「招待状アート」作りのコツをご紹介する前に、まずは招待状の返信ハガキの書き方をおさらいしてみましょう。教えてくれたのは、冠婚葬祭アドバイザーの中山みゆきさんです。
「結婚式の出欠ハガキは、出席者を把握するための大切なリストになります。出席の返事がすぐに分かれば、相手も嬉しいもの。遅くとも2〜3日中には返事をするようにしましょう。逆に欠席となる場合は、すぐに返事を出すのは控えます。あまりに早く欠席の返事が届くと、相手を寂しい気持ちにさせてしまいかねません。例えば、タイムリミットが1週間以内なら、ぎりぎり4~5日ほど間を空けてから返事を出すようにしましょう。ハガキには必ずお詫びの言葉を添え、”ご結婚おめでとうございます”といったお祝いの言葉を書き添えるのがマナーです」(中山みゆきさん)
■表面
宛名の「行」を「様」に書き直します。この時、×印を付けたり、黒く塗りつぶすのはNG。2本線か斜線で消すようにしましょう。「行」の上に「寿」を書いて消すこともあります。
■裏面
【出席の場合】
御出席の「御」を斜線か二本線(一字消す場合は斜線もしくは二本線、二字以上は二本線)で消し、「出席」を丸で囲みます。縦書きと横書き、どちらの場合も同様です。そして、「このたびはご結婚おめでとうございます」「喜んで出席させていただきます」と、お祝いの言葉を添えましょう。御住所と御芳名の「御」も同様に消しましょう。
【欠席の場合】
「御出席」御欠席の「御」を斜線か二本線(一字消す場合は斜線もしくは二本線、二字以上は二本線)で消し「欠席」を丸で囲みます。縦書きと横書き、どちらの場合も同様です。その下に「このたびはご結婚おめでとうございます」「当日はあいにくやむを得ない用事がございますので」と書き入れましょう。御住所と御芳名の「御」も同様に消しましょう。
なお、事故や仏事、葬儀など、身内の不幸と重なった場合は、理由をはっきり書かないようにします。「やむを得ない用事で」「どうしても外せない用事がある」とぼかす言い回しに。出産のようなお祝いごとは、正直に書いても問題ありません。
上記で簡単にお伝えしただけでも、返信ハガキを書く際にはさまざまな決まりごとがあるもの。となると、そもそも「招待状アート」はマナー違反にならないかと心配する人も多いでしょう。そこで中山さんに聞いたところ、「はっきりとマナー違反とは決まっていない」とのことでした。
「とはいえ、基本的なマナーは守らなくてはいけません。あくまで主役は、招待状の差出人である新郎新婦。他人があまり手を加え過ぎるのも失礼になります。ここで重要なポイントとなるのが、新郎新婦との関係性。イラストを描く場合は、気心の知れた相手限定とすることをおすすめします。職場関係やあまり親しくない、深く付き合いがない場合、基本的にイラストは描かずにコメントのみで返信するのが無難ですね」(中山みゆきさん)
では、親しい間柄なら?
「親しい相手からイラストや装飾がある素敵なハガキが返信されたら、きっと喜んでくれるでしょう。気を付けなくてはならないのは、その内容が結婚式に相応しいかどうか。あまり華美にならないように、返信コメントにワンポイントのイラストを描くだけでも素敵ですね。マスキングテープやレース模様のスタンプなど、100円ショップなどで購入できるアイテムを使うのもおすすめ。手先が器用な方なら、針と糸でハガキに刺繍を施すのも人気です。「郵送ではなく、気持ちを込めて手渡ししたい!」という方は、キラキラ光るストーンシールを使って凹凸のあるデザインにしても素敵ですね。相手の顔を思い浮かべながら作成すれば、きっとおしゃれなハガキとなることでしょう」(中山みゆきさん)
続いては、ボールペンを使って作成する「招待状アート」をご紹介しましょう。描いてくれたのは、花文様アーティストのRiecoさん。「花文様」とは、インドのボディアート「メヘンディ」に触発されたRiecoさんが考案する、美しい花モチーフのデザインです。
「”招待状アート”を初めて見た時は、素敵なアイデアだと思いました。キャラクターが描かれることも多いようですが、花文様のパターンを入れると華やかな雰囲気を演出できて、お祝いの気持ちも伝えられそうですね」(Riecoさん)
そうはいっても、Riecoさんのように繊細な花文様を描くのは難しそう……。
「絵を描くというより、図形のようなパーツを組み合わせて花文様を描いているので、実はそれほど難しくないんです。実際、私も描き始めた時は絵心なんてありませんでした。美術の成績も2でしたし(笑)。絵が苦手な人向けに花文様の描き方をレクチャーするワークショップも行っていますが、皆さん、楽しみながら描けるようになっています。例えば、円を描いてその中に縦横の線を数本引き、互い違いに塗りつぶすだけでもひとつのパターンになるので、そういったものをいくつか組み合わせるだけでも、”招待状アート”として成立すると思います」(Riecoさん)
なるほど、それなら気楽に描けそうです。また、使う道具もボールペン1本あれば良いのだとか。
「描きやすさ重視で、私はゲルインクのボールペンを使っています。どの素材に描くかによって太さが変わりますが、たいていは0.7mm。太い線があるとイラストに動きが出るので、少しはみ出してしまったら、塗り重ねて線を太くしてしまうのもおすすめです。最初からフリーハンドは難しいので、丸や曲線などの図形をなぞって描けるテンプレート定規もあると便利ですよ。また、黒一色で味気ないと思うなら、ワンポイントとしてラインストーンをあしらうとグッと華やかになります。厚みがないものを選び、木工用ボンドで貼れば郵送中にはがれるリスクも減らせますね。100円ショップのビーズや、キラキラしたシールなどでも良いでしょう」(Riecoさん)
さらに、ボールペンで「招待状アート」を作成する時の注意点も聞いてみました。
「ゲルインクのボールペンは滑らかに描けるので、筆圧が掛かりにくいメリットがあります。でも、同じ箇所ばかり塗っていたり、緊張して力を入れすぎると紙に跡が残ってしまうので気を付けましょう。また、インクが乾く前に手や定規でこすってハガキを汚さないように注意したいもの。ぶっつけ本番でいきなり描くのはリスクが高いので、メモなどに事前に練習することもおすすめします」(Riecoさん)
それではここで、実際にRiecoさんが「招待状アート」を描く様子を動画で見てみましょう。ペンを動かすたびに美しいパターンが重ねられていく様子は、思わずため息が出そうに! ちなみに、返信ハガキを回しながら描いているのは、花びらなどを均等に描くためだとか。手の動きや角度を同じ状態にしておかないと、バランス良く均等に描くのが難しくなるそうです。
「基本的には、バランスを見ながら返信ハガキの余白を埋めていくように描きます。欠席の文字は塗りつぶして、アートとしてあしらうようにしましょう。返信ハガキのデザインに合わせて、塗り絵のように色を塗るのも良いですね。こういったアートをワンポイントで入れるだけでも素敵なので、親しい人に招待状の返信ハガキを出す時は、気軽に挑戦してみてはいかがでしょうか?」(Riecoさん)