2019.11.08

高齢者を笑顔にする、介護レクリエーションの考え方

高齢者を笑顔にする、介護レクリエーションの考え方

近年、レクリエーションに力を入れる施設が増えています。そもそもレクリエーションはなぜ必要なのでしょうか。ご自身も介護経験をお持ちで、現在介護ジャーナリストとして活躍されている小山朝子さんがレクリエーションの目的と役割、さらにレクリエーションのプログラムを考えるにあたっての注意点や飽きさせない工夫などを紹介します。

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高齢者レクリエーションの目的・役割とは

高齢者レクリエーションの目的・役割とは

レクリエーションというと、「娯楽」というイメージを抱く人も多いと思いますが、ここでは介護現場におけるレクリエーションの目的と役割を2点紹介します。英語の“recreation”は、語源的にはre(再び)とcreation(創造)から成り立っています。つまり、「再創造」という意味になります。
人は年を重ねると体と心が変化していきます。歩く動作を一例に体の変化を紹介すると、高齢になるにつれ、足の上げ方が低く、歩幅も狭くなり、歩くスピードが遅くなります。つまり、歩く機能が低下するのです。心の変化はどうでしょうか。高齢になると定年退職や大切な人との死別など「喪失体験」が増えます。このことでまるで心に穴があいたような喪失感を抱くようになり、家に閉じこもりがちになる人もいます。

レクリエーションの目的と役割の1点目は、高齢者が再び活力を取り戻し、生活の質を高めることにあります。

2点目は日常生活動作の向上です。日常生活動作とは、食事、入浴、排せつなど、日常生活を過ごすうえでの基本的な動作を指します。リハビリテーションの現場や介護保険制度においては、利用者にどの程度のどのような介助が必要かを評価する指標としても日常生活動作が使われています。このように日常生活動作の向上をはじめ、介護を必要としない体づくりのためにもレクリエーションが重要視されているのです。

タイプ別に紹介!盛り上がるレクリエーションとは

タイプ別に紹介!盛り上がるレクリエーションとは

複数の利用者の前で行う「集団レクリエーション」を盛り上げるには、大げさと思われる身ぶりや手ぶり、「始めますよ~」「せーの!」といった掛け声がポイント。自らミスをして笑いをとるのも一案です。飽きさせないためには、名前を呼んだり、利用者に発言してもらう機会を設けたりすると良いでしょう。ここからは、利用者のタイプに合わせたレクリエーションを具体的にご紹介します。

認知症の利用者向け「盛り上がるレクリエーション」

・回想法…自分の過去の経験や出来事を思い出し、語り合います。
・メイク、ネイル…自らを装うメイクやネイルを施すことで、笑顔をもたらす効果があります。
・歌(合唱)…認知症の症状によって生じる不安や緊張を和らげ、脳を活性化する効果もあります

介護施設では多くの認知症の方が生活しており、漢字や計算のドリルも活用されていますされていますが、利用者のなかには「小学生がやるようなことをなぜやらなければならないのか」「バカにされているのではないか」と苦痛に感じる人もいるでしょう。そのため、「脳を活性化させる効果が期待できますよ」などと、その意義や効能を伝えることで利用者のやる気も高まるかもしれません。

また、認知症の方は、今なおかつての職業に就いているかのように話をする傾向があります。それを否定せず、その人に関心を持っていろいろとたずねてみると、会話が盛り上がることがあります。

失語症の利用者向け「盛り上がるレクリエーション」

・アニマルセラピー…ペットとのふれあいを通じて自然と発語も増え、言語のリハビリテーションにつながることもあります。
・園芸…作業を通じて五感を刺激する効果があります。
・絵手紙…はがきを出す喜びばかりでなく、絵で表現する可能性を知ることができます。

言語中枢に損傷が起きることで発症する「失語症」は、話すことだけでなく、聞いて理解したり書いたりすることも難しい場合があります。利用者と話す時は、早口になったり急かしたりすることのないよう気を付けましょう。一語一語短くはっきりと伝えたり、物や絵を使いながら会話したりすることでレクリエーションの内容を理解し、楽しんでくれるはずです。

片麻痺の利用者向け「盛り上がるレクリエーション」

・料理…コミュニケーション増加や自信回復の機会となります。
・楽器演奏…情緒を安定させ、楽器演奏がリハビリに繋がることも期待できます。

「片麻痺」とは脳血管障害などにより体の片側に麻痺が起きる状態のことです。車いすの利用者も多く、レクリエーションに参加する際、一定時間、車いすに座っていると体が傾くことがあります。あらかじめ、背中と背もたれの間にクッションを入れておくなどの工夫をし、利用者の体に負担をかけない配慮をすることが望ましいといえます。

実際のレクリエーション企画のフローとは

実際のレクリエーション企画のフローとは

介護現場におけるレクリエーションのフロー(流れ)は、アセスメント/情報収集(Assessment)→計画(Planning)→実施(Implementation)→評価(Evaluation)で行うのが望ましいと言われます。この過程は「A-PIEプロセス」と呼ばれます。A-PIEとはそれぞれの頭文字を並べたもので「エーパイ」と読みます。A-PIEプロセスは1度だけの過程ではなく、評価から再アセスメント、計画、実施へとプロセスを循環させることで、効果的で効率のよい援助ができるようになるのです。

まず「アセスメント」ですが、複数を対象とした「集団レクリエーション」では、グループの特徴(内向的な人が多いなど)や、どのような活動を希望しているのかなどを把握します。一方、それぞれの趣味や好みを考慮した「個人レクリエーション」の場合は、その人の生活歴(家族関係、楽しんできたこと、どこで生活してきたのかなど)や何がしたいのかなどを把握します。

アセスメントの情報をもとに、「計画」では、プログラムのねらい(目的)、どのような活動を選ぶか、時間配分、どのような道具を準備するかなどを検討します。レクリエーションは「準備が8割」と言われますので、当日のハプニングを想定して、利用者を不安にさせないように準備しておきましょう。さらに「実施」では、「アイスブレイク」を心掛けて行うと利用者の満足感に繋がりやすくなります。「アイスブレイク」とは氷(アイス)のように固まっている心を柔らかくほぐし(ブレイク)、和気あいあいとした雰囲気をつくる手法です。実施後の「評価」では、目的の達成度、実施方法の工夫や改善は必要か、といったことを振り返り、できるだけ記録を残しておきましょう。

レクリエーションを行う際の注意点とは

レクリエーションを行う際の注意点とは

認知症の利用者のなかには「異食」(食べ物以外のものを口に入れる)の症状がある方がいるかもしれません。ビーズなどの小さな道具や材料を用いる場合は注意しましょう。カッターや彫刻刀を使用する場合は問題がないか事前に確認しておきます。さらにクイズやゲームを行う際には、全員が正解・不正解や勝敗にこだわらないよう配慮し、楽しい雰囲気づくりに努めます。

また、レクリエーションを提供する介護職員やボランティアは目上の立場ではありません。レクリエーションを提供する際に求められるのは「指導」ではなく、「支援」です。利用者は「人生の先輩」なのです。以前、ある施設で会社の重役だった男性にお手玉をすすめたところ、「ばかにするな!」と怒られ、裁判にまで発展するような事態になったと聞いたことがあります。

レクリエーションの主役はあくまで利用者で、提供する側が行うのはその人が持っている能力を引き出すためのサポートであり、生きる喜びや楽しみを見いだしてもらうことが重要です。

執筆者プロフィール
小山朝子(こやま・あさこ)さん
介護ジャーナリスト、介護福祉士。20 代から約10年にわたり、洋画家の祖母を介護。現在は講演、執筆のほか、各種メディアでコメント。ラジオNIKKEI『大人のラヂオ』でパーソナリティーを担当。近著は『世の中への扉 介護というお仕事』(講談社)。日本在宅ホスピス協会役員、東京都福祉サービス第三者評価認証評価者、All About(オールアバウト)「介護福祉士」ガイドなどを務める。
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