専業主婦のご家庭ではママが家事・育児の多くを担っている、という場合が多いでしょう。しかしママが再就職をするとなると、ライフスタイルに変化が生じるため、夫の協力を多かれ少なかれ仰げるようにならなければ難しいものです。ではどのようにすれば、夫に協力してもらえるようになるのでしょうか。
再就職をしたいという動機が「家計の足しのため」という方もいると思います。しかし、それだけでは夫の家事の協力をなかなか仰げないという方も多いはず。結局、家事・育児の負担を専業主婦時代と変わらず背負ったままになってしまい、フルタイムで仕事をすることにブレーキをかけてパートタイマーで年齢を重ねる方が多いです。せっかく働くのであれば、キャリアを重ねることができ、やりがいと収入も増えていく働き方を選んでほしいと思います。もし、今すぐは難しいけれどもフルタイムをめざしたい、いずれは自分の好きなことで働いていきたいと思っているのであれば、夫に自分がなぜ働きたいのか、自分が働きに出ることがどんなメリットがあるのかを伝え、「働く覚悟」を見せることも大事です。
手っ取り早く夫を説得させるには、収入が増えることによるメリットを伝えること。内閣府の発表によると女性が正社員で就業継続した場合と、パートで再就職した場合の生涯賃金には1億円以上の差が出る試算があります。ファイナンシャルプランナーに相談して家計診断をしてもらってもよいでしょう。こういった数字でロジックを重ねていくと男性は納得しやすい傾向がありますので、諦めずに自分の想いを伝えていきましょう。
また、お子さんと接する時間が少なくなる、お子さんに目が行き届かないことに不安を覚える方もいるでしょう。しかし子どもは意外にも適応力があります。お留守番や遊びに行くときのルール、鍵の管理、勉強やお手伝いなど、何をどうしてほしいのか、具体的に話し合って玄関や冷蔵庫など子どもの目のつく場所に書いて貼り、習慣化できるようにするとよいですね。ママが働くことで子どもの自立心も育まれる機会にしてほしいと思います。
いざ、仕事を再開したいといっても、どんな仕事が向いているのかわからないという方も多いのでは?そんな方には「キャリアの棚卸し」をおすすめします。職務経歴書の作成や自己PRを考える場合のネタになりますので、ぜひやってみてください。
やり方は簡単。学校を卒業後、経験した仕事の内容を細かく時系列に年齢別に書き出すのです。「どんな業務にやりがいを感じたのか」、「同僚や上司から評価された業務・経験はどんなことがあったのか」、「充実感を得られたこと」、「苦手だと思ったこと」など、細かくエピソードも思い出しながら書き出してみてください。その際、そう思う理由もセットで考えると、働く上での価値観が浮き彫りになってくると思います。
ブランクが長かったり、就業経験の少ない人は、子育てを通じて経験したPTA活動や保護者会、町内のイベントなどの地域活動について振り返ってもOK。その際は、グループの中でどのようなコミュニケーションを取り、目的に向かってどのような役割を発揮したのかを考えると、自身の強みをつかみやすくなると思います。
「キャリアの棚卸し」をすることで、自分を振り返って自信を取り戻すと共に、自分の強み・弱みを整理することができるのです。私のようなキャリアコンサルタントに相談しながら棚卸しをすると選考に通りやすい職務経歴書の作成につながります。一人ですすめるのではなく、専門家に相談できるといいですね。
再就職に有利になるように資格取得を目指すのも一つの方法でしょう。しかし、資格を持っていたとしても希望の職種や志望動機に結びついていなければ効力はありません。自分が希望する職種につながるスキルを見極めて、取得する資格を選択することが大切です。
たとえば多くの女性が志望する事務職の場合は、応募要件に「基本的なパソコン操作ができる人」などと書いてあることが多いのですが、ここでいう「基本的な操作」とはデータ入力ができればいいということではありません。エクセルであれば表計算やグラフ作成は必須、関数以上ができると職場の業務改善につながりやすいので重宝されます。PCスキルを身につけたい、磨きたいのであれば、MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)の資格を取得することをおすすめします。
また、実務経験を通じてどのような専門性を身に付けるかを考える方法もあります。中小企業の場合、事務職にはバックヤード業務を幅広くやってもらいたいという企業が多いです。そのため、営業事務で採用したけれど、経理を担当したり、ホームページの更新を担当するといったフレキシブルに業務範囲を広げていくことを求められるケースがあるのです。そういった場合は、実務を通して何が求められているかを判断し、柔軟にスキルアップしていくのがいいでしょう。
もちろん資格取得に挑戦しているといった意欲は企業から評価の対象になりますが、必ずしも「資格が取得できたら」と考えるのではなく、自分の望むスキルが身につけられる環境に飛び込むチャレンジ精神を持つことも重要です。
長年のブランクが気になり、働くことに不安な人も多いと思いますが、子育てや家庭を担ってきた、地域活動に貢献してきたということはキャリアの一つです。家事に必要とされる「同時進行で効率よく優先順位をつけてすすめる」といったマルチタスク能力は仕事をする上でも活きてきます。女性は男性に比べてコミュニケーション能力が高い方が多いですから、強みを活かして再び働くことにチャレンジしてほしいですね。
【執筆者プロフィール】
小倉環(おぐらたまき):大手流通会社の広報を経て、人事・採用メディアのコンサルティング・企画・制作を経験した後に2012年にキャリアコンサルタントとして独立。キャリア支援および就職支援、女性活躍推進、ワークライフバランスが専門領域。現在までのカウンセリング数は4000人を超える。女性が可能性を閉じずにチャレンジできる社会に貢献することがライフミッション。All About女性のキャリアプランガイド。共著に「働くママ・パパのためのまるごとわかる保育園」(自由国民社・刊)がある。