西側、北側、東側と、3方向にベランダがある賃貸マンションで暮らすH・A・R・Uさん。引っ越してきた際にこの環境を活かしたいと考え、それまで全く縁のなかったベランダガーデニングを始めたのだそうです。
「といっても、最初から植物を育てようと考えたのではなく、まずはベランダをおしゃれにしようという感覚でした。部屋を作るときにインテリアを揃えるように、雑誌に載っている素敵なベランダを参考にしながらDIYで板壁やラックを作っていました。そこに緑や花があるとさらにおしゃれになるなと思い、あくまで飾り程度の扱いで植物を置くことに。でも、いざ置いてみると“生き物だからちゃんと面倒を見てあげなくちゃ”と思ったんです。そのうち、新芽が出たり、花を咲かせたりといった日々の変化を目にするうちに愛着が湧いてきて、どんどん好きになりました。私自身が常に変化を求める性格ということも、ガーデニングにハマった理由のひとつです」(H・A・R・Uさん)
植物の成長による変化を楽しめるようになり、ますますガーデニングにのめり込んでいったH・A・R・Uさん。引っ越した当初は洗濯物を干すために空けていたという東側ベランダも、徐々に植物が増え、今では春を迎えるたびにさまざまな花が咲き誇るのだとか。
「ガーデニングはベランダが狭くなってしまうのでは、と考える方もいるかもしれませんが、ベランダすべてを使わなくても良いと思います。洗濯物を干すスペースは確保して、残った場所に植物のコーナーを作るイメージですね。大きな鉢にさまざまな植物を植えるだけで緑のきれいな風景はできるので、このような寄せ植えを楽しんでみてはいかがでしょうか。なお、植えるときは花だけでなく、リーフ類やグラス類も一緒にすると変化が出ておすすめ。肥料やりなどで手が掛かる花と比べて丈夫なので、育てやすいのもポイントです」(H・A・R・Uさん)
ベランダガーデニングをするとなると、広さだけでなく方角も気になるもの。日当たりが悪い向きだと、植物を育てるのに向かない気がするのですが……。
「隣家との間が狭くてほぼ真っ暗だったり、風通しが良くなかったりという状態でなければ、植物は意外と育ってくれるんですよ。わが家の北側ベランダはほぼ日陰で、春から秋にかけて朝日と西日が少し当たるくらいなので、半日陰でも育つ植物を置いています。日に当てた方が良いといわれるビオラや、アジサイ、クリスマスローズも、問題なく育っていますね。ただし、各ベランダの環境によって適する植物は異なるので、いろいろな種類を試しながら育てるのが良いと思います」(H・A・R・Uさん)
H・A・R・Uさんによると、「ベランダガーデニングを始めるときは、まず形から入っていくのが良い」のだとか。「こんな雰囲気のベランダガーデンにしたい」というイメージがあるなら、板壁やラックなどを用意し、雰囲気に合わせた雑貨類を揃えてから植物を置く。こうした段階を踏むことで、よりイメージに近づけやすくなるそうです。また、雰囲気に合わせたシンボルツリーを置くのもおすすめだとか。H・A・R・Uさんに、フレンチナチュラル風、アジアン風、南欧風というテーマごとにスタイリングのコツを語っていただきました。
フレンチナチュラル風のベランダガーデンを作るコツ
「ガーデニンググッズはフランス語のロゴが入っているものが多いので、フレンチナチュラルは作りやすいスタイルだと思います。アイアンフェンスやアイアンラックは、一つ置くだけでフレンチナチュラルの雰囲気が増すのでおすすめ。ジョウロなど金属製のものはピカピカの状態より、しばらく放っておいてから飾る方がアンティークのような風合いが出ます。私の中ではフレンチ=シックなイメージだったので、カラフルになりすぎないようにしました。板壁やウッドフェンスなど背景の色を白、花はライトブルー、紫系やアンティーク調のニュアンスカラーで抑えているのも工夫の一つですね。シンボルツリーはシマトネリコで、バラはフランスの品種です」(H・A・R・Uさん)
フレンチナチュラルを演出するアイアンフェンスやアイアンラック
カラフルになりすぎないようフランスの品種のバラを使用
シンボルツリーであるシマトネリコ
アジアン風のベランダガーデンを作るコツ
「アジアのイメージで、花の色は濃い赤、白、紫でまとめ、板壁やウッドフェンス、レンガ、鉢はダークブラウンにしています。また、手すりに取り付けた目隠しと風除けのスダレも雰囲気作りに役立っています。雑貨はガーデニングの専門店より、アジアン雑貨のお店のものが多いですね。バリ島の石像や、中華街で買った陶器のカエルなども置いています。植物はアジサイやクリスマスローズなどで、シンボルツリーはイリシウム・フロリダナム。落ち着いた雰囲気にまとめつつもポイントで明るくしたかったので、色とりどりのヒューケラや、斑入りの植物なども置いています」(H・A・R・Uさん)
アジアン雑貨が並ぶ特徴的な庭
アジアン風を演出するのに最適なシルバーリーフが珍しいクリスマスローズ
シンボルツリーは日本原産のシキミに似たイリシウム・フロリダナム ※シキミの仲間
南欧風のベランダガーデンを作るコツ
「最も日が当たる東側は花が中心なので全体的にカラフルなのですが、テーマカラーは南欧を彷彿とさせる青に。スノコを繋いだ板壁はライトブルー、窓枠風の飾り棚は濃いブルーに塗っています。タイル柄のシートは貼って剥がせるタイプ。ギリシャのイメージだったのでこちらのシートを選びました。シンボルツリーはレモンの木。もともとは西側に置いていたんですが、南欧っぽいと思ったのでこちらに移動したところ、ずいぶん元気になりましたね」(H・A・R・Uさん)
青をベースとした、南欧風のタイル柄のシート
さわやかでカラフルな色の花が多く咲く南欧風のガーデン
南欧風にピッタリな、シンボルツリーのレモンの木
ベランダガーデニングを楽しむためには注意したいこともあります。一つは、マンションなど集合住宅の場合、ベランダは共有スペースであるということ。規約によっては植物や板壁などが設置できない場合もあるので、事前に確認しておきましょう。
「また、大規模修繕で外壁を塗る予定がある場合も注意が必要。私も以前経験したことがありますが、50もの鉢やエクステリアの数々を移動させるのはかなり大変でした。置き場所をどうするかなど、事前に考えておきたいですね。また、花がら(咲き終わってしおれた花)が落ちやすい植物は、手すり側に置くと下の階に迷惑がかかります。同じように水やりも、水が下の階にこぼれてしまうことがあるので十分気を付けたいですね」(H・A・R・Uさん)
では庭でのガーデニングと比べたときに、ベランダガーデニングにはどんなメリットがあるのでしょうか?
「まず挙げられるのは、屋根があること。天候に左右されにくくなるので、雨が降っているときでも作業がしやすいんです。また、雨によって花が傷むことがなく、冬は霜に当たらないので冬越しできる植物が多いです。ベランダの環境によって相性の良い植物を探すことも楽しい工程ですし、ガーデニングの醍醐味である、日々成長していく姿を見る喜びと緑や花から感じる癒しを間近で味わえることも大きな魅力だと思います」(H・A・R・Uさん)
日照不足と戦う週末ガーデナー。2011年、ベランダにぐるりと囲まれたマンションに引っ越したのをきっかけに、ベランダガーデニングをスタート。同時に興味のなかったDIYにも目覚め、個性的なベランダガーデンを作っている。