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2016.03.11

【お仕事探訪】これからますます需要UP!「知的財産」のお仕事

【お仕事探訪】これからますます需要UP!「知的財産」のお仕事

TPP交渉の議題を始め、最近何かと話題になることの多い「知的財産」。知的財産とは、技術やアイデアなどの他、アニメや漫画などのコンテンツ全般を指すことが多いのですが、近年これらの「知的財産権」の価値が急速に見直されているよう。今あらゆる企業でニーズが高まっている「知的財産」のお仕事について詳しくご紹介します!

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実は身近にある、登録商標のあれこれ

実は身近にある、登録商標のあれこれ

そもそも、知的財産とはいったいどんなものなのでしょう?

「知的財産とは、人間が頭で考えてひねり出したものの中で、財産的価値が見出されるもの全般を指します」と言うのは、知的財産の専門家で、インフォート国際特許事務所に所属する弁理士の木村晋朗さん。

われわれの身近には、知的財産として商標登録されているものがたくさんあるよう。例えば『白猫プロジェクト』などのゲーム名や、iPhoneのアイコンなど、普段目にしている商品名やマークのほか、『ブルーレットおくだけ』(小林製薬)などのCMメロディーも特許庁に商標登録されています。アニメやキャラクターの図柄も知的財産の一つで、漫画『SLAM DUNK』の『流川楓』と『桜木花道』、『課長島耕作』なども商標権を取得。芸能界では芸名やグループ名が登録されており、『加護亜依』『SMAP』などが登録されています。

また、普通名詞だと思われている『デジカメ』『宅急便』『ガチャポン』『プチプチ』なども、実は特定の会社の登録商標なのだとか。

「商標登録しておくことで、自社だけがその商標を独占的に使用できることになり、他社に同じような商品を制作・販売された場合に法的措置を取りやすくなります(木村さん)」

ちなみに「著作権」は登録不要なので、ブログやフェイスブックに書かれたものには、自動的に権利が発生しているそう。

現在国をあげて、日本の科学技術やコンテンツを積極的に輸出しようという機運が高まっています。また、インターネットの普及で、多くのコンテンツが気軽にコピペできるため、知的財産の正しい取扱いが望まれています。このような中で、知的財産を適切に管理・活用するための国家資格として2008年にできたのが知的財産管理技能士」です。

「知的財産管理技能士」はどんな仕事?

「知的財産管理技能士」はどんな仕事?

「知的財産管理技能士」は、知的財産を正しく理解し活用する能力があることを示す国家資格。活躍の場は主に企業内で、他企業と共同開発をする場合の条件交渉や、類似品への対応などで、企業に貢献できる資格です。

木村さんによると、大手企業がITベンチャーにプログラムの開発を委託したケースで、プログラム完成後、そっくり同じプログラムが各所で出回っていて騒ぎになることがあるそう。

「大手企業側は、アイデアの発端は自分達で、開発費用も出しているので、勝手に流用するのはおかしいという言い分になる。対するITベンチャー側は、自分達がコーディングしたんだから自分たちのプログラムだという言い分になる。こんなトラブルを事前に回避するために、知的財産の知識を持った人が必要とされています。」

また、中小企業や小さな町工場で働く人にも、この資格はオススメだと木村先生は言います。

「例えば中小企業が工場で使うプレス機を開発する場合、販路を持っていないことが多いので、大企業と一緒に開発プロジェクトを行うことがあります。その後大企業の担当者が変わってプロジェクトが立ち消えになったのに、数年後、後任者によってそのプレス機の改良版が販売されていることがある。そこで慌てて特許事務所に相談に来るケースが、ここ10年くらいで増えているのです」

このように、知的財産に関する知識がないと、アイデアや開発コストを取られ損になってしまう可能性があるのです。

また、万が一他社が類似品や模倣品を販売していると判明した場合でも、「知的財産管理技能士」の知識があれば、スムーズに対処できます。逆に自社で発売中の商品が権利侵害をしているという警告書が届いた場合でも、騒ぎが大きくなる前に効果的な手を打つことが可能です。

知的財産を扱うもう1つの国家資格に「弁理士」がありますが、「弁理士」は業務独占資格で、その典型的な活躍の場は特許事務所。企業の依頼を外部から受けるという特徴があり、企業が特許や商標を取得したり、紛争に対応したりするのを手助けしたりするのが仕事です。「知的財産管理技能士」には1級~3級がありますが、数ある法律のなかの「知的財産権」に関する分野だけを扱うので、他の法律系資格より試験範囲が狭く挑戦しやすいのが特徴です。中でも2級と3級は試験が選択式なので、難易度は弁理士よりやさしいと言えるでしょう。

今、企業にも求められている!「知的財産管理技能士」の今後の展望

今、企業にも求められている!「知的財産管理技能士」の今後の展望

前述のように、今あらゆる業界で、「自社が保有する知的財産を効率的に使って利益を生み出す力」と、「万が一の時に適切に対応できる力」の両方を備えた「知的財産管理技能士」が求められています。

「知的財産管理技能士」が活躍するのは、基本的に企業の知財部や法務部で、多くのメーカーやIT企業で取得が推奨されています。また、クリエイターが無意識のうちに他人の著作物を流用してしまうリスクに備えて、WEB制作会社や出版社など、コンテンツ制作企業でも必要性が高まっています。

近年は特許を評価してお金を貸したり、M&Aの際に知的財産の価値をきちんと評価するケースが増えていることもあり、金融機関での需要も高いとか。よって「知的財産管理技能士」の資格は、社会人はもちろん、就活中の学生にとっても大きなアピールポイントになると言えるでしょう。

「数年前、『青色発光ダイオード訴訟』がありましたが、日本では特許訴訟1件に1000万円以上のコストがかかります。こういった訴訟リスクを回避するためにも、知的財産管理士の持つスキルへの期待が高まっています(木村さん)」

今後ますます活躍の場が広がることが予想される『知的財産管理技能士』の資格。チャレンジする価値がありそうです。

Text:安本真留美

木村晋朗(きむらのぶあき)さん
弁理士

大学卒業後、技術者として研究開発に従事した後、国内企業の知的財産部門で、海外企業との特許ライセンスや特許紛争などを担当。その後、外資系企業で特許ライセンス関連業務に従事。知的財産の分野で15年のキャリアを持つ。インフォート国際特許事務所所属。


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