ジェネレーションギャップ、いわゆる「世代間の差」が生まれる理由は至ってシンプルで、「生きてきた時代が違うから」と話す米川先生。
「物が生まれたり無くなったり、文化が変わったりすることで、時代は『変化』していきます。文化や暮らしが変われば当然使う言葉も変わり、価値観も変わる。それがジェネレーションギャップに繋がります」(米川先生)
同世代間で使われる言葉や流行語に、ジェネレーションギャップは顕著に現れます。若い世代が遊びや仲間内で使う若者言葉を職場などで目上の人に使ってしまうと、「馴れ馴れしい」と受け取られて、コミュニケーションが上手くいかなくなるどころか、関係性にもヒビが入ってしまう恐れがあります。
年上世代との言葉のジェネレーションギャップを埋めるために自覚しておきたい若者言葉には、どんなものがあるのでしょうか。
あなたが普段当然のように使っている言葉も、実は同世代の間でしか伝わっていない可能性も!?以下の代表的な若者言葉を見ることで、今一度、自分の言葉を見直すきっかけにしてみてくださいね。
パターン1:「映える(ばえる)」「じわる」などの動詞系言葉
「近年の若者言葉で最もよく見られるのが、『○○る』というように動詞に変える言葉。この手法は昔からよくあり、『サボる』『事故る』など今では一般化した言葉も多くあります」(米川先生)
パターン2:「おつあり」「とりま」などの省略言葉
「おつありは『おつかれさま、ありがとう』、とりまは『とりあえず、まぁ』。このように省略するのも若者言葉によく見られる特徴です」(米川先生)
パターン3:「ワンチャン」などの自然発生的言葉
「近年はテレビを観る人が少なくなり、閉塞感が漂う時代であるため、以前よりも流行語が生まれにくくなってきています。しかしその中でも、『もしかしたら』という意味の『ワンチャン』は女子高生など若い世代で多く使われている傾向があります」(米川先生)
パターン4:「エモい」「草(www)」などのSNSから発生した言葉
「近年の若者言葉の特徴で外せないものといえば、SNSから発生した言葉です。『エモい』や『草(www)』をはじめ、『gdgd(グダグダ)』のように文字で流行った言葉を対面コミュニケーションでも取り入れるケースが多くあります」(米川先生)
続いては、40代以上が昔よく使った言葉をご紹介。どんな言葉が流行ったのか知っておくことで、言葉のジェネレーションギャップを縮めましょう!
※引用:いずれも米川明彦著『俗語発掘記 消えたことば辞典』(講談社選書メチエ)、『ことばが消えたワケ』(朝倉書店)、『平成の新語・流行語辞典』(東京堂出版)
表を見ると、世代ごとに言葉に特徴があることが分かります。米川先生によると、それぞれ以下のような時代背景を反映していると考えられるそうです。
世代別、若者言葉の時代背景
40代(1970年代生まれ)
「アッシー君」「キープ君」など、バブルがはじけてもまだその余韻が感じられます。時代が女性中心になってきて、服や遊びも派手になり、「超MM(マジムカツク)」のように流行語も過激なものが多い傾向があります。
50代(1960年代生まれ)
バブルまっただなかで世間は消費謳歌ムード。「マルキン」「マルビ」「おやじギャル」「態度L」などのように余裕や遊びがある時代でした。
60代(1950年代生まれ)
テレビや雑誌が文化の中心で、CMから生まれた「アタリ前田のクラッカー」や「ウハウハ」といった言葉が流行りました。また、「パーペキ」「話がピーマン」のような言葉遊びが盛んであり、「ゴジピタ」のようなOL用語が注目され、OLがもてはやされた時代でもあります。
世代によってよく使う言葉が異なるのは、「自分たちが20代の時に使っていた言葉を今も使う傾向にある」ためだと話す、米川先生。
「60代は1970年代に、50代は80年代に、40代は90年代に20代を過ごしていて、その時の若者言葉を使い続ける。そうすると、90年代後半以降に生まれた現在20代の人が知らない言葉が出てくるというわけです」(米川先生)
では、自分とは異なる世代と円滑なコミュニケーションを図るためには、どうしたら良いのでしょうか?
米川先生による「覚えておきたい言葉の3ヵ条」をマスターして、世代を超えたコミュニケーション上手を目指しましょう!
覚えておきたい言葉の3ヵ条
第1条 自分の言葉をいつも正しいと思うな
「同じ言葉でも、時代によって使い方や意味は変わっていきます。自分がそんな言い方をしない、使わないからといって他人の言葉を非難するのはおかしいと気付くことが大事です」(米川先生)
第2条 言葉は人のためにある
「よく間違える人がいるのですが、言葉は人のためにあるもので、言葉のために人がいるのではありません。あくまで中心は人で、言葉は道具です。人が言葉を自由に使うのであり、使い勝手のいいように変わるのが言葉というものです」(米川先生)
第3条 言葉は通じ合うために使う
「言葉は伝え合うためではなく、通じ合うために使います。『通じ合う』というのは、相手を理解し、相手からも理解されるということ。互いに理解し合おうという心がなければ、何を言っても通じ合えません。言葉が足りなくても察する、相手を思いやる気持ちがあるからこそ、言葉を通したコミュニケーションをスムーズに行うことができるのです」(米川先生)
20代が今使っている言葉も、いずれは死語や古い言葉になっていく運命。年上世代の言葉を「イタイ!」と敬遠するのではなく、歩み寄ってそれぞれの世代の言葉を理解しようとすることが円滑なコミュニケーションの秘訣です。各世代がよく使う言葉や、米川先生による「覚えておきたい言葉の3ヵ条」を取り入れて、異なる世代とのコミュニケーション上手を目指しましょう!