スキレットは、鋳鉄製の小さなフライパン。厚手のため蓄熱性が高く、食材にじっくり均等に熱が伝わるのが特徴です。今でこそ手に入りやすい調理グッズですが、黒田さんが初めて手にしたのは、スキレットがあまり普及していないなんと45年も前のことだとか。
「当時はスキレットが珍しくて、輸入雑貨屋さんで見かけ、“どっしりしているから、お肉もおいしく焼けるだろう”と思って購入しました。食材を入れても温度を一定に保てて、冷めにくいのでおいしく仕上がるんですよね。今自宅にあるのは2代目。こちらは10年以上、毎日使っていて、朝はこのスキレットでベーコンエッグを作りますし、野菜を蒸したり茹でたりしています。例えば、ほうれん草を茹でるときも、50mlくらいの水と少しの塩を一緒に入れて蓋をしたら、2〜3分で完成。ガラス蓋を使うと、中の状態を把握しやすいのでおすすめです。小さいサイズのスキレットなら、オーブンやグリルでも使えますよ」(黒田民子さん)
さらに、調理したまま食卓に出せるのもメリットだそうです。
「一人で食事をするときは、お肉を焼いて、蒸し野菜とごはんを添えたりしていますが、スキレットならワンプレートでもおしゃれに見えます。ゲストには、蒸し野菜やスペインオムレツなどを作り、そのままテーブルへ。ワインやチーズも一緒に並べれば、十分絵になります。熱いものは熱いうちに召し上がっていただくのが一番のおもてなしだと思っているので、熱々のまま出せるスキレットは重宝しますよね。オーブンから出したときのプチプチ、ジュウジュウといった音も、そのままテーブルで楽しめます」(黒田民子さん)
続いて黒田さんに、スキレットを使ったレシピ2品を教えてもらいました。どちらも手軽においしくできるのはもちろん、見た目も華やか。スキレットのメリットを活かし、熱々のままいただきましょう!
旨味たっぷりのオイルに感動!スキレットで簡単アヒージョ
「弱火でじっくり煮込むことで食材の旨味がオイルに移り、食材にもオイルが染みます。キャンプなどで豪快な雰囲気を演出したいときは、ベーコンのカットはいつもより大きめでも良いでしょう。オイルが残ったら、サラダドレッシングや炒め物に使うのがおすすめ。いろいろな味が含まれているので、いつも以上においしくなりますよ」(黒田民子さん)
材料:2人分
作り方
大皿料理はスキレットでコンパクトに。トマトジュースのお手軽パエリア
「手軽に作れるよう、サフランの代わりにトマトジュースを使ったパエリア。18cmサイズのスキレット一台分のレシピをご紹介します。お米は研いで乾かしたものより、無洗米をそのまま使う方がスープが染み込みます。魚介も良く合うのですが、エビやタコは加熱しすぎると固くなるので、今回は鶏肉を。ソーセージだとより手軽になり、チョリソーを使えば大人好みのおいしさになりますよ」(黒田民子さん)
材料:1人分
作り方
使い込むほど使いやすくなり、手放せなくなるのがスキレット。製品によっても異なりますが、サビ止め剤が塗ってある場合は使い始めに洗剤で洗って落とした上で、「シーズニング」が必要です。これは、サビを防ぐために洗って乾かした後、油を薄く塗って馴染ませる作業のこと。繰り返すうちに油が馴染み、サビにくく焦げ付きにくくなるため、使った後には必ずシーズニングを施すようにしましょう。
「中華鍋も同じように手入れしますが、意外と手間はかかりません。フッ素樹脂加工のフライパンに比べて増える作業は乾かして油を塗ることだけ。きちんと手入れしていくと、スキレットはどんどん使いやすくなりますよ」(黒田民子さん)
なお、使用後は油の被膜を落としすぎないよう、洗剤を使わずにお湯とタワシで洗うのがおすすめ。スキレットが熱いうちに冷水をかけると、急激な温度変化によって割れてしまうこともあるので注意しましょう。
「油を塗った状態だと、他のフライパンなどと一緒に収納するのは抵抗があるかもしれません。コンロの上に出しっ放しにするのがイヤな場合は、フックなどを使った「吊す収納」が良いと思います。ただし、重さがあるものなので、フックが重さに耐えられるかどうかはしっかり確認してくださいね」(黒田民子さん)
熱々を楽しめるだけでなく、手軽においしい料理が作れるスキレット。お手入れをしながら使い続けることで、「育てていく」感覚で使っていけることも魅力の一つです。ぜひ、この機会にスキレットレシピに挑戦してはいかがでしょう。
料理研究家。総合情報サイト『All About』のホームメイドクッキングガイドとして、安心して食べられるおいしい家庭料理や保存食、旬のレシピを多数紹介している。雑誌やwebなど、各種メディアでも活躍中。著書に『やさしい保存食と自家製レシピ』(主婦の友社)など。