「一般的には、植物由来の調味料のことを広くスパイスと呼びます」と、シャンカールさん。「『スパイス』と聞くとシナモンやブラックペッパーなど外国原産のものを思い浮かべる人も多いかと思いますが、七味唐辛子や生わさび、山椒といった日本人になじみ深い調味料も実はスパイスの一種です。」(シャンカール・ノグチさん)
明確な条件はなく、人や文化によって定義が異なるスパイス。共通して言えるのは、「味の幅を広げ、料理をおいしくしてくれる」ことだそう。
「とくに重要な役割は、料理に『香り』をプラスしてくれること。食事は舌だけでなく、鼻から味わう要素も大きい。スパイスは油に香りをつけることで料理の満足感をアップさせるものなんです」(シャンカール・ノグチさん)さらに嬉しいのが、美容面や健康面の効果が期待できること。
「スパイスは、種類によって、身体に良いさまざまな効果が期待できます。レッドチリは発汗を促してデトックスにも良いですし、クミンシードやコリアンダーには整腸作用があります。ターメリックには消炎作用があり、インドでは薬代わりに常備されているほどです」(青木満さん)
料理の味の幅を広げてくれる上に、さまざまな身体に嬉しい効果まで得られるスパイス。しかし、世界には数えきれないほどのスパイスが存在しているため、「何を使えばおいしいスパイスカレーが作れるのか分からない…」という人も多いはず。そんな人のために、シャンカールさんが「スパイスカレーの基本!」と言う、4つのスパイスについてご紹介します。
ターメリック(パウダー)
カレーのベースカラー、「黄色」を作り出しているのがこちら。日本では「ウコン」という呼び名の方がなじみ深いかもしれません。消炎作用・抗菌作用があると言われ、加熱によって独特の苦味が和らぎます。
レッドチリ(パウダー)
カレーの「辛味」を担当するスパイス。カレー以外にも、ほとんどのスパイス料理において、料理の辛さはレッドチリの量で決まります。辛味には「βエンドルフィン」と呼ばれる多幸感をもたらす成分が含まれており、気分の高揚や食欲増進が期待できます。
クミン(パウダー)
カレーの「香り」で多くの人が思い浮かべる代表がクミン。スパイスカレー作りに欠かせないスパイスですが、日本食とも相性が良いので、煮物などにひと振りすれば簡単にエスニック風味をプラスできます。
コリアンダー(パウダー)
前述した3つのスパイスの味と香りを「調和」させるのがコリアンダーの役割。どんなスパイスとも相性が良く、他のスパイスと合わせて使うことで全体の味わいをなじませる働きがあります。消化機能を整える効果があると言われているので、胃腸が疲れているときに料理に使うのもおすすめです。
シャンカールさんがおすすめする、基本の配合比率は「ターメリック1:レッドチリ1:クミン2:コリアンダー3」。スパイスを何種類も調合するイメージがあるスパイスカレーですが、「シンプルであるほど素材の味を生かしたスパイスカレーが作れる」そうなので、まずは4つのスパイスと基本の比率から始め、具材や好みによってオリジナルスパイスカレーを作っていきましょう!
むくみを改善する空豆とパプリカカレー
「空豆には水の巡りを良くし、むくみを改善するという効果があると言われています。今回は豆のみを使いましたが、空豆の茹で汁をココナッツミルクと合わせたり、ご飯を炊くときに使ったりするとより効果的です。また、ココナッツミルクには利尿作用があると言われているので、水分のとり過ぎでむくんでいる方に特におすすめのレシピです」(青木満さん)
材料:4人分
作り方
胃腸の不調を改善するチキンと梅シソカレー
「シソには胃腸炎や消化不良を改善する効果、梅干しには整腸作用や抗菌作用があり、下痢、嘔吐、食中毒などを改善する効果があると言われています。また、スパイスの一種山椒にはお腹を温め、下痢を止め、腸の動きを活発にする働きがあると考えられています。食欲が低下している方やお腹の調子が悪い方に特におすすめのレシピです。また、ごはんとも相性がいいので、お好みでごはんと一緒に食べるのもおすすめです。」(青木満さん)
材料:4人分
作り方
スパイスカレーをおいしく作る上で、シャンカールさんが重要だと言うのがスパイスを入れるタイミングと火加減。ホールスパイスか、パウダースパイスかによっても違うので、それぞれのコツについてご紹介します。
ホールスパイス(粒状)
スパイス投入のタイミングは、最初に中火で多めの油を熱したとき。ホールスパイスを入れて炒め、スパイスの香りを油に移します。
パウダースパイス(粉状)
ホールスパイスよりも香りが飛びやすいという特徴を持つパウダースパイスは、野菜をしっかり炒めた後に入れるのが正解。焦げやすいので火を一度止めた状態で野菜のペーストの上に乗せるように入れましょう。
スパイスの保存方法
おいしいスパイスカレーを作るためには、「スパイスの鮮度も重要」だと教えてくれた、シャンカールさん。
「スパイスは湿気・高温・光の3つが大敵なので、密閉できる容器に入れて戸棚などの冷暗所で保存してください。ただし、レッドチリ系のスパイスはカビが生えやすいため夏場は冷蔵庫での保存が最適です」(シャンカール・ノグチさん)
手作りはハードルが高いと思っていた人も、ご紹介した基本のスパイスや調理時のコツを知ることで、意外と手軽にスパイスカレーが作れることが分かったはず。
「みんなでカレーを食べると不思議とコミュニケーションが円滑になり、場が楽しくなります!」とシャンカールさん。手作りスパイスカレーで「おいしい」交流をしてみてはいかがでしょうか。
インドのスパイス商、調合師。新しいブランドのINDIA SPICE & MASALA COMPANYで新鮮なオーガニックスパイスを使用し、調合を行い商品化している。『心とカラダにやさしい316種 増補改訂 ハーブ&スパイス事典』(誠文堂新光社)。
青木 満(あおきみつる)さん
学生時代から漢方治療の権威、漢方薬局「平和堂」根本幸夫氏に師事。漢方薬局と調剤薬局両方の経験を通して、2011年に「カラダの声を聴く」というスローガンの元、薬に依存しない独自の医療システムを構築する。田園調布にて漢方専門店併設の鍼灸治療院「てらす灸庵」と薬膳八百屋「ファルマルシェ」を開設し、薬膳レストランやよもぎ蒸しの監修、各種セミナーの開催など、健康に関わるさまざまな啓蒙活動を精力的に行う。