「高校から大学へ進むための学びは、いい会社に入るための、就活のための学びになってしまいがち。生業(なりわい)を立てるための学びは誰も教えてくれないから、ふと立ち止まった時にどうしたらいいのかわからなくなるのは当然のことだと思う」(黒﨑さん)
では、黒﨑さんが考える今後の「働き方」や、「働く場」のあるべき姿とは?
「会社に入れば、そこはピラミッド型の組織で、ポジションが既に決まっていることがほとんど。ここで言うポジションとは、学歴や性別、家柄のこと。学閥があって最初から出世街道が見える人もいれば、閉ざされている人もいたり、男性と女性ではいまだに与えられる仕事が違ったりする。そんなもの、僕は本当にバカバカしいと思っていて、いろいろな働き方の例をたくさんつくってやりたい。
最近、僕は『初期設定』という言葉をよく使うんだけど、ピラミッド型の組織では、初期設定で既に学歴や性別で差があるんだよね。僕が目指すのは、初期設定が平等で、男女も学歴もなにもない、自由でフレキシブルな組織。ポジションではなく、役割が与えられるロール(役割)型の働き方をつくりたい。」(黒﨑さん)
確かに、自分の意志ではないところで決められた『初期設定』に、違和感を感じたり、働きにくさを感じている人は多いかもしれません。
「僕の考える働く場の初期設定は平等だから、女性も男性もない。それと、働き方を考える自由大学も、働く場であるみどり荘も、どちらも子どもと一緒でも大丈夫。託児所と勘違いされたこともあったくらい(笑)。
ワイワイと子どもが騒いでいても走り回っていても別にいいや、という空気感や価値観が大切で、なぜならばそれが社会だから。子どもがいるとうるさくて仕事できないなんて、そんな話を聞くとムカッとしちゃうんだよね(笑)。性別関係なく、今後の働く場はそうあるべきだし、そういう働く場が増えていってほしいね。」(黒﨑さん)
環境が激変する現代社会で働く私たちにとって、「働き方」や「働く場」を常に模索し、考えていくことは大切です。
自分にとってより良い働き方を探すために、そして働くことが自分にとってどんな意味があるのかを見つけ出すために、「働き方を学ぶ」ことも必要。また、こういった場で同じ意識の人と出会うことでの学びもあります。学びを続けていく中で、自分なりの働き方を見つけていきましょう。
ひとつの会社に固執することなく、自分に合った「働き方」「働く場」を探したいと考えても、いざ実行することはなかなか難しいですよね。しかし、世の中には、なんと社員に「専業禁止」を掲げ、本業になりえるような「複業(パラレルワーク)」をすることを推奨している会社があったんです! 新しい企業と社員の形をつくる「エン・ファクトリー」の代表取締役社長に、その狙いや想いを聞きました。