オープンマインドとは、スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授によって提唱された「計画された偶発性理論」というキャリア理論のなかで述べられたものです。
めまぐるしく状況が変わりゆく現代において、未来を予測するのはなかなか難しいこと。だからこそ、自分の将来を今はっきりと決めてしまうよりも、予期せぬ出来事や偶然の出会いといったチャンスを計画的に模索するために、積極的に行動しようという考え方です。
ここでご紹介するオープンマインドとは、一言でいうと「自分の選択肢を狭めない」ことです。
例えば、過去に決めた「なりたい職業」にこだわりすぎるよりも、目の前にある仕事に打ち込むことで自分を成長させ、次のチャンスをつかむ。あるいは、「自分のやりたいことはこの会社でしかできない」と考えるよりも、別の分野でも自分が興味を持ち、能力を活かせる道を考える。
どちらの場合も、自分のキャリアの選択肢は目の前に無数に広がっている(つまりオープンな状態である)と考えています。このことがとても大切なのです。
もちろん、子どものときに決めた「夢」に一直線に向かって実現する例もあります。しかし、ある調査によると、18歳のときに考えていた職業に就いている人は、全体の2%にすぎないそうです。つまり、その時々で目標をつくってもよいですが、1度立てた目標は常に変化する可能性があると理解しておくべきなのです。
次に、女性のキャリア形成について考えてみましょう。現代の日本社会では、一般に、女性は結婚や出産などのライフイベントによって、男性よりもキャリア面で大きな影響を受けます。
いわば、女性の人生は「想定外のできごと」だらけで、興味や関心が変化するのは当然のことです。
周りを見ても、結婚や出産などを理由に女性がキャリアチェンジしているケースを目にしませんか? 多くの女性にとっては、前もってキャリアの目標を立てても、計画どおりに実現する可能性は低いのかもしれません。
だからといって、女性がキャリアを追求することが無意味というわけではありません。むしろ、人生のどのタイミングでもキャリアを積極的に追求する姿勢が大切。想定外のできごとが起こったときには、それをチャンスとして活用するぐらいの姿勢で、いろいろな選択肢を模索していけばよいのです。
つまり、女性はライフイベントの影響を受けやすいからこそ、オープンマインドでいて「しなやかに」キャリア形成を図ることが重要なのです。
「道をひとつに決めない」という考え方は、従来のキャリア理論に反するので、不安に思うかもしれません。しかし「想定外のできごと」を受け止めて、現実の世界とはそういうものだと理解することが必要です。
例えば、こんなケースがあります。夫の転勤が決まり、夫婦間で話し合った結果、妻がそれまで働いた会社を辞めて転勤に同行することに。妻は、その赴任先で、はじめは同じ業界で求人を探しましたが見つかりません。
そこで、無関係の業界に飛び込んだところ、自分のスキルを活かせて、やりがいのある仕事に出会えたそうです。
この場合、過去に働いていた業界にこだわらず、選択肢を広げたことで、素晴らしい結果を得ることができたのです。また、夫の転勤という想定外のできごとをチャンスと捉えて、そのチャンスを活用したともいえます。
このように、女性のキャリア形成ではオープンマインドでいながら、いろいろと積極的に行動するほうが現実的だということをよく理解しましょう。
自分の将来を今決めて、選択肢を狭めてしまうよりも、オープンマインドを身に付けて、「しなやかに」自分らしいキャリアを築いていきましょう。
参考文献:J.D.クランボルツ/A.S.レヴィン(2005) 『その幸運は偶然ではないんです!』 花田光世/大木紀子/宮地夕紀子(訳): ダイヤモンド社