肌が荒れたり、冷え症になったり……女性の体にはさまざまな不調が現れることがあります。その原因のひとつは、普段の食生活での野菜不足なんだそうです。今回お話を伺った、女子栄養大学 栄養クリニック教授の蒲池桂子さんは、野菜のエキスパート。まずは、野菜の栄養素が、女性の体のどんな不調に効果があるのかを教えていただきました。
「野菜には、ビタミンやミネラルといった栄養素や食物繊維が含まれています。それらは、どれも健康な体づくりに欠かせないものです。細胞の新陳代謝を促し、血流を良くする効果のある栄養素が多く、また食物繊維は腸をキレイにするので、便秘解消や肌荒れの予防にもつながります。そのため、野菜をしっかりとるようになると、まずは肌がキレイになって顔色が良くなるのを実感できるでしょう。体が美しく若返る効果が期待できるんです」(蒲池桂子さん)
野菜には、女性にうれしい効果が期待できるんですね。それでは、1日にどれくらいの量の野菜を食べればいいのでしょうか?
「1日の野菜摂取量の目安は350gです。おおまかなイメージですが、生野菜だと両手にこんもり盛った量を1回分として、その量を3回食べると大体350gになります。とても多く感じるかもしれませんが、火を通せばかさが減り、両手にこんもり盛った1回分の量が、握りこぶし1個分ほどになります。
野菜は、もちろん量をとることも大切ですが、体のために十分生かすために、野菜に含まれる栄養素のことをきちんと理解して適した食べ方をすることが大切ですね」(蒲池桂子さん)
それでは早速、女性の体のお悩みで代表的な「肌荒れ」、「便秘」、「冷え症」、「むくみ」、「貧血」の解消に役立つ野菜を紹介していきましょう。
「肌荒れ」の解消に役立つ野菜
ビタミンBとCで美肌づくり グリンピース
「肌が荒れやすくなる原因のひとつは、甘いものや脂っこいものに偏った食事です。それらを食べ過ぎると、糖質や脂質の代謝をサポートする『ビタミンB1』や『ビタミンB2』が不足し、肌荒れにつながります。
肌荒れの解消におすすめの野菜であるグリンピースには、この『ビタミンB1』や『ビタミンB2』が豊富に含まれています。他にも、活性酸素の働きを抑えて、肌のシミやシワを予防する『ビタミンC』も含まれているので、女性にはうれしい野菜です。ただし、缶詰のグリーンピースには『ビタミンC』はあまり含まれていないので、ぜひ生のグリンピースを八百屋さんなどで選んでくださいね」(蒲池桂子さん)
ビタミンB群とイソフラボンがたっぷり 大豆
「グリンピースに負けず劣らず『ビタミンB群』が豊富に含まれている食材と言えば、大豆。特にツヤのある肌をキープするために欠かせない『ビオチン』が豊富です。
また、女性は加齢とともに、女性ホルモンのエストロゲンが減少することで肌荒れが起こりやすくなると言われています。大豆には、そのエストロゲンと似た働きをする『イソフラボン』も含まれていて、シミやそばかすを抑える働きもあります」(蒲池桂子さん)
「便秘」の解消に役立つ野菜
多糖類が水分を腸まで届ける 玉ねぎ
「便秘の原因のひとつは腸の水分不足です。そこで、水分を補ってくれる野菜として注目したいのが玉ねぎです。玉ねぎには、保水性に優れた『多糖類』が含まれていて、水分を包み込んで腸まで運んでくれます。すると便が柔らかくなり、スムーズに排出されます」(蒲池桂子さん)
食物繊維が腸を掃除してくれる えのきたけ
「便秘のもうひとつの原因は、腸の動きが悪くなること。そんな時は、『不溶性食物繊維』を多く含む、えのきたけの出番です。『不溶性食物繊維』は、水分を吸収して膨らみ、腸のせん動運動を活発にしてお通じを促します。腸内にたまっていた有害物質などを吸着し、排出する働きも見逃せません」(蒲池桂子さん)
「冷え症」の改善に役立つ野菜
ビタミンAとEで血行を促進 カボチャ
「カボチャには、糖質、炭水化物、ビタミンなどの栄養素が豊富。しかも低カロリーなカボチャは、積極的に食べたい野菜のひとつです。血行を良くして冷え症改善が期待できる『ビタミンA』と『ビタミンE』をしっかりと含んでいますし、電子レンジでチンするだけで火が通る調理の手軽さも魅力です」(蒲池桂子さん)
豚肉と一緒に食べるのがおすすめ ねぎ
「冷え症の原因となる血行不良を改善するためには、代謝を促進する『ビタミンB1』が欠かせません。ところが『ビタミンB1』は水溶性なので、すぐに体外に排出されてしまいます。そこで、ねぎの出番です。ねぎには『ビタミンB1』を水溶性から脂溶性に変えて、肝臓にためる働きがある『アリシン』が豊富なので、豚肉など『ビタミンB1』を多く含む食材と一緒に食べると、『ビタミンB1』を効率的に体に取り入れることができます」(蒲池桂子さん)
「むくみ」の解消に役立つ野菜
カリウムが体内の塩分を調整 しょうが
「塩分(ナトリウム)のとり過ぎは、血圧に影響を及ぼすうえ、むくみやすくもなるので、女性の体にとってナトリウムの調整は欠かせません。しょうがには、体内のナトリウム量を調整する働きや利尿作用がある『カリウム』が含まれているので、むくみが気になる人には、ぜひ食べてほしい野菜です」(蒲池桂子さん)
むくみを抑えるビタミン類の宝庫 小松菜
「筋肉量が少なかったり、寝不足だったり、むくみはさまざまな原因によって起こりますが、ビタミン不足もその原因のひとつ。これを解消するためにおすすめなのが、ビタミンの宝庫である小松菜。『ビタミンB1』、『ビタミンB2』、『ビタミンB6』、『ナイアシン(ビタミンB3)』が含まれています。しょうがと一緒に炒めれば、むくみ解消にもってこいのメニューになりますよ」(蒲池桂子さん)
「貧血」の予防に役立つ野菜
赤血球の成分になる鉄がたっぷり ごま
「貧血は、赤血球の主成分・ヘモグロビンの材料になる『鉄』が不足すると起こりやすくなります。ごまには『鉄』がたっぷり含まれていて、大さじ1杯(約10g)で、約1gの『鉄』をとることができます。すりごまやペースト状にして食べると、より効率的に吸収することができますよ」(蒲池桂子さん)
葉酸やビタミンB6が貧血予防に! モロヘイヤ
「ヘモグロビンをつくるためには、『鉄』の他に『葉酸』や『ビタミンB6』も欠かせません。モロヘイヤには、『鉄』と合わせて、これらの成分も含まれています。モロヘイヤは、高い栄養価とくせのない味が人気の野菜。胃の粘膜を守る『ネバネバ成分』や、骨をつくる『カルシウム』が含まれているのも特徴です」(蒲池桂子さん)
野菜キャラクター:『野菜と栄養素キャラクター図鑑』(日本図書センター)
監 修:田中 明(女子栄養大学 栄養クリニック所長)/蒲池桂子(女子栄養大学 栄養クリニック教授)
イラスト:いとうみつる
出版社:日本図書センター
価 格:1,500円+税
「近ごろは『忙しい』という理由で、料理にあまり時間をかけられない人が増えています。そのせいか、野菜の調理の仕方がわからず、野菜をとる方法といえばサラダしか思い浮かばない人も多いようです。また一人暮らしの女性は、一度に何種類もの野菜を買うことは少ないという傾向もありますよね。
日ごろから野菜をきちんととるためには、野菜の調理法を覚えてレパートリーを少しずつ増やしていくことが大切です。さまざまな野菜を調理できるようになってほしいですし、1つの野菜でいろいろな料理を作れるようにもなってほしいと思います。
例えば、玉ねぎなら、サラダや炒め物だけではなく、スープや酢漬けにも使ってみましょう。また、玉ねぎとトマトを刻んで塩とこしょうを加え、オリーブオイルと混ぜれば、フライなどに合うラビコットソースができます。このようにレパートリーが増えれば、同じ野菜でも飽きることなく、継続的にとることができますよ」(蒲池桂子さん)
野菜に含まれる栄養素や働きについて正しい知識を身につければ、自分の体にあった野菜を選ぶことができます。そして、野菜のもつパワーをしっかりと生かすためには、蒲池さんのアドバイスのように、野菜の調理法のレパートリーを増やすことが大切です。野菜を継続的にとることを心掛けて、健やかな体を目指しましょう!