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2017.10.25

話題のカリスマ教師に教わる!部下や後輩のやる気を引き出す方法

子どもの知的好奇心をくすぐり、自ら「勉強したい!」という気持ちを芽生えさせる授業で、大注目のカリスマ教師・沼田晶弘さん。子どものモチベーションを上げる言葉や声の掛け方には、大人に対しても応用できる部分がたくさんあるそう。具体的な方法やテクニックについて伺います。

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子どもたちのやる気を引き出す授業とは?

一般的な小学校の授業と、子どもたちのやる気を引き出す沼田先生の授業とは、一体どんな違いがあるのでしょうか。沼田先生に伺いました。

「僕の授業は『そもそも論』から入ります。まず、なぜ勉強をするんだっけ?何か得になることがあるんだっけ?という部分を、子どもたち自身に徹底的に考えさせて、やる気になるきっかけを提供します。

その上で、僕が『アナザーゴール』と呼んでいる手法を活用し、勉強とは違うところにゴールを設定します。そのゴールを目指して夢中になって取り組むうちに、気がついたら勉強していた、という状況をつくります。

例えば、以前担当した6年生の生徒たちは、『卒業旅行に帝国ホテルでご飯を食べる』というアナザーゴールを設定しました。そのために必要なお金を自分たちで稼がなければいけません。もちろん小学生は勤労ができないため、お金を稼ぐ手段として、市町村や企業などが主催する作文や俳句など、ありとあらゆる賞金付きのコンテストに参加しました。1つや2つ参加するぐらいでは受賞できなくても、多くのコンテストに参加していると、そのうちにクラスの誰かが受賞するようになります。

そうすると、それを見た他の生徒たちも、あの子が受賞できるんだったら私だってできるはずだと、どんどん前のめりになっていきます。最終的に、クラス全体で1,000くらいの作品を応募することになりました。

そういったことを繰り返していくうちに、何をどう調べて、どうまとめたら良いアウトプットができるのかといったことを学んでいき、最終的には、自分たちでコンテストで稼いだお金で目標を達成することができました。

このように『気がついたら勉強しているようなシステム』を、試行錯誤しながらつくっています。子どもたちも『必死に勉強しちゃってる自分』に気がついて、苦笑いしたりしますが、また楽しく学ばせてくれるんでしょ?という僕に対する期待と、信頼関係があるので成立しています」(沼田先生)

子どもも大人も、やる気になるメカニズムは同じ

日々の指導の経験に基づき、モチベーションについてビジネスマン向けの講演やセミナーなども数多く行っている沼田先生。そんな沼田先生に、子どもと大人のモチベーションにはどのような違いがあるのかを伺いました。

「基本的に、子どもも大人も根っこの部分はまったく同じだと思います。ただ、大人は羞恥心や理性があるので、モチベーションの変化が読み取りづらい部分がありますよね。

そのため、まずは指導をする相手をよく観察することが重要です。観察とは、相手の性格や、どういったことに対してどのような反応をするのかを理解すること。例えば、お昼ごはんの時間など、リラックスしている時の何気ない会話や笑い話をしている時には、相手の素の部分が見えるので、理解するチャンスですね。

丁寧な指導が正解かどうかは、相手によって異なります。誰に対してもこれが正解というマニュアルなどなく、その相手にとってベストなやり方を探っていく必要があります。

また、僕はクラスの全員と毎日交換日記をやっているのですが、普段あまり会話をしない生徒ほど、たくさん書いてきます。会話が苦手な部下とは、テキストを通じたコミュニケーションを増やしてもいいかもしれません」(沼田先生)

やる気はオン・オフの2種類ではありません

「勘違いをされている人が多いのですが、やる気というのはオン・オフの2種類ではなく、グラデーションになっています。いままでの人生を振り返って、あるきっかけで突然やる気になったという経験はありますか?おそらくほとんどの人がないと思うんですよね。

コップに水が溜まっていくように、やる気は何日もかかって溜まっていくものなんです。それなのに、部下が一発でやる気になるような言葉やテクニックはありませんか?って、みんな欲しがるんですよね。そんな誰にでも効果のある特効薬みたいなのはないですよ(笑)

あくまでも、『コップの水が溜まっていくように、やる気を少しずつ積みあげていく』ことが大事です。


あと、これは完全に僕の仮説なのですが、やる気がある状態というのは、基本的な人間の欲求が満たされた上に成立するものなのではないかと考えています。

学校の授業などで、『マズローの欲求5段階説(※)』という言葉を耳にしたことがあると思います。人間の欲求は5段階のピラミッドのように構成されていて、低階層の欲求が充たされると、より高階層の欲求を欲するというものですね。

※マズローの欲求5段階説……アメリカの心理学者である、アブラハム・マズローが提唱。人間の欲求は下から、生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、尊厳欲求、自己実現欲求の、5段階のピラミッド型で構成されるとしている。

やる気というのは、このピラミッドの一番上に位置する、自己実現欲求の部分に該当するのではないかと思っています。

ピラミッドの下に位置する、生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、尊厳欲求が満たされて初めてやる気になるとしたら、結構ハードルが高いんですよね。そのため、モチベーションを上げるためには、個人ができること、企業として取り組む必要があることの、両面から考える必要があると考えています」(沼田先生)

失敗できる環境が、結果に向かって動く人をつくる

「僕の授業は、その場で思いついたことをどんどん発言していい『フリートーク形式』で、テンポよく気軽に発言できる状態にしています。

最近は、クラスの中で『テイク2』というのが流行っていて、誰かが授業中に失敗すると、『カット!テイク2いきます』という声が掛かり、その前に発言した人が同じことを言って、失敗した人がもう一度やり直して正解する、ということをやっています。そうやってふざけてしまえば、間違えてもやり直せばいいんだ、という雰囲気になりますよね。

僕は、『失敗してもいい』とは言っていませんが、『失敗しても何かの糧にできる』『やり直すことで次に繋げればいいじゃないか』ということは伝えています。

気軽に発言できる、また失敗してもやり直して次に繋げられる環境というのは、部下や後輩のやる気を引き出す上でも大切だと思いますよ」(沼田先生)

依頼したいことは『アイ(I)メッセージ』で伝える

「また、これはちょっとしたテクニックですが、誰かに依頼したいことがある時は『アイ(I)メッセージ』が有効です。

何か依頼する時は、命令系で『ユー(you)』を主語にしてしまいがちですが、アイ(I)メッセージは相手に決定権を与えて決めてもらいます。

例えば、『これ(あなたが)明日までにやって』ではなく、『これやって欲しいんだけど、いつまでにできそう?』と相手に選択肢を与えて『(わたしは)いつまでにできます』と自らの意思で決定させるイメージですね。

仕事を『やらされる』のも『任される』のも、本質的には同じことですが、受け取り手の意識や意欲は変わってきます。伝え方次第で、相手のモチベーションも上げられますよ」(沼田先生)

部下や後輩のやる気を引き出して、活気のある職場に

いかがでしたか?沼田先生が実践している、子どもたちのモチベーションを上げるための工夫の中には、ビジネスパーソンが部下や後輩のやる気を引き出す上でも有効なものがたくさんありました。

やる気は、少しずつ積みあげていくことが大切。普段から部下や後輩の言動に気を配り、どんな性格で、どのような価値観をもっているのか、理解を深めてみましょう。そして、相手にあったコミュニケーションを意識しながら、ぜひ沼田先生流の「やる気を引き出す方法」を実践してみてください。きっと今まで以上に、活気のある職場になると思いますよ。

プロフィール

沼田晶弘さん

『MC型』教師、小学校教諭1975年東京生まれ。東京学芸大学教育学部卒業後、2006年から東京学芸大学附属世田谷小学校へ。児童の自主性・自立性を引き出す斬新でユニークな授業が読売新聞「教育ルネッサンス」に取り上げられて話題に。 著書に『「変」なクラスが世界を変える』(中央公論新社)、『「やる気」を引き出す黄金ルール』(幻冬舎)、『ぬまっちのクラスが「世界一」の理由』(中央公論新社)がある。

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