カフェインの作用・副作用
コーヒーなどに含まれるカフェインは、アルカロイドという窒素を含む化合物の一つです。眠気覚ましなどの覚醒作用や、疲労感の抑制、鎮痛、利尿作用、胃酸の分泌を促すことなどが広く知られています。 さらに、「交感神経を高めてエネルギーを産生する」 「集中力を高めて作業能力を向上させる」 「運動能力を向上させる」などといった作用についても期待され、研究が進められています。
このように、さまざまな作用のあるカフェインですが、副作用には注意が必要。日本の「食品安全委員会」の報告によると、人に対する影響と摂取量の目安は以下の通りです(※1)。
カフェインの人に対する影響
カフェインには、適量を摂取することで頭が冴え、眠気を覚ます効果があります。その一方で、過剰に摂取すると、めまい、心拍数の増加、興奮、不安、 震え、不眠症、下痢、吐き気をもたらすことがあります(※2)。
カフェインに対する感受性は個人差が大きいため、健康にどれくらいの影響を及ぼすか正確に評価することは難しく、日本ではカフェインの1日摂取許容量(ADI。生涯にわたり毎日摂取し続けても影響が出ないと考えられる1日あたりの量)は設定されていません。海外のリスク評価・管理機関においても、人に悪影響のない最大摂取量はさまざまで、例えば欧州食品安全機関(EFSA)は、健康な成人で1日あたり400mg、妊娠中の女性は200mgと定めています。
また、ニュージーランド第一次産業省は、長期的な影響としては、肝機能が低下している人などにおいて、カフェインの摂取と関連する高血圧リスクが高くなる可能性があること、特にカルシウム摂取量が少ない人がカフェインを摂取した場合、カルシウムの体内からの排出率を増やすので、骨粗しょう症の発症の原因となる可能性があることなどを指摘しています。
カフェインの摂取量の目安
カフェインは、コーヒーやエナジードリンク以外にも、緑茶や紅茶などの茶類、コーラなどさまざまな飲料に含まれています。その他にも、苦味料などの食品添加物として使用されていたり、眠気防止薬や頭痛薬などの医薬品にも使用されていたりします。
体に影響するカフェインの量は、個人差が大きいこともあり、日本では健康に影響しない推定量は設定されていません。カフェイン量が気になる方は、東京都福祉保健局のウェブサイトでは、海外機関が設定した妊娠中の女性の最大摂取量の目安である200mgのカフェインを食品に換算していますので、一つの目安として参考にしてはどうでしょう。それによるとコーヒーで1.7杯、紅茶で3.3杯、煎茶で6.7杯、コーラで4本(2L)、チョコレート6枚が1日に摂取するカフェイン量200mgの目安となります(※3)。
市販のコーヒーなどにはカフェインの有無や含有量が記載されていることが多いのですが、実は栄養表示義務がないため、容器に示されていないこともあります(※4)。下の表に、カフェインを含む主な飲料の濃度の目安をご紹介しますので、摂取する際の参考にしてみてください。なお、玉露の濃度が高いですが、玉露は1回に飲む量は15〜20ml程度のことが多いため、1回あたりの摂取量としては煎茶などとあまり変わりません。
カフェインの覚醒作用に特化した飲料やエナジードリンクは、1本でもかなりの量のカフェインを含むため、特に注意が必要です。
また、カフェインを多く含む飲料は、前述の通り利尿作用がありますので、水分補給には不向きです。薬との飲み合わせも要注意で、薬の作用を弱めたり、逆に強めたりする場合があり、あるいはイライラや不眠など不調につながる場合もあります。
薬を常用している方は、コーヒーやお茶だけでなく、コーラ、ココア、栄養ドリンクなどの飲料、またチョコレート、ダイエタリーサプリメントなどの食品にも、カフェインが含まれていることを意識しておいた方がいいでしょう。例えば、カカオにもカフェインが含まれていますが、カカオポリフェノールを多く含む高カカオチョコレートには、普通のチョコレートよりも2.3~4倍のカフェインが含まれていたという報告がありました(※5)。自分では気付かない間に、カフェインを多くとっていたという可能性もあるかもしれません。
ちなみに、ココアやチョコレートは、コーヒーよりもカフェインはかなり少ないのですが、テオブロミンという成分が多く含まれています。このテオブロミンは、興奮作用や利尿作用、気管支拡張など、カフェインとよく似た働きがあるため、ココアやチョコレートのドリンクも、ほどほどにしておいた方が良いでしょう。
コーヒーよりもカフェイン少なめのドリンク
コーヒーやエナジードリンクよりもカフェインが少ない飲み物としては、お茶が挙げられます。例えば、緑茶のカフェインについては、伊藤園と愛媛県立医療技術大学との共同研究で、緑茶のうまみ成分であるテアニンにはカフェインの中枢神経興奮作用を和らげる効果があるという発表がされています(※6)。もちろん、あくまで「和らげる」という効果であり、その効果には個人差もあります。カフェインのとり過ぎが気になる場合は、緑茶などのお茶を選択肢に入れてみるといいでしょう。
ノンカフェインのおすすめドリンク
ノンカフェインのドリンクの場合、科学的な裏付けは十分とは言えませんが、ハーブや果物のアロマ成分が、疲れた時の集中力回復に役立つのではないかと言われています。例えば、スペアミントやペパーミント、メントールなどの香り成分は、ひんやり感や清涼感などが得られ、リフレッシュできると同時に集中力も高まるのではないかと考えられています。
ミントは飲む他にも、古くから葉をもんで、まぶたを撫でて用いられていたことから、「目覚め草」という呼び名もあります。また、グレープフルーツやレモン、オレンジの香りは、交感神経に作用して集中力を高めると考えられています。さっぱりとした酸味も、気分転換に役立つかもしれませんね。そこでおすすめなのが、ミントと柑橘類を使ったドリンクです。
ミントドリンクの作り方
材料
作り方
ポイント
お好みで、ライムやレモン、グレープフルーツ、オレンジなどの、柑橘系のジュースをブレンドしましょう。ホットにする場合は、アイスよりも薄めに作ります。
薬品やアロマの、精油としての効果と飲み物としての効果は異なります。同様の効果があるとは言えませんのでご了承ください。
カフェインに頼らずに眠気を覚ましたいなら、ガムを噛むのも良いでしょう。「よく噛む」ことは、脳の血流を高めると考えられています。よくスポーツ選手が、リラックスするためにガムを噛んでいますよね。
また、覚醒作用を求めるのではなく、疲労回復作用のあるものを摂取して、眠気を和らげるという方法もあります。例えば、鰹だしをとると疲労回復に役立つという研究報告があります。集中し過ぎて疲れを感じた時には、鰹だしのパックなどを利用して、温かいだし汁を飲んでみてはいかがでしょうか。カフェインを含みませんし、清涼飲料や菓子と違ってカロリーや糖質、脂質も低いため、試してみる価値はあるでしょう。
カフェインは、眠気を覚まして集中したい時には役立つ成分ですが、寝つきが悪くなったり、過剰に摂取すると体に悪影響を及ぼしたりすることがあります。自分の体質に合っているのか、摂取量は適切なのかに注意しながら、上手に付き合っていきましょう。
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参考
※1:2018年2月23日最終更新 食品安全委員会 ファクトシート 参照
※2:2015年12月25日(2017年7月14日更新) 農林水産省 カフェインの過剰摂取について
※3:東京都福祉保健局 東京都食品安全FAQ 参照
※4:カフェインを多く添加した清涼飲料水(いわゆるエナジードリンクを含む)の表示については、業界より「100mlあたりのカフェイン量が21mg以上のものはカフェイン量を表示し適量の飲用を促す、子供や妊婦、カフェインの影響を受けやすい人には飲用を控えていただく旨を表示する、などのガイドラインが示されています(2017年11月16日制定 一般社団法人 全国清涼飲料連合会「カフェインを多く添加した清涼飲料水(いわゆるエナジードリンクを含む)の表示に関するガイドライン」 参照)
※5:2008年2月6日公表(2008年3月4日更新) 国民生活センター 高カカオをうたったチョコレート 参照
※6:2014年9月11日 伊藤園 テアニン摂取による中枢神経興奮作用緩和を確認-カフェインの作用を緩和- 参照
※7:2015年 近藤高史「和食を支えるだしの魅力」日本醸造協会誌 110巻2号p86-94