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2017.07.21

カリスマ介護アドバイザーに聞く!「情報発信」で介護分野に携わる道

カリスマ介護アドバイザーに聞く!「情報発信」で介護分野に携わる道

親の介護のために仕事を辞める「介護離職」が社会問題化している昨今。介護者の負担をできるだけ軽くするためには、日々進化する介護情報を上手に活用することが重要だと言われています。自身も両親の遠距離介護で苦労した経験から、2007年に日本初の介護家族向け情報サイトを立ち上げた、介護アドバイザーの横井孝治さんにお話を聞きました。

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介護の負担をできるだけ軽くするには

「介護は突然やってくるもの。その時に自分の親がどんな介護サービスを利用できるのか、どのように活用すればいいのか知っていると、介護の苦労がグンと軽くなるんです」。そう話すのは、2007年に日本初の介護情報専門サイト「親ケア.com」を開設した介護アドバイザーの横井孝治さん。現在は介護家族向けのSNSサイトなど7つの介護関連サイトを運営し、「介護の心構え」や「介護保険の利用の仕方」から「使える介護用品の紹介」まで、介護に関する様々な情報を発信しています。

セミナーや執筆、メディアなどで活躍し、カリスマ介護アドバイザーとして知られる横井さんが、介護の情報発信を仕事にするきっかけとなったのは、4年間の遠距離介護でした。

突然襲ってきた両親の遠距離介護

突然襲ってきた両親の遠距離介護

横井さんに介護が降りかかってきたのは、家電メーカーに勤めていた34歳の時。三重で暮らしていた両親二人が立て続けにアルツハイマー型認知症を発症。横井さんは一人っ子だったこともあり、平日は仕事で大阪と東京を往復し、週末は往復6時間かけて実家に戻るという多忙な毎日が始まりました。

「実家では家事を肩代わりする傍ら、近所の家を訪ねて『盗ったものを返せ』と訴える母を止めに行くなど、とても大変でした。今思えば行政の介護サービスを使えばよかったのですが、当時の私にはその発想がなかったんです。なぜなら、それらの仕事を私自身は『介護』ではなく単なる『手伝い』だと思っていたからです」(横井さん)

そんな中、幸いにも良いケアマネジャーに出会えたことで、使える制度や情報を知り、負担から解放されることになったそうですが、この時に失敗を繰り返し、時間もお金もかなりロスしてしまったことで、介護で悩んでいる人たちに正しい情報を伝えたいという気持ちが強くなりました。

情報を読んでもらえるように日々研究

情報を読んでもらえるように日々研究

「親ケア.com」を立ち上げた当初は、「介護家族の視点」からの情報発信自体があまりなかったため、さまざまな苦労があったそう。

「やはり医療や介護の資格もない新参者ということで、『介護業界と本気で付き合っていく気持ちを持っている』と認識してもらいにくい面がありました。その一方で、サイトを見た介護家族からは『自分だけが辛いのではないことが分かりました』といった感謝の声が寄せられることが多く、それがやりがいに繋がりました」(横井さん)

当初は今の100分の1程度しかなかった閲覧者数が大幅に伸び始めたのは、サイトのオープンから1年半程経ってから。総合情報サイト『All About』の介護ガイドに採用され、知名度が飛躍的に上がったのです。

それをきっかけに、より良いサイト作りに向けて一層力を入れるようになった横井さん。読者は医療や介護の専門知識を持たない人が中心なので、できるだけ平易な解説を掲載するよう心掛けているそう。

「介護関係の正式な用語は、やたら難しくて意味がわかりにくいものが多いんです。『介護予防小規模多機能型居宅介護』なんて言われても、一般の人からすれば『何、それ?』ですよね」(横井さん)

並行して、携帯電話が普及した際は日本初のガラケー向け介護情報サイトを作ったり、メインの情報サイトをスマホ対応させるなど、時代の流れにもいち早く対応したおかげで、次第にサイトが多くの人に認知されるようになっていきました。

今後必要なのは「介護の見える化」

ここ数年、「介護の見える化」の必要性を感じていた横井さんが、この4月から始める新しいサービスが「けあ通信」。専用のアプリを使い、介護事業所のスタッフが利用者の写真をインスタグラムのようにアップして介護家族が閲覧できるサービスです。

「スタッフがどんな介護をしているのか記録し、関係者みんなでシェアすることで、より良い介護ができるようになると思います」(横井さん)

また、近年は中国や東南アジアなどから来日して介護の仕事をする人が増えており、外国人スタッフと利用者や家族がスムーズにコミュニケーションできる仕組みも必要だと感じているそう。

介護で悩む人をゼロに

介護で悩む人をゼロに

ここ数年は、介護事業者側のコンサルタント業務も行っており、中でも介護施設の光熱費削減事業が好評だとか。

「100床程度の老人ホームだと、年間60~100万円程度の電気料金を削減ができるケースが多く、事業者の方に喜んでいただいています」(横井さん)

そんな横井さんの究極の目標は「介護で悩む人をゼロにする」こと。

「家族側の視点から、医療や介護のプロでは気づかない部分を丁寧に埋めていくことで、介護で悩む人を1人でも減らすための一翼を担えたらと思います」(横井さん)

「介護の仕事」と一口に言っても色々な関わり方があるのですね。人生に思いもかけない大変なことが起きても、横井さんのように前向きな気持ちや高い志と行動力を持っていたら、その経験を生かして多くの人に役立つサービスを作ることもできるのかもしれません。

Text:安本真留美

【取材協力】

横井 孝治(よこい こうじ)さん
介護アドバイザー。1967年三重県生まれ。大学卒業後、印刷会社や家電メーカー、ゼネコンなどで販売促進を担当。2006年、正しい介護情報の共有を目標に、株式会社コミュニケーターを設立。日本介護福祉経営人材教育協会・関西支部理事。著書は『親ケア奮闘記:がんばれ、母さん。たのむよ、父さん。』(第三文明社)など。

  
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