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2016.07.13

マイナンバー導入で「社労士」の仕事に影響はある?

マイナンバー導入で「社労士」の仕事に影響はある?

マイナンバー制度が導入されて約半年。カード交付の遅延やシステム障害など、お騒がせのニュースもありましたが、実はマイナンバーの影響を大きく受けると言われているのが「社労士」の仕事です。今大きな転換期を迎えている「社労士」の実情に迫りました!

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社労士ってどんな仕事?

社労士(社会保険労務士)は、人事や労務管理などの専門家として、さまざまな分野で活躍できる国家資格です。企業やそこで働く人々の雇用や労働条件、社会保険などについて指導や相談を行います」

こう教えてくれたのは、「あした葉経営労務研究所」代表の本田和盛さん。社労士として独立後16年の間に、200以上の企業で、人事・労務・採用に関するコンサルティングを行ってきたベテランです。現在は「特定社労士」として、より幅広い業務を行っています。
社労士のメインの仕事は、健康保険や雇用保険など社会保険に関する事務手続きを、使用者に代わって行う「代行業務」。この代行業務は原則、「開業社会保険労務士」でなければできない、いわば社労士の独占業務です。

この社労士の仕事が、今年1月から導入されたマイナンバー制度により、大きな転換期を迎えているのです。

マイナンバー制度って、どんなもの?

マイナンバー制度って、どんなもの?

そもそもマイナンバーとはどんな制度なのでしょう。

「マイナンバー制度は、各種の行政手続きを簡素化するために導入されたものです。マイナンバーは図書館カードや印鑑登録証などに利用できるだけでなく、e-Taxなどの電子申請も行えるようになります」(本田さん)

2017年7月にインターネットサイト「マイナポータル」が始まる予定ですが、そうすると自宅のパソコンにカードリーダーを設置して、マイナンバーカードを読み込んで利用できるようになります。そうすると、医療費控除の領収書をネット上で受け取れるなど、格段に便利になるそう。

このように行政事務が簡素化されるため、社労士の仕事が減ってしまうという説があるのですが、実はマイナンバーの導入は社労士にとって追い風だと本田さんは言います。

マイナンバーで社労士の仕事が増加!?

マイナンバーで社労士の仕事が増加!?

「マイナンバーは秘匿性が高いので、企業で社会保険の事務手続きをする担当者は、これまで以上に厳格な管理が求められるようになります。また、扶養控除等申告書に7年間の保管義務があるため、従業員の退職後もマイナンバーの管理が必要となります。つまり企業の負担が増えるのです。これは社労士にとってビジネスチャンスです」(本田さん)

どうやら、個人情報の取り扱いのプロである社労士に対する需要は高まっているようで、実際、マイナンバー導入を機に、社会保険の事務手続きを社労士に委託する会社が増えているそう。

「ただ、現在は社会保険の手続き事務は社労士の独占業務ですが、税理士などの他士業も、この分野を虎視眈々と狙っています。規制緩和が進むと、競争は一気に激化するでしょう」(本田さん)

社労士が生き残るためには

社労士が生き残るためには

●目指すはコンサルタント業

今後も社労士が活躍し続けるためには、「労務管理の専門性を高め、クライアント企業の顧問社労士として、経営者の右腕を目指すことが必要」だと本田さんは言います。

「これからの社労士のコア業務は労務管理です。そこでは顧問社労士の専門知識や経験が強みとして生かされるのです」(本田さん)

ただ、経営者の右腕というと、社内の幹部社員や専門職スタッフがイメージされますが、外部の社労士が本当に経営者の右腕になれるのでしょうか?

「会社の中にも労務管理に詳しいベテランの専門家はいますが、あくまでも社内業務の専門家であるにすぎません。社労士は、多くの企業を見ているので、高い視点から専門的なアドバイスができるのです」(本田さん)

このように、経営者が社労士に求めているものは、マイナンバーや社会保険の知識だけではないようです。

●スキルアップで仕事を拡大

本田さんのように「特定社労士」の資格を取得するのも、業務拡大に役立ちます。特定社労士は2007年にできた資格で、急増している労使間のトラブルを、裁判外で迅速に解決するために作られました。資格を取ると、不当解雇やセクハラ・パワハラなどのトラブルを解決する「紛争解決手続代理業務」を行えるようになります。

また、本田さんは国内の大学院で人材マネジメントについて学び、MBAを取得。さらに博士課程でキャリアと雇用政策について学び、現在も研究を続けています。このようにスキルアップすることで、専門的な立場からアドバイスを行ったり、賃金制度の設計や研修講師などの仕事を行える可能性もあるそうです。

世の中の変化を肌で知るための「日々の情報収集」が大切!

また、社労士として生き残るためには情報収集が重要だという本田さんは、毎年、書籍費に100万円以上を支出しているそう。

「書籍以外でも新聞は4紙、雑誌は5誌を定期購読。人事担当者が集まる小さな勉強会や、アカデミックな学会にも、時間の許す限り出席しています。そうやって世の中の大きな変化を肌で知っておくことが大切だと思います」(本田さん)

今後社労士として活躍するためには、日々の学習の積み重ねと、先取りの意識が必要と言えそうです。

Text:安本真留美

【プロフィール】

本田 和盛(ほんだ かずもり):
特定社労士・あした葉経営労務研究所代表
コマツにて法人営業などを担当後、2000年に社労士として独立。これまでに200以上の企業で人事・労務・採用に関するコンサルティングを行ってきた。法政大学大学院経営学研究科修了(MBA)。法政大学大学院政策創造研究科博士課程(満期退学)。著書に「厳選100項目で押さえる管理職の基本と原則」、「精選100項目で押さえる管理職の理論と実践)」(以上/労務行政)ほか多数。

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いかがでしたか? 社会保険労務士(社労士)を取得すると、様々な道が開けてきそう、と感じた方も多いのではないでしょうか。
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