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2019.11.01

モンスターペアレントと思われないために。先生とのコミュニケーションを円滑にする方法

モンスターペアレントと思われないために。先生とのコミュニケーションを円滑にする方法

"モンスターペアレント"と呼ばれる保護者が学校環境を騒がす一方、逆に学校や先生に対して遠慮するあまり、言いたいことが言えずモヤモヤをためこんでしまうケースも多く見られます。そこで、子育て心理専門家の佐藤めぐみさんが、心理学で用いられる「DESC法」を活用し、先生に気になることを上手に伝えるための方法をご紹介します。

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モンスターペアレントの自己主張を心理学的に見ると……?

モンスターペアレントの自己主張を心理学的に見ると……?

「モンスターペアレント」という言葉、よく耳にすると思います。

「うちの子をぜひ主役に選んでほしい」

「写真を撮る時にうちの子を真ん中にしてほしい」

「取り合いになるようなおもちゃを幼稚園に置かないでほしい」

など、保育園・幼稚園・学校に対し、自己中心的かつ理不尽な要求をする保護者を指します。

一方、モンスターペアレントが注目されることで、自分はそうなっていないかを気にしてしまい、意見を言えずにモヤモヤしてしまう方も多いようです。そこで考えていただきたいのが、「意見を言う=モンスターペアレントではない」ということです。

心理学では、“自己表現の仕方”を次の3つに分けて考えます。

(1)非主張的な自己表現

【例】子供が公園で砂をかけられたのに、何も言えずに悶々としている

(2)攻撃的な自己表現

【例】ケンカの全体像を見ずに、うちの子はそんなことはしないと主張する

(3)アサーティブな自己表現

【例】子供たちや相手の親御さんの話を聞きつつ、砂をかけずに遊んでほしいと自分の意見も伝える

モンスターペアレントの自己表現は、(2)に当たり、自分中心・我が子中心というのが特徴的です。(1)は意見が言えず自分が我慢をしてしまう状態。今回目指すべきは、(2)でもなく(1)でもない、(3)の「アサーティブな自己表現」を身につけることです。非主張的でもなく、攻撃的でもない自己表現であり、相手の意見や立場、気持ち、権利などを尊重しつつ、自分の意見や立場、気持ち、権利も大切にする方法として今、広く注目を集めるコミュニケーションスキル。心理学では、「アサーショントレーニング」として知られるもので、自分の思いがうまく伝えられない人のために開発された心理メソッドとして用いられます。今回は、このアサーショントレーニングの観点から、先生との円滑なコミュニケーション方法をご紹介します。

まずアサーショントレーニングについて、簡単にご紹介します。アサーショントレーニングでは、ある公式を使って表現法を訓練していきます。それは「DESC法」と呼ばれるもので、次の図のような4つのステップで自分の思いを伝えていきます。

モンスターペアレントと思われないために。先生とのコミュニケーションを円滑にする方法

これをベースに、子供の年代別の悩みを上手に伝えていくコツをお伝えします。

【保育園編】「もう少し注意して見守ってもらえますか?」を上手に伝えたい時

【保育園編】「もう少し注意して見守ってもらえますか?」を上手に伝えたい時

1年の育児休暇を終え復職した段階では、子供はまだ1歳前後。言葉でのコミュニケーションが難しいため、日中の園での様子が分からず心配になることも多いものです。保育園から戻りお風呂に入れようとすると、ひざにかすり傷を発見!こんなこともあるでしょう。子供が小さいうちは多少のトラブルは仕方ないと分かっていても、あまり続くと気になってしまいます。では、「今よりちょっとだけ注意して見てほしい」と思った時の先生への伝え方は、どうしたら良いでしょうか?

DESC法で表現してみましょう。

D…ママ「昨日お風呂に入る時に、うちの子の右腕に歯型が付いているのに気付いて…」(事実の描写)

E…ママ「昼間、何があったのかなって心配になったんです」(自分の気持ち)

S…ママ「今日、少しだけ気に掛けて見てもらって良いでしょうか?」(お願い)

C…先生「そうなのですね。分かりました。気を付けて見ておきますね」(Sに対しイエスの選択)

Eの「自分の気持ち」を説明する時に、「あなたは…」と相手が主語となるメッセージで伝えてしまうと、「先生、部屋の様子、どうなっているんでしょうか?先生は何か対応してくださったのでしょうか?」などのように責める表現になりがちです。「私、心配なんです」と“私“を主語にするⅠメッセージで伝えると、相手も受け入れやすくなります。

【幼稚園編】「子供にどんな接し方をしているの?」と先生の対応に疑問を持った時

【幼稚園編】「子供にどんな接し方をしているの?」と先生の対応に疑問を持った時

おしゃべりが上手になり、さまざまな訴えをしてくるようになる3歳前後。子供の言うことをどこまで信じて良いのか迷ってしまうことがあります。「先生が怖い」「すぐ怒るんだもん」「もう幼稚園行きたくない」と子供は言うけれど、叱られるようなことをしたのかもしれないし……。本当のことを知りたいけれど先生にそのまま聞くとカドが立ちそう……。そんな時どう聞いたら良いでしょうか?

まず大切なのは、お子さんにその時の話をよく聞き、具体的な状況を把握しておくこと。それを踏まえ、DESC法で表現してみましょう。

D…ママ「うちの子が○○をしたそうで、昨日帰ってきて息子から聞きました」

E…ママ「しかも、幼稚園に行きたくないなんて言うので、とても心配で……」

S…ママ「具体的にどんなやりとりがあったのか、教えていただけますでしょうか?」

C…先生「昨日の○○についてですね。分かりました。あの時は……」

どんな状況で何が起こったかを踏まえずに、子供の「先生がすぐ怒る」という訴えにそのまま感情的にリアクションしてしまうと、それこそモンスターペアレントのような攻撃的な自己表現になってしまいます。逆に、「カドが立つから」と聞かずにいると、モヤモヤやイライラが募り、園への不信感につながります。

先生の対応に疑問があり、それについて聞きたい時は、まずその経緯を把握してから行動に移すことが大切です。上記のような流れで実際のやりとりをすれば、子供と先生の両者の立場から話を聞くことになるので、先生の対応に問題があったのか、我が子の行動が行き過ぎていたのかが見え、次の行動が取りやすくなります。もし子供が怒られても仕方がないようなことをしたのであれば(例:友達を押して転ばせたなど)、速やかに謝罪することも関係を円滑にするコミュニケーションの一つです。

【小学校編】「うちの子のこと、もっとちゃんと見てもらえますか?」と伝えたい時

【小学校編】「うちの子のこと、もっとちゃんと見てもらえますか?」と伝えたい時

園に比べてクラスの人数が増え、先生が一人一人の状況を把握しづらい小学校生活。でも、子供同士のトラブルが起きた時や勉強の理解度など、先生に気に掛けてほしいことはますます多くなるかもしれません。でもそのまま要望を伝えると、自分の子供だけひいきしてほしいと受け取られないか心配……。そんな時、どう伝えたら良いでしょうか?ここでも、まずは「うちの子のこと、もっとちゃんと見てもらえますか?」という抽象的すぎる質問を、具体的な状況に落とし込むことから始めます。

D…ママ「うちの子が昨日、ずっと一人ぼっちだったと、泣いて帰ってきたんです」

E…ママ「もしかして友達とうまく遊べていないのではないかと、すごく心配です」

S…ママ「休み時間にどのように過ごしているか、気に掛けていただくことはできるでしょうか?」

C…先生「分かりました。教室にいる時に見ておきますね」

「もっとちゃんと見てもらいたい」というのが保護者の本音ですが、現実問題、特別な場合を除いて先生はクラスに一人しかいないため、子供たちのすべてを把握できるわけではありません。具体的に、何が心配なのか、どの部分を特に気に掛けてもらいたいのか、これを明確にすることで先生も対処しやすくなります。小学校に上がると、保護者が先生と直接話す機会が減るものですが、そのままにせずに連絡のルートを確保しましょう。

モンスターペアレントにならないために大切なのは、DESC法を使い、事実報告から始めること

これまで、子どもの年齢別に先生とのコミュニケーションの方法をDESC法を使ってお伝えしてきました。小学生以降も、選ぶ進路などによりトラブルの内容はどんどん変化します。それにあわせて先生に要望したいことも変化し、どのようなコミュニケーションを取るかがより重要になっていくでしょう。でもどんな場合でも共通して言えるのは、要望を伝える時「○○してほしい」と自分の思いをそのまま口にするのではなく、「○○があったようだ」と事実報告からスタートさせることが大切ということです。事実報告であれば、親の主観や感情が入らないので、曲がらずに届きやすく、先生方もそのまま受け止めやすくなります。

最後に、育児相談などで実際にママたちからお話を聞いて感じることを一つお伝えしておきます。「モンスターペアレントにならないか」を心配する方は、基本的にモンスターペアレントにはなりません。気にしている段階で自分の立場を客観視できているからです。ですので、自分はでしゃばり過ぎではないかという心配はせず、ぜひDESC法で先生とコミュニケーションを取ってみてください。伝えるべきことをためこんで、モヤモヤしたりイライラしたりするより、早い段階で伝えた方が、先生もすぐに対処できるので事態を深刻化させずに済むはずです。

執筆者プロフィール
佐藤めぐみ(さとうめぐみ)さん
子育て心理の専門家。ポジティブ育児研究所 代表 & 育児相談室「ポジカフェ」主宰。イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。現在は、ポジティブ育児研究所でのママ向けの検定事業、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポートする活動をしている。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣(あさ出版)」など。
  
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