「何となくだるい」「肩こりが解消しない」「目の疲れがひどい」このような症状で病院へ行ったとき、「異常なし」と言われた経験はありませんか? 病院で何かの病気と診断されなくても、体の不調を感じることがあります。明らかな症状が出ていなくとも、体のバランスが崩れている、その状態を中医学(中国伝統医薬学)の考えで「未病」と言います。
こうした「未病」の状態を、季節や体質に合わせたものを食べることで改善し、健康な体作りを促す基本となる食事が「薬膳料理」です。
薬膳料理を食べることで、美容と健康のバランスを整えられると言われています。早ければ、1ヵ月程で「何だか身体の調子が良くなった」といった人もいるほどです。
※薬膳はあくまでも食事であり、薬ではありません。病気のときにはまず医師の判断と治療を受けましょう。
「薬膳料理」とはじめて聞く方は、「家庭では作れないのでは?」「材料費が高そう」などと思われるかもしれません。でも実は、薬膳料理は身近な材料で意外なほど簡単にできてしまうんです。
例えば「体を温めたいから、唐辛子を食べる」「頭がぼんやりして、血の巡りが悪いからレバーを食べる」といったことも薬膳の考え方のひとつです。意外と普段から行っていることもあるのではないでしょうか?他にも、不調に合わせた薬膳料理の食材として、以下のようなものがあげられます。
■体の冷えが気になる方には……
・まぐろや鮭などの赤身系の魚
・しょうが、唐辛子、にんにく
■むくみが気になる方には……
・スズキなどの白身魚
・そら豆、じゃがいもなど
■ストレスをためやすい方には……
・みかんやオレンジなどかんきつ類
・大葉やにら
このように身近で手に入る食材でも、薬膳の考え方を取り入れて使うことで、未病を改善することにつながります。自分の体質や気になる体調に合わせて、食材や調理方法を選んでみましょう。
次からは、簡単にできる薬膳料理をご紹介します。早速、薬膳料理にトライしてみませんか?
手軽にできる薬膳レシピの一つ「薬膳カレー」をご紹介します。薬膳カレーは、いつものカレールーに薬膳効果のある具材を入れるだけでできます。
カレーの具材は、その人の体調によって異なります。例えば貧血を改善したいのであれば、カレーの材料にアオリイカ、ホウレンソウ、そしてクコの実を入れてみましょう。滋養効果のある食材で、貧血改善に効果があるでしょう。また、冷えの改善や疲労回復には鶏肉や玉ねぎ、にんにくがよいでしょう。
ごはんもので知っておきたいレシピのもう一つが、薬膳粥です。薬膳粥は、とても簡単に作ることができます。お米と水、出汁を使っていつものおかゆを作り、体調に合わせて薬膳の具材を追加するだけです。
例えば、むくみが気になる場合は、おかゆにじゃがいもを入れてみましょう。また、血行の悪さが気になるという方は、れんこんや豚肉、黒ゴマを入れるとよいでしょう。
体調に合わせて食材を選ぶことが、薬膳料理の基本です。シンプルな料理に、ひと手間加えてみるだけなのでぜひ試してみてください。
薬膳スイーツの代表的なものの一つに、杏仁豆腐があります。杏仁豆腐の材料となる杏仁(きょうにん)は、肺の調子を整える作用があると言われています。作り方は、杏仁霜(きょうにんそう)※と、お湯で溶かした粉寒天、温めた牛乳、練乳や砂糖をよく混ぜて冷蔵庫で冷やすだけ。仕上げに、赤いクコの実を少し乗せましょう。
またもっと手軽に薬膳スイーツを摂取したいようであれば、ドライフルーツもよいでしょう。食べ慣れていないと苦手意識を感じるかもしれませんが、あんずやいちじくは美肌効果もあり、また腹持ちもよい食べ物です。コンビニエンスストアなどでも手に入るので、仕事中や家事のときにちょっとお腹が空いたと思ったら取り入れてみましょう。
※杏仁霜:杏仁を粉末に加工し、甘味を加えたもの
いかがでしたか? 薬膳の基本の考え方が身につくと、身近なところで調達できる食材を使って、健康な体作りをしていくことができます。興味がわいた方は、ステップアップとして、薬膳コーディネーター講座の勉強をしてみるのもおすすめです。食材の性質や具体的なレシピが学べるので、今回ご紹介した体の冷えやむくみ、ストレスの解消以外でも、消化機能を促進したり、目の疲れを改善したりするメニューなど、薬膳料理の幅がぐっと広がるでしょう。さらに、講座についてくるレシピ集にも身近な食材で作れるレシピが満載です。貧血を改善するレシピ、美肌のためのレシピ、便秘を改善するレシピなど、家庭で作れる100種類のレシピを学ぶことができます。
美容と健康によい薬膳レシピは、魅力的ですよね。
薬膳は、自分の体調の改善だけではなく、家族や周囲の美容や体調改善も促進することができるものです。薬膳料理に詳しい人はまだそこまで多くないので、薬膳料理のレシピや効果を教えたり作ったりできるようになれば、きっとみんなに喜ばれるはずです。
どんどん取り入れて、自分にとっても周りの人にとっても、健やかでおいしい食事を楽しみましょう!
「薬膳」は「身近にある食材に、薬効を求めて作られる美味しい料理」として、ここ5、6年の間で20~30代の女性の間で人気が高まっています。その理由は何でしょうか? 薬膳の学校「本草薬膳学院」の学院長を務める辰巳洋先生にお話を伺いました。