「お子さんを上手に寝かしつけるためのポイントは、大きく3つ。子どもの『活動量』『満足感』『安心感』です」(横山知己さん)
そう話すのは、保育士の経験を持ち、現在はベビーマッサージ教室を主宰している横山知己さん。「寝かしつけ」というと、「子守唄」や「背中トントン」など入眠時のテクニックに目を向けがちですが、まずは、子どもの1日の活動量をしっかりと確保することが大切なのだそうです。
「例えば保育所では、子どもたちの生活リズムが整うよう、毎日決まった時間に遊び、食べ、眠ることを促すプログラムが組まれています。ところが、ご家庭ではなかなかそうもいかず、生活リズムが乱れてしまいがち。その結果、寝つきが悪くなることも珍しくありません。そこで意識していただきたいのが、お子さんの活動量。やはり、体力の消耗は睡眠を誘いますので、公園遊びやお散歩などで、お子さんがしっかりと身体を動かす時間をつくることが大切です」(横山知己さん)
ところが、子どもを「活動」させたつもりが、逆効果になる場合もあります。
「それは、外出先がショッピングモールなどの場合。こうした場所は音や刺激が強く、お子さんを興奮させてしまうことがあります。またそういった場所では、迷子になってしまうからと、お子さんをベビーカーに乗せることも多いと思いますが、それでは意味がありません。公園で好きなブランコに乗ったり、パパやママと手をつないで近所をお散歩したり、お子さん自身が身体を動かせて、かつ、『楽しかった』と満足するような活動をさせてあげましょう」(横山知己さん)
それでは、子どもを寝かしつけやすくするには、どのような空間づくりをすればいいのでしょうか。
「保育所のお昼寝では、基本的に就寝時の明るさをカーテンで調節します。カーテンには視界を暗くし、目に入るものをシャットアウトする効果がありますが、それに加えて『カーテンをひいたらお昼寝だよ』という形で、条件反応による眠りへの導入効果も期待できるため、ご自宅でもおすすめです。また、真っ暗だと怖がるお子さんもいるので、部屋を暗くすることに、こだわる必要はありません。あくまでも、お子さんが安心して眠りにつきやすい環境をつくることが大切です」(横山知己さん)
音や室温について、気を付けるべきことはあるのでしょうか。
「お子さんが口ずさんでしまうお気に入りの曲などは、興奮を促すため避けてください。クラシックなどの普遍的な楽曲の中から、『寝る時はコレ』と何曲かセレクトしておき、毎日同じ曲をかけると良いでしょう。
そして、一般的に子どもは大人よりも体温が高いので、室温はやや低めに設定するのがおすすめです。さらに、寝ているお子さんの背中に手をあてて汗チェックをするなど、体温には常に気を配りましょう。もしも汗をかいていたら、エアコンやタオルケットで調節を。特に手足にタオルケットをかけられるのを嫌がるお子さんも多いのですが、お腹だけは冷やさないよう、きちんとガードしてあげると良いでしょう」(横山知己さん)
近年、耳にすることが多くなった「入眠儀式」という言葉。毎日寝る前に決まった行動をとることによって、「○○したら寝る」という習慣を身体に覚えさせ、より入眠をスムーズにする効果があります。
「『入眠儀式』の基本は、すべての行動をルーティン化することです。ご飯を食べてお風呂に入り、歯磨きをして絵本を読んだら寝る。絵本が1冊から2冊になったり、絵本ではなく手遊びになったりするのは構いませんが、そうした一連の手順を、なるべく変えずに毎日行うことが重要です。
『今日はこの後、何をするのだろう?』とお子さんが考えることなく、すべての行動を習慣化できれば、生活リズムも整い、自然な眠気が訪れます。何よりルーティン化することで、ご自身もグッとラクになるでしょう」(横山知己さん)
多くのママやパパに効果的なベビーマッサージを指南している横山さんですが、子どもを寝かしつける際の撫で方やトントンにコツはあるのかもお聞きしました。
「上から下に向かって、毛の流れに沿って撫でるのがおすすめです。特に、自律神経が通っている背中を撫でてあげると安心します。
トントンは、速さに気を付けましょう。家事などで忙しいと、つい速度が上がってしまいがちですが、早過ぎるとお子さんの目が覚めてしまう可能性もあります。どのくらいの速さがいいのか分からない場合は、ご自身が旦那さんや奥さん、ご友人などにトントンをしてもらい、どのペースが心地よいのかを実感すると良いでしょう」(横山知己さん)
そして、子どもの寝かしつけにおいて重要なのが、冒頭でもご紹介した「安心感」です。「入眠儀式」の時も添い寝の時も、常に子どものそばで声をかけてあげることが大切です。
「ママやパパの言葉は、魔法の言葉。特に眠る直前は、『そばにいるからね』と声をかけることで、お子さんは安心感を抱き、眠りにつきやすくなります。
眠ったお子さんから離れる際も、ご自身がいた場所にクッションや毛布を置くなどして、温もりを残すといいでしょう。子どもは敏感ですので、体温が感じられるよう、身につけていた毛布などを置いてあげると効果的です」(横山知己さん)
「子どもの寝かしつけは、ママやパパ1人だけが頑張るのではなく、家族全員の協力が大切です。例えば、お子さんが寝つきそうな正にそのタイミングでパパが帰宅し、目が覚めてしまった……なんていう経験、一度はあるのではないでしょうか。そうしたことを防ぐためにも、ルーティン化された生活の中で、時にはパパの帰宅を10分遅らせてもらうなど、家族全員でお子さんの生活リズムに配慮していくことが大切です」(横山知己さん)
寝かしつけをスムーズに行うことは、子どもの発育にはもちろん、仕事や家事、育児に忙しいママやパパにとっても、大きなメリットになります。「子どもが寝てくれない!」とイライラする前に、子どもが自然に寝つきやすくなる環境や生活リズムを整えてみましょう。