賃貸の最大のメリットは、「住み替えのしやすさ」です。職場が変わって通勤アクセスしやすい立地に住み替えたいという場合はもちろんですが、家族構成が変わった、住宅にかけられるコストが変わったという場合も、広さや家賃を自由に選ぶことができます。
住み替える場合は、賃貸住宅の初期費用や引っ越し費用がかかりますが、必要な金額は予想できる範囲ですから、マイホームを売却する場合に比べるとリスクが少ないといえるでしょう。
では、ノーリスクかというと、そんなことはありません。一生家賃を払い続けるわけですから、定年後の年金暮らしになってからもそれなりの額の家賃を払わなければなりません。貯蓄を取り崩すことになりますから、現役時代に、老後の生活費用や医療・介護費用の貯蓄に加え、住宅費用分の貯蓄もしておく必要があります。
また、高齢者になると賃貸を借りづらい、家賃の安い賃貸はバリアフリーでない、など希望通りの住宅を借りられないといったリスクも考えられます。現役世代では大丈夫でも、老後にリスクが大きくなることを知っておきましょう。
購入する場合の最大のメリットは、家賃並みの返済で住まいが資産になることです。今は低金利ですから、家賃並みの返済で住宅ローンを組んで、購入することができます。資産となるので、一生住み続けることはもちろん、売ったり貸したりして活用することも可能です。
建物の仕様や設備のグレードが、賃貸より高いものが多いという点もメリットです。長く住むための住宅なので、3LDKや4LDKなどの家族用の広さのものが多く、構造も頑丈で、キッチンや浴室の設備もグレードの高いものが設置されているのが一般的です。また、リフォームやDIYができるので、長く快適に暮らせる条件が整っています。
一方で、購入しない人の最大の理由は「ローンを抱えるのが不安」ということ。30年など長期間返済し続けることになりますから、無理のない資金計画を立てることが重要になります。
住み替えは賃貸より難しくなりますから、将来の収入の見通しや家族設計などをあらかじめよく考える必要があります。さらに、売ったり貸したりする場合も考えて、資産価値を考慮して物件を選ぶということも重要です。
「家を買うか、それとも賃貸に住み続けるか、どちらが得?」とよく聞かれます。生涯かかる住宅コストを何度かシミュレーションしましたが、結論は、あまり大きな違いはないということです。
ただし、どこで家計の負担が大きくなるかは大きな違いがあります。購入する場合は、購入時に頭金や諸費用などの大きな出費がありますが、住宅ローンを返済し終えた後は、住宅のメンテナンス費用だけになります。賃貸では家賃を払い続けるので、老後に負担が大きくなります。将来のマネープランをよく考えて、わが家はどちらが向くか判断するのがよいでしょう。
収入が不安定という人は、収入に応じて家賃を変動できる賃貸が向いていると思います。いずれは実家に戻ることが決まっている人も、賃貸向きといっていいでしょう。定年近くまで転勤を繰り返す仕事の人は、安定してから購入を検討することになるでしょう。
専門家によって意見は異なるでしょうが、個人的には若いうちに購入することをお勧めしています。収入がある現役時代に住宅コストの負担を負う方が、マネーのやりくりをしやすいことが大きな理由ですが、若いうちに購入することで将来設計を話し合い、計画的なマネー管理を心がけるようになることも理由のひとつです。なんとなく賃貸という人は、あるだけ使ってしまい、老後の貯蓄が不足しがちということもありますから。
「マイホームを買うVS借り続ける」の永遠のテーマ。結論としては、どちらもメリットとデメリットがあるということ。どちらを選ぶにしても、デメリットを理解したうえで、それを小さくできる手立てを検討しておくことが大切です。
【執筆者プロフィール】
山本久美子(やまもとくみこ):All About「最新住宅キーワード」ガイド。リクルートにて、「週刊住宅情報」「都心に住む」などの副編集長を歴任後、2004年に独立。住宅ジャーナリストとして、住宅メディアの編集・執筆やセミナー等の講演活動を行っている。宅地建物取引士、マンション管理士、ファイナンシャルプランナー。著書に『買い上手こそ!中古マンション 購入&リフォーム 得する選び方・改装術』(小学館)のほか。
「家族や子供のために、しっかり貯蓄をしなければ」と思う人は多いはず。でも実は、削ってはいけない出費もあるんです。仕事が軌道に乗って世界が広がったり、子供が生まれて家族が増えたり……人生の岐路ともいえるのが、30代。この30代に必要なお金の使い方について、ファイナンシャルDr.として多くの人の相談に乗ってきた北川邦弘さんに、アドバイスをいただきました。