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2016.08.01

「専業禁止」の会社・エンファクトリー代表取締役社長に聞く! 社員に副業をすすめる理由とは......?

「専業禁止」の会社・エンファクトリー代表取締役社長に聞く! 社員に副業をすすめる理由とは......?

「専業禁止」を掲げ、社員に複業(パラレルワーク)を行うことを推奨する、という斬新な理念で注目されている、株式会社エンファクトリー。パラレルワークを推奨するにいたった経緯や実施後の変化について、代表取締役社長の加藤健太さんにお話を伺いました。

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専業禁止! 新しい企業と社員の形をつくる

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副業は一般的に副収入を得る手段。業務に支障が出るとして、社員に副業を禁止している企業も少なくない中、エンファクトリーは、副業OKな企業の1つです。

それどころか、「専業禁止」を掲げ、単なる副収入を越えて、本業になりえるような複数の事業を掛け持つことを勧めており、呼び方も「副業」ではなく、「複業(パラレルワーク)」という言い方をしています。実際、中には複業から会社の給与を上回る月収を得ている社員もいるとのこと。

このようなユニークな経営方針は、どのような経緯で生まれたのでしょうか。代表取締役社長の加藤健太さんにお話を伺いました。

――社員に複業(パラレルワーク)を推奨するようになった経緯は?

エンファクトリーは元々、「生活総合情報サイト All About(オールアバウト)」から2011年に2つの事業が分社してできた会社です。All Aboutは「ガイド」と呼ばれる専門家の、個の力を活かすビジネスを展開しており、「個の自立を支援する」という人材ポリシーは元々ありました。それが発展して今の状態になったんです。

「専業禁止」といっていますが、専業を絶対に禁止しているわけではないんです。選択の自由を与えているんですね。僕らは「生きる力」と呼んでいるのですが、それを得るための機会を提供して、そしてそれを生かすかどうかは自分次第だから、複業をどんどんやっていいよということなんです。

それを言葉にするときに、よりわかりやすく「専業禁止」と言っちゃおうかと。まあキャッチコピーですね。言葉のインパクトがあったので、やはりすごく反響があり、多くのメディアに取り上げていただきました。

――企業にとってどんなメリットがあるんですか?

以前は社員教育のため、外部から専門家を呼んで講演会や社員研修をやったりしていたのですが、それらの効果は一時的で、身にならないことが多かったんです。

それならば複業をOKにして、社員が自分で「ビジネスを考え、お客さんを探して、商品を作って販売して、確定申告までやる」という方が、よっぽど良い経験になります。経営者目線も身につきますし、会社としても研修費用がかからず、社員が自ら成長してくれるのでありがたいですよ。

会社に尽くすな!
パラレルワークで企業も社員も強くなる

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――優秀な人は独立して辞めていきませんか?

そうですね。実際、過去に副社長や執行役員といったような優秀な人たちが独立して辞めていっていますが、そこで関係がなくなってしまうわけではありません。独立後は外部のパートナーのような形で、一緒にビジネスを展開するフェロー制度という仕組みがあります。

そういったメンバーが7~8人いて、一緒にビジネスを展開することで、その人たちのネットワークを通じて様々な仕事のネタや情報が入ってきます。そして何か仕事が発生した時には、外部リソースとして仕事を依頼することもできます。いまも1ヶ月に1つぐらいの勢いで一緒に新しい案件やサービスを立ち上げる、良い関係が築けています。

こうして独立したメンバーとも連携しながら、ここで働くメンバーの「生きる力」を伸ばせる場所になっていけるのが理想的だと考えています。

――この関係性や制度をうまく機能させるポイントは?

経営陣と社員の信頼関係が一番重要です。制度だけあってもまったく機能しないと思います。私たちは、お互いに誠実であるというのをポリシーとしてやってきているので、その信頼関係がないと成立しません。

パラレルワークに関しては特にルールや決まりごとを設けていないのですが、1つだけ必ず実施しているのが、半年に1度の「en Terminal」という発表会です。

いま各自のパラレルワークがどういう状況で、どんなことをやっていてどれくらい儲かっているか、フェローなどにも参加してもらい、みんなで発表を聞きます。こうやってすべてをオープンにすることが、パラレルワークによって起こりうるあらゆる問題を解決することにつながると考えます。

副業OKをうたう企業では、許可制といった形をとっているところもあるのですが、同僚が何をやっているのか知らない状況では、うまく機能しないのではないでしょうか。

また、パラレルワークの内容をオープンにすることで、発表する社員側にも2つのメリットがあります。

1つは、複業の取り組みをオープンにすることで、複業に対する覚悟が決まることですね。みんなに言った手前やらないとカッコ悪いので、一生懸命やるしかなくなります。

そして2つめとしては、やっていることをオープンにすることで、じゃあこんな人がいるよとキーマンを紹介してもらえたり、助言がもらえるなど等のサポートが受けられるという利点があります。

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――具体的に、どのようなパラレルワークをやっていますか?

いろんなことをやっている人がいるんですが、今一番稼いでいる人は個人でメディアをやっています。「就活生向けのサイトを運営して、そこから企業の説明会に送客する」みたいなことをやり、その人は月に100万円ぐらい稼いでいますね。

またある人は、犬のパグ専用の洋服を作って販売しています。トイプードルやチワワの洋服は一般的なのですが、パグは体型が独特で合う服がないそうなんですよ。

他には防災の専門家として、朝のTVにコメンテーターとして出演したり、中小企業向けのセミナーをやったりしている人もいます。あとは、ネットサービスを別会社で立ち上げている人もいます。

もちろん、みんな大変なんですよ。仕事で一人前のミッションをこなしつつ、そこにプラスアルファで、自分のミッションを乗っけるということなので。そこについては会社は我関せずで、全て本人次第。覚悟がないとできません。

ときどき勘違いをして、片手間で仕事をしながらお給料がもらえる企業だと思って求人に応募してきたりする人がいるのですが、当然一人前のミッションはこなさなければいけないので、そこに関して会社が何か融通をきかせるといったことは一切ありません。

それを理解した上で自分の力をつけたいという人が、一番この環境にフィットすると思います。

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――これから企業と社員の関係はどのように変化していくと思いますか?

企業と社員の形は画一的ではなく、100社あれば100通りの形があってもよいと思います。

社会変化に国の制度がまだ追いついていない部分があるので、そういった変化はベンチャー企業からどんどん始まっていきつつも、しばらくは混沌とした状態が続くのではないでしょうか。

大企業では、ゼロから何かを立ち上げるといった感じの修羅場を経験して、成長できるような機会が少なくなってきているように感じます。そして上には年上の人がいっぱいいて、ポストが空いていないので、ある種の閉塞感を抱えて仕事をしている人も多いと思います。

以前はただ同じ会社で働いていれば、自動的に給料もあがって出世できた時代がありました。いまは出世が難しくて会社の今後の成長も不透明なのに、国の支出がどんどん増えていき、公的年金がどうなっていくかも分からないような状況です。このような時代であることを念頭において、生きていく必要があると思います。

どのような生き方を選択しても良いと思いますが、こういう時代に生きているからこそ、自分の選択によって人生は大きく変わると思います。大事なのはスキル、知識、資格などで自分をブラッシュアップしつつ、常にエネルギーを貰える場所に自分をおくことなのではないでしょうか。

――加藤社長、本日はありがとうございました。


社員がパラレルワークを通じて学ぶことが、会社の事業にとってもプラスになる。独立した人たちと連携して一緒に働くことが、スピーディーに新しいサービスを立ち上げることにつながる……。今のところ、エンファクトリーでは複業可にしたことによるデメリットを感じていないということなので、今後このような副業OKの企業は増えていくかもしれません。

あなたは副業が認められたら、どんなことにチャレンジしてみたいですか? 自分の性格や個性を見極めながら、自分にとっての「生きる力」を磨く一歩をふみだしましょう。

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